戻りつつある日常
俺は周囲のおかげで、少しずつ穏やかな日常を取り戻していった。体調もすっかりよくなった。
毎年恒例の美樹の家族と合同で行われる忘年会に年越し、新年会は今年も行われ、宴会続きだった。
最初はおせちなどを作る手間が分担すれば半分ですむからという母同士の安易な考えで始まったそうだ。
父同士は、お互いに釣り好きでお酒好きということもあり、二人だけでよく出かけたりもしている仲だ。この年末も隙を見つけてはどちらかの家で一緒に飲んでいることが多い。気の合う人と過ごすことは楽しいし、気楽でいいということで、毎年のことのようになったのだそうだ。
こんな何も変わらない年末年始や、俺の家族と美樹の家族が作り出す暖かな団欒が心地よかった。ただ俺と美樹の両親による、いつになったら俺と美樹はくっつくのかという昔から繰り返されている定番の話だけは聞かない振りをした。今年のその話題は、美樹の親が娘に俺ではない彼氏ができたことを話して一同で残念がっていた。俺が春先に彼女と別れたみたいだとか、最近また彼女っぽい子がいるみたいだということも話題にあがる。年末に美樹が意味ありげなことを言っていたと母が報告したときは大いに盛り上がっていた。親達の情報網や観察眼に畏怖しながら、俺と美樹はその話題になったら逃げるようにしていた。
また毎年美樹と二人で行っている初詣に今年も行き、小学校や中学校時代の同級生に久しぶりに再会して、冷やかされたり、再会を懐かしんだりした。圭太に誘われて、美樹と三人でも初詣に行ったりもした。
冬休みも終わりに差し掛かった頃に、圭太の呼びかけで高校の友達たちで集まり、協同で冬休みの課題の追い込みをした。冬休み直後の病気などのごたごたで課題が思うように進んでなかった俺と、純粋にやっていなかった圭太含む数名は特に焦りながら課題を消化していった。
集まったときに事情を全く話していないので優子のことが少なからず話題に上がることがあった。しかし、俺はまだ完全に優子とのことを消化しきれていないうえに、まだ名前を聞くだけでも怖い思い出が脳裏をよぎることがあり、別れたということすら伝えられず、曖昧な返事をして流していた。
圭太だけは、何かしら違和感を覚えたらしく、「何かあった?」と周りに人がいないときに心配して聞いてくれたが、笑ってなんでもないと誤魔化していた。
完全とは言えないが、以前のような平和な日常を過ごしていた。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。またしても、俺の平和な日常を揺るがす事件が起きてしまったのだ……




