第1章、後編
パニオン
それは増えることを目的とした。単純な生物。しかしその増え方は他の生物を食い、蓄えたエネルギーによる無性生殖によって増える。
つまり一匹でも殺し損ねたら、また、増えるのだ。そしてその数が80を超えることがある。人はそれをマキアと呼んだ。
実は俺達はマキアを最近のパニオンの発生数から予知していた。予想より早い到着のせいで訓練中での戦闘になったがまぁいいだろう。それより
「このマキアとの戦闘、あまり手を出さないでくれるか?性能をしっかりとテストしておきたい」
俺はアルケスにそういった。そうしたら
「さっき起きたばっかでしょ。無理しないで」
アルケスはまっすぐな目でこう懇願してきた。
「でも、やらせてほしい」
「はぁ、わかったよ。命に関わることがなさそうだったり、この場所に被害が出そうなとき以外は手を出さないよ。でもある程度テストし終わったらすぐに私にまかせること」
「ああ、わかったよ」
俺はそう言ったあとすぐに駆け出した。
パニオンどもが俺を食おうと、迫ってくる。見慣れた単調な動きだ。俺はサッと避けた後に、一閃を放つ。しかし、与えることのできた傷は、浅い、その一言につきるものだった。やはり、強化アーマーを着ても、ソテリアよりかは出力が落ちる。しかしそれだけではない。パニオンは増える時により強くなる。そのため前に戦ったやつよりも堅かったのだ。その事実に俺は軽く舌打ちをした後に、パニオンと距離を取る。
さて、どうやって殺すか。火力のない今の俺にとってこのまま戦うことは死を意味する。ならばどうするか、答えは一つ。一気にふっとばす。
パニオンどもは、無限に追ってくる。なんとかダメージを与えようと、パニオンの手が伸びてくる。しかし俺は壁を走るようにして避ける。その勢いのまま軽く周りにいたパニオンどもにダメージを与え、群れの中心に向かう。
足の踏み場もないほどに敵が埋め尽くしている。手が軽く震える。死への恐怖は俺を蝕む。
「危ない」
アルケスがそう叫んできた。くそ、パニオンが飛びついてきてやがる。俺は一度、退こうとするが後ろにも多くのパニオンがいる。さらに死への恐怖が深まる。アルケスが銃を構える音が聞こえる。
「手を出さないでくれ、大丈夫だ。」
俺はそう叫んだ。そして頬をぶっ叩く。俺はこれを超えてみせる。いや超える。
落下の勢いも使いつつ、パニオンを一体仕留める。これで踏ん張りが効くようになった。俺は、ワイヤーを伸ばし、近くにいたパニオンを掴む。そして体を大きくひねり、周りのパニオンを吹っ飛ばす。殺傷能力などない。だがこれで十分だ。俺は前進する。
よしここがほぼ中心だろう。俺はそれを認識した後に、まだ捕まえていたパニオンを地面に叩きつけ、その勢いを使い跳躍する。俺は腕に仕込んでいたランチャーを構える。
「吹き飛べ!!」
直後、閃光が奔る。パニオンどもの断末魔が聞こえる。最高だ。久々にそう感じることができた。
今の一撃で、マキアの4割ほどの敵を一気に殲滅することができた。残った6割もほとんどが攻撃に被弾していたためあと一撃与えれば、勝てるだろう。よしこのままこの戦いを楽しもうか。
「まさかほとんど一人で倒せるとは思わなかったよ。リーラはすごいね。よしよししてあげる」
殲滅が終わったあとアルケスは心底嬉しそうな声で言ってきた。
「してもらわなくて結構、てかお前がしたいだけだろ」
「そう、残念。まぁいっか。それより武器とか防具は大丈夫?あれだけの一撃を放つなんて何かしらのデメリットがありそうなもんだけど」
「武器とか防具自体には影響はない。ただ消費エネルギーがでかすぎるな。全体の2割のエネルギーが食われるから、使い所は考えないと。」
こういう話をしていると、ますますこいつが何者かが気になる。ただ悪いやつではなさそうだ。
「お疲れ様です、お二人とも。後のことは私に任せて、ゆっくり休んでください」
シュクレイアがそう言いながら近づいてきた。ただ
「危ない!」
俺はそう叫んだ。パニオンだ。倒し漏れがあったのか。すぐに抜刀し、急所をつき、殺す。
「何してんだお前、あぶねぇな。警戒を解くなよ」
「す、すみません。ちょっと油断してました。で、でもありがとうございます」
はぁ、俺らのことを心配してくれてるのはわかるが、ミスを連れてくるんだよな。この前もシュエルを世話してた時に、母乳をあげようとして、人目につかないような場所に行こうとするのはわかるが、コロニーの柵の外に行こうとしていた。その時はアルケスが気づいて全力で止めていたな。
