18,機械人形の守りたかったもの
それは、なんという事もない、ただの下校風景だった。
『それじゃあ、一彦。またねー!』
『おう、また明日な!』
学校の友達との別れ際に、青年は手を振る。
その相手が見えなくなってから、そっと一息ついた。
……嫌われずにいるというのも、苦労をする。
青年は他人から嫌な目で見られるのが苦手だった。
周りの人間は彼をお節介と評したが、本質は違う。
嫌われない自分で居たいという、それだけなのだ。
『……カズヒコ?』
ひょこっと、音が出そうな様子で少女は青年の顔を覗きこんだ。
純粋なその瞳には、外向けの態度をやめた青年が、めんどくさそうにしている様子がありのまま映っていた。
『……なんだよ。つむぎ』
普段は無口なはずの少女は、こうして二人になったとたんに話しかけてくるのだ。それも嬉々として。
『……ん、なんでもない。……名前、呼んだだけ』
『……チッ』
あからさまに嫌悪感を表していても、つむぎは気にすることなく、帰り道を嬉しそうに歩く。
一彦にとってつむぎだけはある意味、特別だった。
どれだけ嫌われようとしても、少女は自分の後ろを着いてくる。
『お前がそういう奴ってのは、わかってるけどよ……』
今向かっているのは自分の家ではなく、隣で歩く少女の家だ。
日もとうに落ちていて、女子一人を歩いて帰す訳にもいかない。
『いい加減、一人で帰ったらどうだ』
『……それは、無理』
跳ねるように歩きながら、つむぎは答えた。
部活に入ってもいないのに、つむぎの帰宅時間は遅い。それは、一彦の部活が終わるまで帰ろうとしないからだ。
一彦がどのような帰り方をしていてもただ後ろについてくるのだから、一彦は彼女を家まで送り届けるしかない。
『……なぁ』
つむぎが嬉しそうに振り向くのを片目に、一彦は世間話でもするような気分で聞いた。
『……なんで、俺に付きまとう』
嫌な聞き方だ。
他の友達になら、慎重に言葉を選ばなければならない内容だが、一彦は誤魔化しを一切入れなかった。
下手に言い回しをしても伝わらないのは、経験からわかっていた。
『……一彦、だから?』
『いや、もっと具体的に答えてくれ。俺のどこにそこまで惹かれるのか、とかな』
自分が好かれているのは、これだけアプローチされて気付かない訳がない。
かわいい小動物を相手にしているようで、別に嫌な気もしていない。
ただ、ここまで依存されるのが変な話なわけで。
『……頼れて。……信用できる』
その理由は。
『……それで……わたしみたい。……とっても弱い』
しっかりと的を射ているように思えた。
『だから……かな?』
『お前、馬鹿だろ。本人目の前にしてよ』
こちらの反応を楽しんでいるかのように、つむぎは笑う。
言い返すつもりも、否定するつもりもない一彦は、毒づきながら微妙な苦笑いをした。
一彦はこの少女のことが嫌いではない。どちらかといえば好きだとも思う。
だがそれに関係なく、彼はつむぎが苦手だった。
ある意味、自分の事を理解しているのは、唯一この少女だけで。
そのはずなのに、一緒に居ると奇妙な不快感に包まれる。
誰にも見せない心のその奥。するりと入り込まれて撫でられるような、居心地の悪さ。
『……でも、それが……良いとこだから』
『……わっかんねぇなぁ。全然』
一緒に居ると、自分の弱さを再確認してしまうのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……だからよ、もし。俺が想像してることと、同じなら……絶対、認めねぇ」
一彦は、本気の目をしていた。
言葉通り、譲るつもりは一切ない。
「……一彦の想像の通りだよ。僕は、マシナリーを量産しようとしてる。それも、同じ人格データを複製してね」
少年のその言葉で、一彦の拳に力がこもる。
「お前は……それがどういうことか、わかってるのかよ!?」
「もちろん、どういう危険があるかぐらいわかってるよ。あの時の一彦を見て、そんな知らないフリを突き通すつもりはないかな」
