近づいていく気持ち
その日の夜、優子から最初のメールが送られてきた。
『純平さん、こんばんわ。
今日は突然声をかけてしまって、ごめんなさい。
私が普段からあんなことしてるなんて思わないでくださいね。
自分からああいう風に男の人に声をかけたの初めてで、本当にドキドキしてたんですから。
こんな私でよかったら、これから仲良くしてください。返事待ってます。 優子』
考えながら一生懸命に打ったんだろうなというのが伝わってくる気がした。しかし、俺はどうしても一つ優子に聞きたいことがあった。
なんで俺なんかに声をかけたのか……
俺はそもそも特に目立つようなタイプでないし、どこにでもいるような普通の高校生だと自分では思っている。容姿もかっこいいとは言えないものだと自覚している。100点満点で自己採点したら65点くらいの及第点をつけるだろう。周囲の評価はそれぞれ好みもあるだろうが平均すると同じくらいになるのではないかと思っているし、実際そんなもんだろう。
身長も175センチでクラスの背の順で男子の後ろから5番目と中途半端な感じだし、それでもあえて特徴を挙げるならば、視野が広いことと気配りができる方だということと、周りより少し落ち着いた大人びた印象を与えることが多いことくらいだろう。
女性目線で言うと、“いい人どまりの優しい人”で終わるタイプだろうと思う。
だからこそ、なんで俺なのか気になってしまうのだ。しかし、考えていても仕方ないので返事をすることにした。
『メールありがとう。あの時はいきなり声をかけられたからすごい驚いたよ。
それで、単刀直入で悪いんだけど、なんで俺なんかに声をかけようと思ったの?』
それに対する優子の返事は早かった。
『返事ありがとう。返事もらえないかもしれないと思っていたので嬉しかったです。
声をかけた理由ですか? それは今は秘密にしておきますね。
と、言いたいところなんですけど、本当は自分でもよく分からなくって……
あそこで声かけなきゃ、って思ったんですよ。すいません。答えになってないですよね。
あの、こんな変な女と仲良くなるのは嫌ですか?
もし気持ち悪いとか思ったなら、残念ですけど返事はしなくてもいいです。』
変な女……そんな風にはこのときは思っていなかった。
俺なんかに声をかけてきた変わった人とは思ってはいたが、むしろ、出会ったときの見た目の印象やメールの文面などから感じのいい人だなと思っていたくらいだ。
そして、何より俺みたいなヤツに声をかけてきてくれたという事実は思い返せばとても嬉しいことで、まだよくは知らないけど優子のようないい子そうな女の子と仲良くなれるチャンスを手に入れたということに、内心は浮かれてもいた。優子を拒絶する理由は見当たらなかった。
俺は優子とメールを続けることをもちろん了承し、色々なことをメールで話した。
そこで、優子が同い年であること、俺と同じで今付き合ってる相手がいないことも分かった。他にも、好きな食べ物や音楽、得意・不得意科目は何かなど、お互いに色々と自分のことを話した。
ただ、住所などお互いがどこらへんに住んでいるのか特定できそうなことは不思議と話題にあがることはなかった。
この日から、家と学校の往復などの移動時間や学校の休憩時間、家でくつろいでいる時間など、少しでも暇ができると優子とメールをすることが多くなった。優子とメールをすることが習慣化しつつあった。
友達からは、「毎日毎日、そんなにメールしてほんとに仲睦まじいな」、「例の逆ナンの彼女??」など、色々冷やかされたりもした。
他にも、「よくそんなにメールして話題とか尽きないよな?」とか言われたが、正直メールの話題なんてお互いなんでもよくなっていた。
今何してるのか、ご飯は何を食べたのかとか、その日あったことや面白かったことなど他愛のないやり取りを重ねた。好きな異性のタイプとか恋愛の話も話題に上がるようになり、その頻度も上がっていった。
そんな生活を続けていると、いつの間にか優子とメールをしていない時間がつまらないと感じるようになっていった。優子も同じようなことをメールで漏らしていた。
こんなにも頻繁にやり取りをしていて、お互いが恋愛感情にも似た感情を抱くのに、さほど時間はかからなかった。事実、俺は優子に惹かれていた。
次第に、ゆっくりと会って話したいという思いがお互いに強くなり、そういうことが話題にあがることも増え始めた。
そして、優子と出会ってから1ヶ月半くらい経ち12月になった。
その12月の最初の日曜日に俺と優子はデートをすることになった。
待ち合わせ場所は、優子が最初に声をかけてきた場所に決まった。「再会するならあそこがいいよね」と度々話していたので悩むことはなかった。
二人が初めて出会った場所から始めたい……
それが、俺と優子の共通の思いだった。




