36.「東京内戦兵器管理事業部」
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朝季が言うには、九時半から西基地で会議があって、その前に中野駅のホームに来いと冬那に呼び出されたらしい。
凪を呼んだのも冬那だが、彼女の姿は見えなかったし連絡もなかった。
『時間が惜しいから、もう行く』
そう言って中野駅を去る朝季の背中を見送って、凪は駅ホームのベンチに座っていた。
冬那が現れたのは二十分後、九時五十五分。
「ごっめーん、遅れちゃった」
わびる様子のカケラも見せず、冬那は凪が座っていたベンチの隣に腰掛ける。
「一時間の遅刻ですよ」
「まだ五分あるわよ? 五十五分の遅刻」
「……屁理屈」
「そういえば、朝季には会えた?」
「……仕組んでました?」
「感動的な再会ができた? ていうか、仲直りした?」
「喧嘩してたわけじゃ……」
「首元、賑やかになったわね」
冬那の目線の先には、凪がぶら下げる三つのネームプレートがあった。
凪はそれを手に握り、冬那を見つめる。
「あ、えっと、朝季のお兄さんの」
「夕季さんのネームプレートよね、わかってる」
冬那がすっとベンチから立ち上がった。
よく晴れた空、太陽を見て呟く。
「凪ちゃん、この戦いを終わらせる気ある?」
「…………え?」
「気付いたんでしょ、真実に。この街の違和感、東京内戦の本当の目的」
「……はい」
「でもたぶん、一番大事なところはまだ知らないんじゃないかな?」
「一番大事なところ?」
「凪ちゃんはどうして自分がまだ殺されてないと思う? 最初から散々、知りたいとか傍観者やめたいとか言ってたのに」
「あ、えっと……え?」
「教えてあげる、真実の裏の物語を。凪ちゃんにとってはきっと、残酷なものだろうけど。それでもあなたは、夕季さんが終戦の鍵として選んだ女の子なの」
冬那が凪に手を差し出す。
おずおずと手を握り返すと、冬那が凪の体を引っ張り上げた。
「自己紹介遅れました。東京内戦兵器管理事業部、最年少幹部役員の、三上冬那です」
「東京内戦兵器管理……事業?」
「上層部って呼ばれてる、この街を管理支配しているお偉いさんの中の一人」
「上層部って……え?」
「だけど所詮最年少、他の人たちは私の言うこと聞いてくれなくてね。だから一緒に、偽りの戦場を終わらせない?」
「……はい」
未だわけがわからなかったが、とりあえず頷いた。
それを見た冬那が、意味深な笑みを浮かべる。
「上層部のおじさん達は三次を欲しがってたけど、私はあなたが欲しかったのよね、白川凪ちゃん」
チカッと太陽の光を反射して、冬那の耳にある白いカーネーションのイヤリングが輝いた。




