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アオとミナトの物語  作者: 西坂 隼


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プロローグ

 どこで生まれ、どこからやってきたのかも分からない、異形《いぎょう》の生き物がいました。


 水棲《すいせい》生物の研究に携わっていた私は、かつて、その謎の生き物と出会いました。


 黒緑色の鱗《うろこ》。

 水かきのある長い手。

 鋭い爪。

 首元で静かに開閉するエラ。


 そして、人間のものに似た、琥珀色の目。


 その姿は、多くの人にとって、間違いなく恐ろしいものだったでしょう。


 けれど、私は知っています。


 その異形の種が、ただ恐れられるだけの存在ではなかったことを。


 人間を怖がりながらも、人間を助けたことを。


 そして、ある一人の青年と出会い、深く心を通わせていったことを――


 これは、異形の半魚人と、瀬川湊《せがわみなと》という人間の物語です。


 石を投げられることを恐れていた彼が、初めて人間から受け取ったもの。


 それは、武器でも、火でもなく、一本の魚肉ソーセージでした。


 その小さな贈り物から、すべては始まりました。


 私はこれから、その物語を書き残そうと思います。


 彼が「怪物」ではなかったことを。


 彼が、確かに誰かを守り、誰かに守られ、誰かと生きたことを。


 そして何より、彼の名が――アオであったことを。



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