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【完結】幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠せなくなってきたら、彼女の瞳が揺れるようになってきた〜【ランクイン履歴あり】  作者: momomo
懲りもせず毎日好きになる。ただただ、薔薇色の日々

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第50話

「…………っ、なっちゃん……」


「……ん?」


 キスの合間に名前を呼ばれ、僕は唇を寄せたまま短い返事をする。


「……多くない? 長くない? ……ここ、学校だよ……」


 約束の昼休み。

 僕たちがいつも会うのは、人通りがほぼない旧校舎の古い棟、三階と四階をつなぐ階段の踊り場だ。


「……誰もいないじゃん」

「……でも……っ」


 周りを気にしながらも、めぐみは僕のワガママなお願いに応えてくれる。


 最近、こうして二人きりになると、どうも僕の理性がうまく働かなくなる。

 もちろん、めぐみが少しでも本気で嫌がったらすぐにやめるつもりだ。

 だけど、彼女はいつも頬を赤く染めながらも、結局は受け入れてくれるから、困っている。


 つい熱を帯びて、僕の手が彼女の肩や腰、首筋へと伸びてしまう。

 一応それを止めるように、めぐみが僕の手に自分の小さな手を重ねてくるのだが、ただ上に乗せているだけのような感じで、抵抗としてはまったく意味をなしていなかった。



 めぐみの息が上がってきたのがわかり、僕は一旦唇を離して、彼女の身体をそっと強く抱きしめた。


 少し速い心音を感じながら、柔らかい髪に優しく触れる。


 二年生になってから、めぐみは鎖骨のあたりまであった髪を、肩につくくらいまで切った。

「このほうが大人っぽいかなと思って〜」などと本人は言っていた。

 たかだか数センチ切ったくらいで変わるものなのか? と最初は思ったが、たしかに少しだけ雰囲気が大人びたような気もしている。


 抱きしめていた力を少し緩め、至近距離で彼女の顔をじっと見つめた。


「……あ。化粧してる?」


 僕が聞くと、めぐみは少し恥ずかしそうに目を伏せた。


「うん、少し」


 よく見ると、彼女の瞼にはピンクブラウンのアイシャドウがほんのりと乗っていた。


「なんで?」


 僕が尋ねると、めぐみは少し目を逸らしながら呟いた。


「……なっちゃんとお昼、約束してたから」


 その健気すぎる理由に、僕は胸の奥がギュッとなるほど嬉しくなりながら、照れ隠しに言った。


「……へー」


「……もー。その『へー』やめてよ!」


 めぐみが顔を上げて抗議してくる。


「なんで?」


「『へー、そんなに俺のこと好きなんだ?』って言われてるみたいに聞こえるから!」


 まさにその通りすぎる解釈に、僕は思わず意地悪く笑ってしまった。


「へー」


 わざともう一度返すと、めぐみは「もう!」と言って、両手で僕の胸元にパンチをしてきた。

 もちろん、全然痛くない。

 僕は笑いながら、その小さな両手を自分の両手で包み込むように掴んで動きを封じ、そのままもう一度、塞ぐようにキスをした。


 そこから、午後の授業を知らせる予鈴が鳴るまで、ずっとした。


 だって、仕方がない。

 自分でもどうしようもないくらい、僕は彼女のことが好きで好きでたまらないのだ。


 ◇


 梅雨に入り、連日雨続きでジメジメとした日が続いている。


 部活の休憩時間。

 いつもの体育館の隅で、同期たちと壁際に座り込んで水分補給をしながら駄弁っていた。


「朝井。週末、あそこのショッピングモールに彼女といなかった?」


 不意にそんな声が降ってきて、僕はペットボトルに口をつけたまま頭上を見上げた。

 声の主は、バスケ部の三年の先輩だった。


 たしかに先週末、めぐみとそこのモールで買い物をしたり、映画を見たりしてデートをしていた。


「え、先輩もいたんですか。すいません、全然気づかなくて」


 ペットボトルを口から離して答えると、先輩はニヤニヤと笑った。


「だろーな。お前、彼女しか見てなかったもん」


(……マジか。恥ず)


 完全にめぐみの世界に浸っていたことを指摘され、内心で盛大に照れていると、周りにいた同期たちが面白がって乗ってきた。


「先輩、こいつの純愛物語知ってます? 十年ものなんすよ……」

「そうそう。付き合ってもう一年近く経つのに、朝井デレすぎなんだよな」


「……おい。勝手なこと言うな」


 僕の抗議も虚しく、同期たちによっていろんな情報が先輩にバラされていく。


「へえ。じゃあ、順調なんだ?」


 先輩に面白そうに聞かれ、少し言葉に詰まった。


 脳裏に浮かぶのは。

 昼休みにあの薄暗い旧校舎の階段で、恥ずかしそうに僕のキスに応えてくれる、僕だけが知っている彼女の顔――。


「……最高っすね」


 ポロッと本音がこぼれると、周りから「燃えろ」「爆発しろ」と一斉に罵られた。


「文化祭、うちのクラス来るだろ?」

 めぐみと同じクラスになった同期の男子が聞いてきた。


 二年生として迎える文化祭は、今週末に迫っている。

 めぐみのクラスはカフェをやるらしい。

 最近、準備が大変だと彼女がこぼしていたのを思い出す。


「あー、行く」


 僕が答えると、そいつは意地悪く笑った。

「井原の制服姿、楽しみにしとけよ〜」


「……お前は見んなよ」

 僕が低めの声で本気で牽制すると、「いや、同じクラスでそれは無理だろ」と笑い返された。


 めぐみのカフェの制服姿なんて、絶対にやばい。

 一目見たら、そのままどこかへ連れ去りたくなるだろう。

 ……文化祭中って、いつもの旧校舎のあの棟は入れるんだろうか。

 僕はこっそりと、頭の中でよからぬ企みを巡らせていた。



 付き合い始めた当初、友達からは「片思いの期間が長すぎて、いざ付き合ったら燃え尽き症候群になるんじゃないか?」と笑われていた。


 ところが、現実はまったくの逆だ。

 僕は毎日、めぐみのことをどんどん好きになる。


 付き合う前は知らなかった表情や、可愛い反応がまだまだたくさんあったことに驚き、そのたびに愛おしさと嬉しさが募っていく。


 まだ僕の方が好きな気持ちは大きいと自負しているけれど、めぐみも、彼女なりにたくさんの愛を僕に返してくれているのがわかる。


 だから僕は、めぐみとのちょっとした出来事の一つひとつで、(……大丈夫か? 俺、今スキップしてなかったよな?)と我に返って焦るくらい、四六時中浮かれてしまっているのだ。


 もう、めぐみのいない世界なんて考えられない。

 もしも、めぐみに振られたりなんかしたら、僕の地球は真っ二つに割れて終わるだろう。


 ずっと、一緒にいたい。


 ……めぐみは、僕とのこの先のこと、どう思っているだろうか。



「おら、休憩終わり! 集合!」


 キャプテンの声が体育館に響く。


 僕は立ち上がって元のポジションへと駆け足で戻りながら、今週末の文化祭のライブで歌う曲のメロディを、心の中で静かに口ずさんでいた。

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