「ごめん気づけなくて。リーラ、シュクレ大丈夫だった?」
謝っているが、理由はあらかた死体に祈っていたからだろう。ほんと、なぜしてるのか分からない。俺が近くにいたからいいものの俺が近くいなかったらどうしていたのだろう。
「いえいえ大丈夫ですよ。元を辿れば、私が油断したのが悪いんですし。なので気にしないでください」
シュクレイアは申し訳なさそうに言った。
「ありがとね、シュクレ」
アルケスも申し訳なさそうに答えた。互いのことを大切に思っているのだろうか。いや分からないな。というか少し気まずい空気だな。
「あ、あの、私のわがままについて来てくれるお礼を渡したいんです」
こんな空気を引き裂くようにシュクレイアはそう言った。
「私がやりたいだけなんだから、お礼なんていいのに。気持ちだけでいいよ。私はシュクレイアの満足な顔を見れたら十分」
なんでお礼を遠慮してるんだ。好意なんだから貰えばいいのに。まぁ彼女なりの優しさなのだろうか。
「じゃあ言い方を変えますね。私は命を守ってくれてるお二人に少しでも長生きして欲しいんです。だから渡させてください」
シュクレイアのやつ言い方が上手だな。これだったらアルケスも受け取らざるを得ないだろう。
「いや、それでも。今のシュクレにはシュエルがいてそのお世話だけでも大変でしょう。それなのに、受け取らないよ」
まだ受け取ろうとしないの。ほんとになんで?
「はぁ素直に受け取れよ。シュクレイアがあげたいって言ってるんだ。受け取らない方がシュクレイアを傷つけるぞ」
気づけば俺はそう言っていた。何言ってんだ俺は。正論ではあるが、らしくないな。
「リーラにも言われちゃうか。わかったよ。ありがたく、いただくね」
アルケスはようやく自分を曲げた。
「ありがとうございます。じゃあ早速渡させていただきますね。はい、これはアルケスさんの」
「え、これホルスター。もしかして手作り。ありがとう。」
アルケスは屈託のないきれいな笑顔をシュクレイアに向けた。
「あの、リーラさんには悪いんですけどリーラさんの戦闘スタイルがわからなかったので、ただの素材にはなるんですけど・・・よかったらどうぞ」
シュクレイアは申し訳なさそうに言った。まぁでもしかたないし、俺がアルケスと同じように手作りのものをもらうなんて俺のほうが・・・
「もしかしてそれって、マサツナイーか」
「え、そうですけどもしかして嫌」
「本当にくれるのか。まじか、ずっと欲しかったんどよ。うわーうれしい!」
「そんなにそのマサツナイーってすごいの?」
「すごいも何もこのマサツナイーは、文字通り摩擦がほぼ無くなるとんでもねえ特殊合金なんだよ。これがほんとにすごくてな。地球上であればどんなに頑張っても摩擦は発生してしまう。限りなくゼロに近づける方法ならあるんだが。でもこのマサツナイーは複数の金属の原子をぶつけて・・・」
「ストップ、ストップ。リーラやめて。シュクレが急にマシンガントークされたせいですごく遠い目をしてる。これ以上はシュクレが理解出来なさすぎて、脳が壊れちゃう」
こう言われた瞬間、俺は全身が熱くなるのを感じた。やってしまった。まじか、武器オタがバレてしまった。どうしよう、どうしよう。もうやだ〜。
「ま、まあ誰にでも熱中してしまうものだってありますよ」
シュクレイアはわかってない。こういうときは、フォローされる方がきついことを。
「準備は大丈夫?足りてないものってない?」
「大丈夫だよ。というかお前は俺のおかんか」
「私はそれでもいいけどな」
相変わらず理由のわからない野郎だな。少し気持ちが悪い。というかいまこいつのペースに巻き込まれるのはまずい。今からコリスに侵入しなければならない。集中していかないと。
「すみません、こんな私のわがままを聞いてもらって。でも本当にありがとうございます。この子を、この子をどうかお願いします」
シュクレイアはいつも通り申し訳なさそうに、シュエルを大事そうに抱えながら言ってきた。そのままアルケスは受け取ろうとする。しかし、
「なんで離さねえんだよ。月が出ている間に終わらせたいから早く渡してくれないか」
「すみません。でもこれが最後になると思うと・・・
すみません、もう少しだけこの子の温もりを感じさせてくれませんか」