「いいや、わかってねぇ! わかってねぇよ!!」
一彦は少年の胸ぐらをつかんで叫ぶように話す。
「なってみなきゃわかんねぇだろうけどよ、自分が一人だけじゃないって感覚ってのはな! それだけで吐き気するぐらい苦しいんだよ!」
仮に突然、自分という存在がが二人以上に増えてしまったら。
それは、なってみなければわからない。
「まるで今の自分は必要じゃないんじゃないかって、ずっとアタマん中をぐるぐる回ってんだよ! 目の前に別の自分が居るって感覚が、お前にわかるか!?」
一彦はその時、自分という存在が希薄になるのを感じた。
複製された自分達。それがみんな、紛れもない自分なのだ。
未知の感覚を、一彦は経験してしまった。
『壊れろ! 壊れろぉおおおお!!』
つむぎに、もう一人の一彦が人格をもてあそばれた時、まるで自分の人格を破壊されたような気がした。
一彦の感情は、それを自分と認めたくないという一心で、物理的に排除した。
感じたのは、自分を殺した実感。
その自分がまだ生きているという矛盾した状況が、彼の思考を壊した。
同じだからこその、連鎖的な人格破壊。
一彦は、本当に「自分が死んだ」と思った。
「……別に、辛さ自慢したいって訳じゃない。だが、俺は2度とやらねぇ。絶対にだ」
「うん。そう言うと思ってたよ。だから、一彦の複製はしない」
「……どういう事だ」
一彦は訝しげな目を向ける。
「量産するのは、僕の人格データ。だから、一彦は心配しなくても良いよ」
「……は?」
何を言っているのか分からなかった一彦を目の端に、少年は綾に向き直る。
彼女は、面白い物を見ているような様子だった。
「ふむ、確かにつむぎの研究では理論上、データ採取は生きた人間であっても問題はないとあるが。それでも見えない危険性が伴う筈だ。少年は、そんな事に命をかけるつもりか?」
「ええ。実験自体は、つむぎが大丈夫としてるんです。なら大丈夫、問題はその後の運用の仕方でしょう」
少年はつむぎを疑わない。
信じて欲しいと思っている相手を疑うなんてのは、おかしな話だから。
「現状を打開するには、労働力が有ればあるほどいい。一彦ができないなら、僕がやるよ」
「……輝矢。お前は、自分を道具みたいに使うつもりなのか? それで済むならって本気で思ってんのか?」
「そのつもり」
「……ふざけろ」
言い繕う事なく答えた少年を、機械の目で睨み付ける。
「お前は……ホント、いい加減にしろよ……一人増えるだけでも、俺は死にそうな思いをしたんだぞ……お前だって……」
その泣きそうな声には、確かに少年を心配する気持ちがこもっていた。
その厳しくも優しい言葉を、少年は大切に受け止める。
「本当に辛いなら、スケジュール管理を上手くずらしてお互いに顔を会わせないようにしてやればいい。僕の複製なんかでみんなが助かるなら、やるよ、僕は」
少年の決意に満ちたその目は、色1つも揺るがない。
それに、と続ける。
「『ちょっと前の僕』なら、自分の死で他人が助かるなら、喜んでそれを受け入れるだろうから」
一彦は、少し考えて、はっと反応した。
その言葉を聞いて、心当たりがあったからだ。
『記憶を、消してやってもいいんだぞ?』
ある時一彦は、綾に脅された時にそう言われた。
それこそ、忘れる訳がない。あれだけの辛い思いは。
「記憶の改竄をするんだ。僕の複製は、この施設の事を知らないし、覚えているのはそれ以前の記憶まで」
「そいつら全員を、騙すってのか……バレたらどうする。自分に使われてるなんて知れば、全員ただじゃすまないぞ」
「察しの悪い僕なら、きっと何も分からないよ。作業自体も被せる予定はないし、それなら僕は完全に一人だから」
一彦の肩が震えた。その仕草を少年は見ながら尋ねる。
「ごめん。一彦には辛い話だったよね」
「……いや……そうだな、確かに辛い。というより、俺からするとそんな事を考えるお前が怖い」
「……まぁうん。でも、あの時の自分なら、大丈夫だよ。一人だって耐えられる。『指示を聞けば母親を助けてやる』って言えば、何だって言うことを聞くはずだから」
