第十話 これが日本式である。
そろそろ始まる卒業式練習。しばらくやっていなかったため、辛さを忘れていたようだ。
「椅子を持って、廊下に静かに並びましょう。」
木曜日の五時間目、卒業式練習開始。
「はーい、一列に並んで!」
私たちは、決して速やかに、とは言えない感じで体育館へ移動した。
「背もたれ揃えて~」
練習なのにいちいち面倒臭いなぁなどと思いながら、椅子を揃える。
「卒業生入場!大きな拍手で迎えましょう。」
日本にいた頃、卒業生と在校生は別々に練習をしていたが、ここは一緒にやるらしい。しかも、小学6年生と中学3年生合同だ。
「コト、コトン。」
静かな足音が聞こえてくる。
「ぺちぺちぺち。。。」
何だかやる気のない拍手。どこが大きな拍手だ、と思った。しかし、どうせ先生があとで注意するだろうなと思っていたが、入場が終わっても何も言われなかったことには少々驚いた。やはり「日本式」ではあっても、「日本」ではないらしい。
「拍手はもっと大きくしろっていわれないの?」
と、隣の杏花ちゃんに聞いてみた。すると彼女は
「どうせ保護者の人とかもいるし、大丈夫だよ。」
と、のんきに答えた。なるほど。
「はい、では、礼の練習をしましょう。まず、背中を丸めてはいけません。背筋を伸ばし、上半身全体を傾けます。」
やれやれ。。。
「いち・に・さん と数えるので、それに合わせて礼をしてください。 いち・に・さんっ!」
礼をする。
「うーん、まだ揃ってませんね。。もう一度やって見ましょう。いち・に・さんっ!」
礼をする。。
「まあまあ揃ってきていますね。この調子で頑張りましょう。次は、座礼です。皆さん着席~」
座る。。。
「では、先ほどと同じようにやって見ましょう。いち・に・さんっ」
座礼をする。。。。
「これは結構揃っていますね。オーケーです。次はですね。。まあ時間もあまりないことですし、校歌を一度歌って見ましょうか。」
歌う。。。。。
「~♪~」
「キーンコーンカーンコーン」
歌い終わると、チャイムがなった。やっと終わった。別に日本のやり方を愚痴っているわけではないのだが、やはり疲れるものである。
「あー憂鬱。。」
机に突っ伏してブツブツ言っていたら、絵美がやってきた。
「どうしたの?」
「卒練疲れた。」
ちなみに、卒練とは卒業式練習のことである。
「確かに大変だよね。」
「うん。二年間やってなかったから辛さをすっかり忘れてたよ。」
「なるほどねー。」
何だか、とても平和な会話だな。
「じゃあ、授業始まるからまたあとでね。」
時計を見ながら絵美はそう言って、自分の席に戻って行った。
さて、次の授業なんだっけ。。