なんでと言おうとしたが、シュクレイアの目は今にも泣き出してしまいそうなものであった。
「シュクレ、後悔のないようにしてね」
アルケスはそういった。
あれから30分ほどたっただろうか。ようやくシュクレイアは覚悟を決め、手を離し、シュエルをアルケスに託した。
「リーラさん、アルケスさん、どうか娘を、シュエルを安全なところに。お願いします!」
シュクレイアは自分のすべての気持ちを込めた声援を、俺達の背中に預けた。
「アルケス、もう一度作戦を確認をするぞ。まずサクッと隠れてる扉から入って警備ロボを呼ぶ。そんでもってそいつらが出てきた通路から侵入して、倉庫から居住区に行く。そして協力者のシューにシュエルを渡してササッと退散」
「うん、わかってるよ。シュクレも私たちについてるセンサーからの情報から援護をお願いね」
『はい、できる限り、頑張ります』
全員やる気は十分みたいだな。ただ俺は、どうすべきなのだろうか。今、復讐をなすべきなのだろうか。いや、考えるな。ここで迷っている方が判断を狂わせる。
俺は考えを振り切り、月光に照らされながら、扉を目指す。扉自体はすぐ見つかった。しかし、
「この扉どうやって開けるの?取ってもないし、硬すぎるよ」
「この扉はカードで開けるのが普通だからな。取っ手なんてない。でもこのためにもこれを作ったんだ」
俺は右手に仕込まれた、ランチャーを構える。
「一応、離れとけ。吹き飛ばす」
ドーン!!!
少し俺のトラウマを刺激するような、音によって扉が破壊された。
「おそらくすぐに警備ロボが来る。急ぐぞ」
「了解!」
なんとか中に入る。よし、いま出てきたな。このまま、出てきた通路を目指す。警備ロボが何体か撃ってくるが遅い。左腕に仕込んでおいた、折りたたみ式の盾でシュエルに当たらないように受け流す。シュクレイアがくれたマサツナイーのお陰で折りたたみ式で軽いのにうまく防げる盾を作れた。近接で俺を殺そうと近づいてくるが、それは一番俺が得意な距離だ。さっさと抜刀して、ロボたちを一気に破壊する。
「お〜流石リーラだね。私は少し動きにくいから、守ってくれるのはすごく助かるよ。やっぱりリーラは優しいね」
そう言いながらアルケスは、横から迫ってくるロボを、ホルスターから素早く拳銃を引き抜き撃ち抜いた。アルケスたちを守ろうとする必要があるわけでないのがわかるからうれしいが。
というか俺のこと優しいって言ったか。何を馬鹿なことを言ってるんだ。俺が優しいわけないのに。
『後ろから複数の人間のような、反応が来てます』
それを聞き、俺らはすぐ通路に行った。
通路内は、ロボがかなりくるが一体一体は、あまり強いわけではないのでさっさと壊しまくる。ここまでは順調すぎて怖いくらい順調だ。嬉しい限りではあるが、油断せずいかないと。
そんな心情とは反対に、この勢いのままロボの倉庫の手前についた。
「うげーこの数はやばいね。でも、ここは私に任せてくれない?」
ここも俺のランチャーで吹き飛ばそうと思っていたのだが、アルケスはこう言ってきた。
「あのランチャーはかなりエネルギーを使うんでしょ。ここで撃っちゃたら残るエネルギーは最大の半分を切っちゃうじゃない」
「まあそうか、でもあの数を一気に倒せんのか?」
「舐められてるなー。でも任せて。あ、でもシュエルを一旦お願い」
そう言って、水晶でも渡すように、俺に渡してきた。そうして構えたのはよくわからない黒い箱であった。と思ったら一気に変形していき、巨大なレールガンのようなものになった。
「このロボット達を作った人には申し訳ないけど、シュエルのためだから、ごめんね」
そう言って、銃口から出てきたのは鉄塊のような、いや倒したロボたちがとんでもない勢いで吹っ飛んでいった。周りのものを使うから準備するものがガスだけで少ないのか。あとさっきロボの残骸を集めていたのはこのためだろう。今の状況ではうってつけだが、絵面がやばいな。そして数分後、眼の前には、ロボの墓場のようなものが広がっていた。
「お前そんな武器あったんだな。まあでももうこうなってしまえば、シューのところまでもうすぐだ。意外と人には弱かったんだなこの場所は。」
『確かに、思ったよりうまくいって・・・』
ガチン
鉄同士が当たる音がした。でもなにが起こったんだそう思い、後ろを振り向くと
「扉だと、こんなんなかったろ」