ちらと、少年は綾の方を見る。
彼女はかつて同じやり方で、少年を巻き込んだ張本人だ。
「……少年。まるで私が悪魔のようだとでも言うようだな?」
少年は綾を見て、何を今更と思う。
だが同時に、今は気持ちも分からなくはないとも思った。
今は少年の中で、自分よりも大切なものの優先順位がしっかりしている。
「僕の複製なんかで、大切な人を守れるっていうなら、やめるつもりはないよ。それだけが犠牲になるなら、喜んでそうする」
「お前だって、わかんねぇんだぞ! 自分が壊れるって、そう感じるのは、俺みたいな機械だけじゃねぇ! それが、わかってるのか!?」
「……わかってるよ」
一彦が言うことも、少年は理解していた。
人格の連鎖破壊が、マシナリーのデータだけに適応されるなんて都合のいい話はない。そういう危険だって無視はできない。
誰だって、自分が壊れるのは辛い。
それは一彦を通して、少年もまた理解していることだった。
「……馬鹿だろ。もし、お前が心が壊れたら……辛いのは、お前だけじゃねぇだろ」
その言葉に、黙って聞いていたアンナが反応して俯いた。
彼女がこの企画に反対する理由が、そうだった。
人の身である少年の人格崩壊の危険性。
それに気付きながら、アンナは何も代わってやれなかった。
察しのいいアンナなら、作業を続ける末に気付いてはいけない事に気付いてしまう可能性が高い。
少年のように中途半端な理解力でなければ、その果てに人格破壊を起こしてしまうかもしれないのだ。
代わりになれないどころか、手伝うことすらさせてもらえない。
だからこそ、アンナは辛かった。
アンナが反対する理由、少年の負担の大半はここにある。
「それも、わかってるよ。……以前の僕なら、自己犠牲でもなんでもしたかもしれない。けど、今は違うよ。問題を成し遂げた後に僕が居ないってことを、僕は望まない」
「だったら! 対策考えろよ! 何かねぇのか!?」
対策と聞かれて、少年は迷った。
いろいろ考えはしたのだ。
例えば、今から冷凍された他の人達を一人あたりに一機を製造する方法。
それなら、一彦の言う通りに人格崩壊の可能性は大いに下がる。
だが現実問題として付きまとうのは膨大な仕事量だ。
そもそも、一彦のような理解のある人をだけという訳でもない。
中には指示を無視するような人だっているだろう。
そんな人を相手するためには、一機毎に細かい制御項目を作る必要がある。
「そもそも時間がギリギリなんだよね。今始めて間に合うかってところだし」
大規模な企画を目の前に、それをするには圧倒的に時間が足りない。
回収と製造で、これからの貴重な時間を割くわけにはいかない。
そしてその原因を作ったのは紛れもなく、理想にすがって判断を渋っていた少年なのだ。
だから、対策と聞いて考え付くことはこれしかない。
「……耐える、かな。僕が」
その言葉を聞いて、一彦は一瞬言葉を無くした。
ーーー機械の頭がなぜか、チリと痛んだのだ。
まるで一彦自身の人格の拠り所を、針で突かれた気分だった。
「一彦? えっと、大丈夫?」
「……あぁ、何でもない。それよりも、何だよ、耐えるって」
「? いや、そのままの意味だけど」
「そうじゃねぇ! ふざけてるだろう!?」
一彦の叫びが響く。
少年は気をされそうになりながらも、一彦を見据えた。
「何度も言ってるが、お前が耐えられるようなもんじゃないんだよ! お前もしかして、あれが大したことないとか思ってなめてんのか!? 俺が平気で、あんな演技したとでも!?」
「そんなつもりないよ」
「……っ!? だったら!」
その口から出てきたのは、今までの少年らしくはない一言だった。
「一彦。僕がしてるのは、多分、覚悟の話なんだと思う」
「なん……の、」
なんの話だ。そう言おうとして、一彦は躊躇った。
『……大丈夫だ、助けてやる』
確かに残っている記憶に、触れる何かがあったからだ。
「できる、出来ないじゃない。できなきゃ全部守れないから」
