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シュクレイアの子育て奮闘記

「おんぎゃー、おんぎゃー」


シュエルの泣く声がする。


「どうした、お腹すいちゃった?ちょっとまってね」


お腹が空いちゃったんだろう。私は与えられたテントの中で授乳の準備をする。


「いい子だからゆっくり吸ってね」


泣きはしなくなったけど、ちょっと吸う力が強い。胸の先で鋭い痛みが走る。


「あー上手く吸えなかったか。あーもうシュエルが血まみれだ。ごめんね。」


私は急いで、清潔なタオルを探す。どうにか見つけたそれでシュエルの顔を拭き、拭き終わったのちに自分から出ていた血を拭った。しかし、シュエルの泣き声はまだ止まらない。


「あ〜もうどうしよう。もしかしたら寒かったかな。いや服はちゃんと重ね着させてるし・・・」


私があたふたしているその時、


「シュクレイアちゃん大丈夫か?随分と泣き止まないようだが。ありゃお前さん重ね着させ過ぎだよ。暑がってるんじゃないか。服を脱がせたほうがいい」


見張りをしてくれていたずっとこのコロニーにいると言っていたおじさんがこういった。


「本当ですか。ありがとうございます」


「いやいや構わないさ。私にも昔息子がいてな。妻と一緒に頑張って育ててたものだよ」


「そうなんですね。でももしかして息子さんって・・」


「ああ、私より先に遠くに行ってしまってな。でも私はそのお陰で強くなれたんだ。息子には悪いことばかりしてしまった。だからその経験を次の世代に託したいだけなのさ」


気まずい。でも本当に嬉しい。私のことを助けてくれるなんて。しかもおじさんのお陰で泣き止んでくれた。こんな世界でも人は温かいんだな。でも世界は・・・


「ウヴォー」


パニオンの声。泣き声で呼び寄せてしまったんだ。


「嬢ちゃんはここにいてくれ。私が倒す」


「いや、私のせいで呼ぶ寄せてしまったんです。だからここは」


「でもな、子には親が必要なんだ。だからここで、死ぬな。シュクレイア。全力でその子を守れ」


こう言い残し、私が反論を言う暇も与えず、おじさんは去ってしまった。外からは戦闘の音がする。私はいても立ってもいられず、シュエルをおいて外に飛び出そうとした。けれど


「おんぎゃー」


シュエルが泣いてしまった。


「大丈夫だよ。いなくならないからね」


私はそう言いつつ、抱っこ紐を探し、シュエルを抱っこする。なんでこんなときに。そんな感情をシュエルにぶつけるなんて大間違い。でも今この瞬間だけはそう思ってしまう。まだ外では戦闘音がする。私は外に駆け出した。

眼の前に見えるのは高さ3mほどのかなり巨大なパニオンだった。


「おじさんは」


どこ、どこ。砂煙でよく見えない。けど、


「おじさん、よかった。ここからは私も・・」


へ、足は、おじさんの足は。ない。どこにもない。


「シュクレイア。なんで出てきた。まだお前さんは死んだらいけない。ここは老兵に任せろ。こんな敵にやられるなんてありえんわ」


「でも、今の足じゃ無理ですよ。私がいないと」


私はなんとか拳銃を構える。ここで助けないと私は。でも、眼の前にパニオンの爪が迫る。ここでやらないと。やらな・・・


「あ〜もうなんだ、こんな夜中に俺の睡眠を妨げるのは。たださえ睡眠不足なんだよ。さっさと死んでくれ」


リーラさん。助けに来てくれたんだ。すごい、不意打ちとはいえ、一撃で倒してしまった。いあや、今はそれどころじゃない。


「おじさん大丈夫ですか。いま、止血しますからね」


私は抱っこ紐を素早く解き、止血を試みる。でもシュエルを抱きながらじゃ難しい。


「お前、足・・シュクレイアそれ貸せ。ここで死なれたら目覚めが悪い」


そう言って、リーラさんは黙って止血を始めた。やっぱりすごいな。私とは住んでる次元が違う。どれだけ助けられたのか、助けられるのかわからない。でもそのたびに嬉しくなって、すごいって思ってしまう。


「とりあえず、応急措置ならこんなもんだろ。でもさっさと医者のところに行くぞ。シュクレイアはアルケスを呼んでくれ。いらつくが俺より医学に知見がある。なんか助けになるだろう」



「ほんとにごめん。気づけなかった。でも、大丈夫だった?」


アルケスさんを呼びに行こうとしていたが、もうここまで来てくれていたみたいだ。


「私は大丈夫です。でもおじさんが」


「これはひどいね。噛みちぎられたか。ごめんだけど今の設備だと傷口を焼くくらいしかできなそう。リーラ火を用意してくれない」


「ちょうどよくマッチなら持ってる。焼くためのものは刀くらいしかねえな」


リーラさんは少し機嫌が悪そうながらも、こういった。この人は本当に行動特徴が一致してないなと思ってしまった。


「それで十分だよ。じゃあ焼くよ。ごめんだけど我慢して」


そう言いつつアルケスさんは近くの枝をかき集め、マッチに火をつけ、焚き火にした。その後刃を焼き、傷口につけた。


「がぁー。はぁ。んぐ。はぁ・・はぁ」


この場はおじさんの苦しむ声と、生々しい肉の焼ける音で支配された。私はおじさんの姿を見ていられなくなり、シュエルを持つ力が強くなってしまう。


「とりあえず終わったけど、決した治ったわけじゃあないし、絶対安静でいること」


「ありがとうご・・」


へ、倒れた。あれだけ血を流していたんだ。もしかして


「落ち着いて。シュクレ。脈はあるし呼吸もある。きっと限界が来ちゃっただけだよ」


「す、すいません。心配かけてしまって。でもとりあえず大丈夫なんですね。よかった〜」


私は安心のあまり膝をついた。


「そういえば、シュエルは大丈夫?」


「あ、シュエル。大丈夫・・」


こんな激闘の中でもシュエルはそんなこと知るかと言わんばかりにぐっすりと寝ていた。


「あはは。シュエル、そうだよね疲れてるよね。そりゃ寝ちゃうか」


「だとしても、呑気すぎるだろ。こいつ成長したあと大丈夫か?」


アルケスさんは笑い、リーラさんは、言った言葉とは違い、微笑んでいた。


「そうですね。おじさんも大丈夫そうですし、今日はもうゆっくりと寝かそうと思います」


私はそう言って、自分のテントに戻った。




「今日はどんな宝に会えるかな」


「そんなに乗り出すな。でもいいものに会えるといいな」

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