ドーン
何かが落ちてきた。なんだこれは。人か?いや違う腕を動かすたびにギアが回る音がする。ロボットがソテリアか。とにかく倒すべき敵であることは間違いない。
「リーラ、下がっててここは私がやる。早くシュエルを安全なところに連れて行ってからない?」
「悪くはないがお前一人で脱出できるのか?」
『リーラさんのいうこともありますけど、それより単独行動になるのは良くないって感じるんですけど』
シュクレイアと俺はそう言った。どうやら同じことを思っていたらしい。ここで単独行動になるのはリスクがかなりある。まぁでも
「どっちも大丈夫。リーラはここにいる奴らに負けないだろうし、私だってあれには負けない。だから安心して行って」
こうなったらアルケスは自分を曲げないんだよな。なんでこうも俺を信頼できるんだ。
「わかったよ。終わったら連絡する」そう言って俺らは別々の方向に走り出した。
「さーて。君はどんな子なのかな。おいで」
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よし、リーラ達は行ったね。とりあえずは大丈夫なはず。とりあえずこのソテリア?を倒さないとね。とか思ってるけどもう切り掛かりにきてる。なんなんだろ。あの武器。ククリ刀かな。まぁでも近接で戦ってくるんでしょ。それなら私は距離を取ろうかな。
そう思って私は壁にワイヤーを引っ掛けて壁際に移動する。そしてそのついでにホルスターから拳銃を引き抜き2、3発を手足の関節に当てる。そしたら、目の前の機械は手足を失い、動かなくなった。
「え、もう終わり?思ったより弱かったな。んでも、こんなところで終わるのか・・・」
ガシャン
え、なんで外れたはずの腕やら脚やらが胴体にくっついた。なんで。いや、パーツ一つ一つで動けるようになってたんだ。そして磁力でくっついていたんだろう。なら、とりあえパーツを一つ破壊できるようにしてみよう。そう思って私は持っていた拳銃を再び構えた。
私はとりあえず足の関節を狙う。しかし、撃った弾たちが当たることはなかった。足を分離して避けたんだ。そっか、そりゃパーツで分かれるんだったらそういう避け方もできるよね。
機械は足を分離させながらも接近してきた。そのままククリ刀で私の首を狙ってくる。
「危な。君、女の子にそんな急に近づいたら嫌われるよっと」
私は間一髪で避けつつ、こんな言葉を吐き、胴にキックを入れた。まぁこう言いつつ私、今すごく冷や汗かきそうだった。余裕ありそうに見せてるけどそんな余裕ないよ。でも、なんも反応しないからソテリアじゃなさそうだねAIで動かしてるのかな。
こんな考え事をしているが私が不利なことに変わりはない。後ろは壁だ。後ろに逃げるなんてできない。でもさっき胴には攻撃が入ったから胴はどこかで分離できることはなさそう。
私はそれを再度確かめるため、回し蹴りで攻撃しようとする。でも
「これを避けるんだ。意外と優秀だね、君。並のパニオンだったら避けれないと思うんだけどな~」
この機械とてつもなく学習能力が高い。何を狙ってるかをすぐに当ててくる。そして、それを踏まえた行動をしてくる。
そして、機械は避けた体勢のまま私に蹴りを放ってる。うーん、どうしようかな。吹き飛ばされたおかげで距離は空いたけど。対処法・・意外と簡単か。避ける場所ごと消し飛ばしちゃったらいい。そしたら、さっき使った射出機を使いたいけど、弾になるものが近くに無い。どうしよう。今の最大火力があれだ。別の方法でいくしかないか。
機械は私に追撃を入れるべく私に近づいてくる。私は横に回転しつつ避け、頭を狙った。しかし、分離され避けられる。でもそれが狙い。私は分離した頭をサッカーボールみたいにぶっ飛ばしてみた。
機械から反撃をもらい部屋の角に飛ばされる。だけど
「やっぱり。離れすぎるとそりゃすぐには再生しないよね」
でも、確かめるためとはいえ攻撃をもらいすぎた。もしかしたらこれからの動きに支障が出るかも。まあいいや。とにかく、弱点はわかった。ただ、今までの感じからして同じ手は喰らわないだろう。なら、
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あいつは大丈夫なのだろうか、そんな不満も抱えつつ、俺は走った。予想とは異なり、居住区にはロボットは一体もいなかった。ただ冷静に考えれば、倉庫にいるロボットはあらかた破壊したので、当然ではあった。しかし周りの音がうるさくなっている。ソテリアの準備をしているのだろう。となると早く、シューにシュエルを渡さなければならない。