少年は当然のようにそれを口にした。
一彦は、その言葉に飲めない息を飲んだ。
「僕が望むのは……成りたいと思うのは、問題を解決して、みんなとの約束を守ることなんだ」
母親の守りたかった世界を守りたいと自分に誓い。
つむぎに信じてもらいたいと約束をこじつけて。
アンナの気持ちに真剣に答えると、約束した。
「全部、僕のやりたいことで、願いなんだ。だからこそ、こうやって言うんだよ。僕は絶対に『壊れない』。その結果もしダメだったとしても、最後まで僕はそうしていたい」
「……っ」
目を背けるように、一彦は視線を落とした。
一彦は、守れない約束の虚しさを知っている。
『……守ってくれるって、約束して……くれた』
そうして残るものが、どういう結果を産むかということも。
「……覚悟したって、できないもんは出来ねぇよ」
「それでも、他に方法がないんだ。諦めるより、マシじゃないかな」
「てめぇ、喧嘩売って……!?」
一彦は、ギリと歯噛みして、少年の胸ぐらを掴もうとして。
「やめろ、一彦」
指導者の言葉で、機械の腕は動きを止めた。
「……なんだよ、邪魔すんのか」
「邪魔とは心外だな。それは、勝負が対等に行われている時に行われることだろう? それとも既に諦めたお前の意見が、微かな希望にもすがろうとしている少年に勝っているとでも?」
「……チッ」
一彦は少年の襟を乱暴に突き放した。
綾が言うことも、一彦にはわかっていた。
時間が無いというなら、取れる方法も限られてくる。
だが一彦は、それを認めるわけにはいかなかった。
『……大丈夫だ、助けてやる。お前も、お前の友達も、全部』
それでは、本当は覚えていたあの約束を、守れない。
輝矢というその少年もまた、彼女の友達なのだから。
「……いいのかよ。こんな事を認めて」
「いいもなにも、代案が思い付かない以上、私がとやかく言える事ではない。それに、認めるかどうかの選択はお前に任せたはずだ」
「そんなもん、無責任にも程がある。なんで俺なんかに……」
「単純だ。代案が出せるとしたら私ではない。自分の弱さを理由に、持てる手札を隠し続ける、お前だ」
一彦は、予想外の言葉に驚き、綾を睨む。
その言葉を投げた当の本人は、何でもない様子で言う。
「何でも知っているところが、私の魅力だろ?」
「……なんのことか、さっぱりだな」
そう言って誤魔化す一彦を見る綾の目は、まるで一彦を見透かしているようだった。
明らかな目的を持って、一彦に問い詰めている。
「惚けるのも良いがなぁ、一彦。他人に自己投影しておきながら、嫌悪するのはやめろ。少年は、お前のような弱い人間とは違う」
「……あんた、何が言いたい」
「お前が思うほど、他人は弱くないということだ」
一彦は驚きに目を見開いた。その動揺の様子は、この場にいる誰にも分かることだった。
「一彦。人は誰しも、弱いなにかを持っている。その内容は人それぞれで、受け入れ方、立ち直り方もまた、人それぞれだ」
「……なにを言い出すかと思えば。今の話はできるかできないか、それだけだろ。関係ない話だな」
「あぁ。だがお前は、その弱さで人の成長を妨げている。『他人に嫌われたくない』という、ただそれだけの理由で、無駄に過保護な人間を演じているに過ぎない」
綾の言葉が一彦の喉を突き刺したように、言葉が出なかった。
「確かに、お前のその在り方は間違ってはいないだろう。事実として私もまた、お前に気付かされたものがあったからな。
……だが、今の少年はそれを必要とはしていない。一度決心を決めた人間の邪魔をするというのは、無粋というものだ」
そんなもの分かりきっている。
問題があるのは、そこに危険が存在するということなのだから。
「……だったら、どうすりゃいい。このまま、輝矢が無茶するところ、黙って見てろってのか」
「それはお前が考えることだ。私が言えるのは……そうだな」
綾は、少し考えるようにして、こう答えた。
「自分の以外の人間を、友達を信じろ」
その言葉で、一彦は歯噛みした。
それが、一彦には一番足りていないものだったから。
