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【完結】幼馴染への三度目の失恋を回避したい 〜激重な片思いを隠せなくなってきたら、彼女の瞳が揺れるようになってきた〜【ランクイン履歴あり】  作者: momomo
せっかくの手応えに水を差すライバルを振り払うためにも、密かに設定した「裏ミッション」

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16/54

第16話

 放課後、部活の時間。

 夏の発表会まで残り一か月となり、私たちの合奏も少しずついい形に仕上がってきている。


 今日はサックスパートのメンバーで、気分転換と体力づくりを兼ねて軽いジョギングをしようと、外に出ることにした。

 初夏特有の蒸し暑さはあるものの、心地よい風が吹くいいお天気だ。


 ローファーから運動靴に履き替え、校庭へ向かって歩き出す。

 その途中、渡り廊下の先にあるプレハブ小屋の前を通りかかった。


 換気のためか、いつもは固く閉ざされている重い防音扉が、少しだけ開け放たれていた。


 何気なくその隙間から中を覗き込むと――そこには、まさかの人物がマイクスタンドの前に立ち、軽音部のメンバーたちと何やら話し込んでいた。


「……なっちゃん!?」


 思わず、大きな声が出た。

 驚いて振り返ったなっちゃんも、目を丸くして「うわっ、見つかった」と小さく声を漏らした。


「えっ、なっちゃん何してるの?」


 目をパチパチさせながら尋ねると、彼は視線を逸らして答えた。


「……今日はバスケ部休みだから、練習」


「なんの練習?」


 すると、なっちゃんの背後からひょっこりと顔を出した男子が、彼の肩をガシッと遠慮なく抱き寄せた。


「あっ、嶋!」


 小学校からの同級生である嶋だ。


「文化祭のライブでさ、俺らのバンドで歌ってくれんだよなー!」


「ええええ!? なっちゃんが歌うの!?」


 さらに声のボリュームが上がってしまった。


 たしかに、なっちゃんはすごく歌が上手いと、一緒にカラオケに行った男子たちが口を揃えて言っていたのを聞いたことがある。

 ただ、私はまだ一度も聴いたことがないのだ。


(あ。もしかしてこの前、嶋がなっちゃんに必死に頼み込んでいたのって、この件だったのかな?)


「てか、話すの超久しぶりじゃん、井原! お前ら、相変わらずまだ仲いいんだな!」


 嶋はなっちゃんの肩を組んだままニカッと笑って、彼と私を見る。


「ね! 嶋とはしばらくクラス一緒になってないもんね」と笑って返す。


 ふと、プレハブの奥に視線を移した。

 ピアノの前には、静かに楽譜へ目を通している女の子の姿があった。


 長く艶やかな、黒髪のストレートヘア。

 凛とした横顔。


(誰だろう?)


 見たことのない子だ。

 高校から新しく入ってきた一年生かな。

 それとも、すごく大人っぽいから先輩だろうか。


(……髪、まっすぐで綺麗だなあ)


 なかなか言うことを聞かない自分の猫っ毛・天パと比べ、純粋に羨ましくなりながら、思わず見惚れてしまった。


「めぐー、行くよー」


 サックスパートの同期から声がかかり、ハッとする。


「あっ、ごめん行かなきゃ! バイバーイ!」


 なっちゃんと嶋に手を振って、慌ててみんなの背中を追いかけた。


 ◇


「いっち、に! いっち、に!」


 リズムを合わせ、他愛のない会話を交わしながらジョギングで汗を流す。

 心地よい初夏の風を切って走っていると、さっきの驚きが、みるみると期待に変わっていくのを感じる。


(なっちゃんの歌かあ……楽しみすぎる!)


 初めて聴く、幼馴染の歌声。

 一体、どんな曲を歌うんだろう。


 胸の奥が高鳴り、足取りも弾んだ。

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