僕と妹
僕の妹は昔から芸術に固執していた。4歳のときから美術館に朝から晩までずっといるし、その後家に帰ってからもずっと絵を描いていた。とても幼い少女が描いた絵とは思えなかった。朝名の作品は朝名自身だった。作品を見ただけで彼女の全てがわかった。
妹の作品は小学生の時にはもう展覧会などにも出展されていた。両親は妹をとても甘やかした。妹のせいで僕には白い目が向けられた。僕は常に妹の比較対象となった。両親にとって僕はもはや人ですらなかった。それでも学校では明るく振る舞い続けた。才能があってもクラスで孤立する妹とは違うということを自分に言い聞かせ自分が優位にあると思い込んだ。
妹は小学4年生のある朝空っぽになっていた。あの日は一家しっちゃかめっちゃかだった。僕はこの日心の底から神に感謝した。しかし、両親はこのことを隠すために「芸術の環境を揃える」と言って妹を別の場所に移した。もちろん義務教育違反だが妹が登校拒否をしているということにしているらしい。教職員もまったくそれを疑わなかった。妹の性格を考えれば当然だろう。僕にはそんなことはどうでもよかった。それよりも問題は僕が妹の世話をさせられることだった。たまったもんじゃない。
誰が自分を苦しめた人間の世話なんてやりたがるのだろうか。最初は反抗しようとした。しかし怖気づいてしまった。僕は心の奥底で両親を恐怖していた。僕の記憶の中の両親はいつも僕を人として見ていなかった。物として扱われてきた。その恐怖が蘇り両親の前では硬直してしまう。
僕はなくなく妹の世話を始めた。最初は手を焼いた。生まれたばかりに記憶がリセットされているため、大きな赤ん坊を世話しているような気持ちだった。まずは言葉を教えた。知性はあるようなので命令さえすればある程度のことはやってくれた。
そうして僕は七年間をすごしてきた。未だに妹は治る気配もなく美術品を作り続けている。