「……輝矢。お前はよぉ」
「なにかな?」
「なんのために、そこまで体はろうとしてるんだ」
一彦は、単純な疑問を少年に問いかけた。
「んー、なんだろね。言葉にすると変だけど……多分僕は、自分ってものを探してるんだと思う」
「自分……?」
「うん。どう在りたいかとかそんな理想の自分じゃなくて、やりたいことをする自分だよ」
少年にとって、それは一番大切なものだ。
「それを探して、見つけたかもしれないから、できるまで頑張ろうって決めたんだ。綾さんが言うほど、大層なものじゃないかもしれないけどね」
頬をかきながら、少年は答えた。
一彦の想像とは大きく違って、少年はしっかりとした考えを持っていた。
「……ははっ。なるほど……俺も、あんま変わらないな、それ」
誰も聞こえないような声で、小さく呟く。
少年のその言葉を、一彦は自分に当てはめた。
ただ、嫌われたくない。好かれたい。守ってやりたい。
それはただの理想に過ぎず。
自分のしたいことが、人助けと思い込んだ。
そして、それができていた自分に、酔っていた。
それが機械の青年の、弱さ。
「ばっかみてぇだな。俺は。なんだかんだ言って、逃げてただけじゃねぇか」
自分の弱さを理由に、本当の意味で約束を守ろうとしていなかった。
「あの時のカッコ悪い俺は、そういう事だったんだな」
自身が満身創痍だというのに救うなんて、できもしない約束をして、つむぎに負担をかけた。その理由は『ただ自分がそうありたかった』だけ。
なんて、格好悪い。
「……すまん、輝矢。俺お前の事、上から目線で馬鹿にしてた」
「え? いやいや、僕こそなに言ってるんだって感じだと思って……」
「そうじゃねぇ。俺が間違ってたんだよ」
そして、一彦は確信した。
自分以外の人だって、立ち直れるなら。
自分の手札を、出し渋る必要がなかったということを。
一彦は強い意志を込めて少年を見た。
「だけどな、これだけは譲らねぇ。俺はやっぱ認めねぇよ」
「……どうしてかな」
少年は、なおも譲らない一彦に問いかける。
「……輝矢、お前の意思はよく分かった。だが、それじゃ駄目だ。アレは、気構えだけでどうにかできるもんじゃない。そんなもんにお前の命をかける訳にはいかねぇ」
「じゃあ、どうするの? なにか他の方法が……」
「ある。1つだけな」
一彦の言葉に、少年とアンナは驚いた。
二人とも、本当に代案がでるとは思っていなかった。
綾は楽しそうにその様子を眺めている。
ここで一彦は気付いた。そもそも、この指導者は確信を持てない企画に乗るような人間ではない。
『一彦。お前、指示にないタイミングで頻繁に外に出入りしているようだが、何をしている?』
おそらく、あの時には既にバレていた。その上で、放置されていたのだ。
「……みんな、付いてきてくれないか」
そう言って、一彦は部屋の外は促した。
「俺も、資源回収だけをしてた訳じゃないんだ」
ーーーーーーーーーーーーーー
一彦は、研究施設の奥へと歩く。
後ろについて歩きながら、少年は疑問に思った。
「こっちって、僕来たことないんだけど」
「あたしも。この辺は予備の空き部屋ばかりで、普段寄らないもの」
アンナも少年に同意するように言う。
「だからこそ、隠す場所に使ってた。つっても、結局バレてたみたいだけどな」
一彦は埃1つ落ちていない廊下で、綾を見た。
掃除も担当している当の本人は、ニヤリと笑うだけだ。
「ま。今度から隠し事するなら全部、外に出て置いてくるわ……っと、ここだ」
一彦はそう言ってドア開けた真っ暗な部屋にみんなを通した。
電気がつけられた部屋に、少年とアンナは驚いた。
「……すごい、これ」
「……一彦、あんた!」
そこには、機械人形。マシナリーの体がズラリと並んでいた。
それも、サイズと見た目、顔が1つ1つ違い、個体差がある。
クオリティは一彦の体と大差なく、別々の人間のデータから作られたものと容易に想像できた。
「みんな、俺の友達だ」
一彦はそれら全てを指して、そう答えた。




