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全ての始まり

 高校に入学して半年。

 高校生活という新しい環境にはすっかり慣れ、体育祭や文化祭などの大きな行事が終わり、わずかに肌寒さを感じるようになった10月2回目の土曜日。

 世間では完全週休二日制で学校は休みの土曜日だが、俺の通っている私立高校はそんな制度に関係なく土曜日も授業が組まれている。

 さらに普通科、専門科共にあるため学科数が多い高校なのだが、そのなかでも一番進学に力を入れている特進コースに籍を置いているため、他の学科にはない放課後にも授業があるというおまけまでついている。

 そんな勉強漬けのダウナーな時間が終わり、いつものように学校から数人の友達たちと一緒に帰っていた。学校は郊外にあるため、学校から最寄りの駅までバスで、俺はそこからさらに電車に乗り換えて帰っている。

 友達たちは最寄り駅のバスまでは同じだが、そこからは自転車で帰ったり、バスを乗り換えて帰ったり、俺とは違う路線の電車に乗り換える人もいる。

 俺が利用している路線は、田舎特有の基本的に1時間に1本というダイヤで、乗換えまで電車を待つ機会が多く、その間駅の近くにあるコンビニで立ち読みや買い食いなどをして、よく時間をつぶしている。それぞれ待ち時間はバラバラで、仲間内で時間に余裕のある人はギリギリまで他の人の時間つぶしに付き合う。

 それがいつもの帰宅パターンだ。


 今日もいつもの帰宅パターンになるはずで、ワイワイ談笑しながらバスを降りて駅の構内を横切りコンビニに向かっていた。

 ただ、今日はいつもとは違う出来事が起こった。


「すいません。ちょっといいですか?」


 駅の構内でなぜか俺だけが同い年くらいの見知らぬ女の子に呼び止められたのだ。こういう時の周りの男友達たちの取る行動は、一貫して子供じみている。


 空気を読んで置いていき、面白そうだから離れた場所からさりげなく覗く……


 いらない優しさとその後からかうことも考えた最善の手段なのだ。俺もこちらの立場なら同じことをしている。


「じゃあな、純平。また週明けに学校でな」

 テンプレ通り空気を読んで、ニヤけた顔を隠しきれずそれでもできるだけ自然を装いながら離れていく。引きとめようとする俺をもちろん無視し、結局一人置き去りにされた。

 なんだかハメられたというような気持ちになり、友達たちにむかつきを覚えたが、そもそもなぜ声をかけられたのかその理由も気になった。この一連のやり取りを俯き加減に静かに見守っていた女の子のほうに向きなおした。

「えっと……俺に何か用ですか?」

「用ってわけでもないんですが……よかったらこれから少し時間ありませんか?」

 さっきまで俯き加減だったその子は顔を上げ、ビシッっと目線を合わせてきた。

「ごめん。今から友達の家に行くから時間はないんだ」

 いきなりのことで動揺して、何も考えず正直に予定を話し断っていた。応え終わった後に、これが噂に聞く逆ナンというものなのかなと思って変にテンションが上がったが、すぐに先ほどの自分の言ったことを思い出し、少しもったいないことをしたかなと気落ちした。

「そうですか・・・」

 その女の子は見るからに残念そうに、深く俯いた。その姿を見て、嘘でも暇だと言うべきだったかなと後悔した。そして、この状況で次に何を言えばいいか分からず固まってしまった。

 気まずい沈黙が漂った。このままでは居づらいのでそろそろ何か理由をつけて立ち去ろうと思いだしたそのとき、その子は再び顔を上げた。

「あのっ!!」

 一瞬体が強張る。目の前の女の子は意を決したように一度頷いた。

「よかったら、携帯の番号交換しませんか?私はこの辺に住んでるわけじゃなくて……今日はたまたまこの辺に来ていたので……あの、その次はいつ会えるかわからないから……」

 途中から伏し目がちになり、声がだんだん小さくなって最後の方は聞きとるのも難しいほどだった。

 俺はというと、話を聞きながら途中から誰かの仕掛けたドッキリじゃないかとか、裏があるんじゃないのかと勘ぐっていた。こんな上手い話あるわけないと色々と考え込んでしまい、返事をすることを忘れてしまっていた。

「あのっ!! ダメでしょうか!?」

「あっ……えーと、いいですよ」

 少し大きめの声に圧されて思わず了承してしまう。

「ありがとう。じゃあ、まず私の番号送りますね」

 その子はパッと笑顔になり、お互いに番号を赤外線通信で交換する。今、目の前にいるこの子の本当に嬉しそうな顔を見ていると先ほどまで色々疑っていた自分に嫌悪感を覚えた。

 そのままよく見てみると、顔は特に目立ってかわいいとか綺麗とかいうわけではなかった。化粧とかも薄めで服装も変に飾ってなくて、全体的に地味な印象だが、素朴な感じが好感が持てる普通の女の子だった。

 俺の視線に気付いて、見るからに顔を赤らめ照れた表情を浮かべだす。

「その……そんなにジロジロ見ないでください……恥ずかしいですから……」

 そんなことを言われると、こちらまで照れてしまい、目線を不自然なほど大きく外してしまう。

「あっ……ごめん」

「いえ、えっと……純平さん。あとでメールするので時間のあるときでいいので返事くださいね」

 そう言うと、軽く頭を一度下げ小走りに駆け出していった。角を曲がる寸前にこちらに顔を向け小さく手を振って、その子は去っていった。

 俺はその姿を見送った後、名前を聞いてないことを思い出して携帯の電話帳で名前を確認した。


「優子って名前なんだな」


 携帯を制服のポケットにしまい、辺りを軽く見渡し一つ大きな深呼吸をした。やるべきことがまだ残っているからだ。

 俺は少し離れたところにある大きな柱に近づいて、その後ろに隠れている人たちに声をかける。

「いつまでそこに隠れてるつもりなんだ?ちょいちょいはみ出てるんだよ、お前らさ。てか、お前らそれでも本当に友達かよ?」

 置き去りにした友達たちへ嫌味を言うことと……

「いやいや、友達思いだろ、俺ら。だってさ、お邪魔になったら悪いじゃん?」

「そうそう、あんな場面ドラマとか漫画とかでもそうはないシチュエーションだもんな」

「ほんとにな。あーあ、モテるヤツはうらやましいわ」

 友達たちから嫌味を言われることだ……

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