第十一話 ちょっとした癒し
面倒くさい卒業式もやっと終わり、少しは平和な日々が戻ってきたかと思えば。。。
「皆さん、そろそろなにが始るかはごそんじですよね?」
「い、伊藤先生。。まさか、まさかですよね?」
心の中でそうつぶやきながら祈るが、それも虚しく、先生の口から発せられた一言。
「入学式です」
「「あー、そういえばー」」
みんながいっせいに口を開く。私だってもううんざりだ。やっといろいろ終わったのにー
「もう中3はいませんから、皆さんがリーダーとなって、後輩たちを引っ張っていかなくてはなりません。気を引き締めてがんばりましょう。」
「「はーい」」
まあ、卒業式よりは楽だろうな。
一時間目は、国語だ。小林先生が教室に入ってきた。小林先生は私たちの先生の中で唯一の女性だ。
「はい、それでは号令を。」
「起立、礼、」
「ええ、今日はですね、そろそろ今学期も終了に近づいてきましたので、ゲームをしようかなと思います。」
今学期終了だからゲームをする、っていうのは結構よくあることだが、いまいちその関連性がつかめない。まあ要するに楽しもうということだろう、が、所詮国語のゲーム。楽しめるのか?
「ゲームは、説得ゲーム、です。相手を時間内に説得できれば勝ちです。」
そうきたかー。
「内容は何でもいいです。まずは隣の人とやって見ましょう。それでは、ルールを説明します。まず、じゃんけんをして勝った人が先に相手を説得する人になります。もう一人は、それを様々な理由で拒否してください。、、、」
一通り説明を受け、10分間、内容と拒否する理由を考える時間が与えられた。
「うーん、どうしよっかなー?」 いろいろ考えていると、良い案を思いついた。
「ジャンケンポイ!」
「じゃあ、あたしからいくね。」
私の隣のはるちゃんが勝ったので、私は拒否だ。
「えっとねー、じゃあ、みくちゃんとお出かけしてもいいですか?」
これ、断りやすいなー、と思った。
「あたし用事あって無理なの~」
「でも、とても大事な用事だから一緒にきてもらわないと困るんだー」
「私他にもすごく大事な用事があって、本当に無理なの」
などとやってる間に、タイムアップだ。はるちゃんって、こういうの苦手なのだろうか。
「じゃあ次あたしね。明日暇だから、髪切りにいってもいいかな?」
「。。。」
そう、良い案とは、自分に関してのことで、断る必要のない物を言えばいいんじゃないか?というものだった。やはり、はるちゃんは何も言わない。
「えっと、今の髪型可愛いから切らない方がいいよー」
何とか拒否したはるちゃんだが、次の一発で終わりなはず。
「でも、暑いんだよね」
まだ夏じゃないが、気にしないー
「日焼けしちゃうからだめだよ」
ま、まさかの反撃ー!
「日焼けどめ塗るからへいきー」
けれど何とか答えた。
「う。。いいよ。。」
勝ったー!
「勝ったー!」
「タイムアップです。」
その場その場で言い訳考えるのって大変だと思った。
「はい、次は、各列の廊下側の人、一つずつ前にずれてください。先頭は一番後ろへ。」
私は先頭だったので、一番後ろへいった。隣は、いかにもこういうの得意です、な感じの少年。やっぱり質問も面白かった。
「床を舐めてください。」
「え、きたないからやだ」
「じゃあ、ピカピカになるまで磨いて、消毒もするので舐めてください。」
まじですか。
「まずそうだからやだー」
そもそも床にまずいとかまずくないとか関係ないだろ。。と思うが気にしない。
「じゃあ、コーラぶっかけるんで。」
「コーラ太るから。」
なんだかめちゃくちゃな理由になっってきた。
「うーん、じゃあオレンジジュース」
「きらい」
嫌いって言えるなら、すべて断れるじゃないかって?いえいえ、オレンジジュースは本当に苦手なんですよ。
「タイムアップです。」
ちょうどいいタイミングで、先生が声をあげた。
「チクショー、勝てなかった!」
少年は悔しそうにしている。
「じゃあ私の番ね。明日パーティーがあるんだけど、おしゃれしていいですか?」
男子が弱い、おしゃれ関係を選んだ。さすがに、ナンパされるからダメ、などとは言えないだろう。それに、私はナンパされるほど可愛くない。
「うーん。。。これは難しいっしょー」
悩んでいる少年。
「さあどうしますかー?」
ニヤニヤしながら私は言う。
「え、えっと、化粧は肌に悪いよ!」
なるほど。そうきたか。でも負けないよ。
「じゃあ服だけ。」
「えー?うーん。。降参。。」
よし!
「やったー!」
見事に勝利した私は、喜びのあまりそう叫んだ。あれ、さっきも叫んだっけ?
「よかったね」
負けたのにもかかわらず穏やかに笑ってそう言う少年に、私は思わず見とれてしまった。なんだかとても優しい笑顔だった。
「ありがとう!」
疲れ気味だった私は、なんかちょっとだけ癒された気分だ。 でも、こんなゲームに勝ったからっていちいち喜び過ぎて、呆れられたかも、と思いちょっと恥ずかしくなったけれど。