「リーラか?お前もしかしてリーラなのか?なんでなんでここにいるんだ。この化物が!」
うるさい声だ。そう思いつつも振り返るといたのは、あん時陰口言って、俺の追放を先導しやがったやろうだった。まさか今、会えるとは思わなかった。こいつには絶対に、俺以上の目にあってもらわなければならない。
『リーラさん、どうしました。早くいかないとまずいですよ』
たしかにそうだ。でもこれは今俺が一番しなければならな・・・
あれ、なんで俺はこいつを殺さなければならないんだ。いや、こいつは俺の追放を先導しやがったやつだ。だから何なんだ。こいつを殺して何のメリットがある。そうだ、俺の崩されたプライドがきっと治るはずだ。でもそのプライドは本当に良いものだったのか。そもそもプライドが治ったところでなんになる。わからない、わからない。俺はどうすべきなんだ。
『ちょっとあなた達。なんであなた達は、リーラさんのことを化物っていうの。この人のどこが化物なんだか。私のわがままを聞いてくれるし、守ってくれる。たしかに口は悪いけど、根はとても優しい。それなのになんで化物っていうの。聞こえてるでしょ、答えなさい』
「ちょ、何いってんだお前。恥ずかしい。あーも早く行くぞ」
何いってんだ俺は。ここを逃したら俺を追放させやがった奴らに復讐できる機会なんて、やっぱりここでやらなきゃ・・
(やっぱりリーラは優しいね)
体はすでにシューのもとに走り出していた。優しいか。なんなんだろう。この気持ちは。嬉しいのだろうか。肯定してくれるのは嬉しいんだな。
復讐は後からでもできる。ここで俺がすべきことは、シュエルを安全に届けることだ。
「おう、ようやく来たか。待たせやがって。ま、その感じ、そんなにダメージは負ってなさそうだな。そんなに苦戦はしなかったのか」
「トラブルが多くてな。でもこれでようやく終わるよ。これからこいつを頼むぜ」
ようやく、シューのもとにたどり着き、俺はシューにさっさとシュエルを渡そうとする。しかし
『ちょ、ちょっと待って。あ、すいません。でも少し待ってくれませんか』
「へ?お前さん、この赤ん坊を守るためにリーラに頼んだんじゃなかったのか」
シューは素っ頓狂な声を出している。
「シューの言う通りだ。どうしたんだシュクレイア」
俺はわけも分からず、少し厳しい声で言ってしまった。
『す、すいません。でも、少し待ってくれませんか』
どうしてしまったんだシュクレイアは
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ドーン!!
私はライフルで、一度に吹き飛ばそうとするが流石にライフルじゃ、弾の大きさが足らない。容易に避けられてしまった。
頭を吹き飛ばしたが、体勢を整えている間に再生してしまっている。
「やっぱり、この火力じゃ無理だよね。なら近接で戦ってあげる」
私はライフルを投げ捨てて、一気に距離を詰めた。機械のそれを予測していなかったのか、一瞬動きが止まった。その隙に私は胴にパンチを放つ。これで周りが外れてくれたら楽だったんだけど、まあそんなうまくはいかない。距離ができたので再び、距離を詰める。
しかし、流石に読まれ、移動を牽制するように、ククリ刀で私を引き裂こうと攻撃してくる。でも、そんなのリーラに比べて遅すぎる。私はその刀を白刃取りし、右腕の関節を蹴ろうとする。あたりはしない。しかしそれが狙いだ。私は刀と腕を射出機に込めておく。だが、
ウィーン
「え、何その腕。急に変形するじゃん」
左腕がチェーンソーのようになった。これは少しまずい。武装がもうないと思っていたのに。でもこれが最後の仕掛けだろう。私は少し距離を取った。しかし機械はそれを追うように攻撃してくる。でも遅いな。こんな攻撃に当たるわけない。
私は体を反りつつ、足に拳銃による射撃で足が外れるようにする。しかし足を外して避けることはせず受けてきた。予想外の事実に、驚いてしまう。さらに体勢が崩れ後ろに倒れてしまう。機械はその隙を逃すまいと斬りかかる。でも本当の狙いに気付いてないな。私は機械の足に自分の足を絡ませ横に倒した。
「ごめんね。でもこれで終わり」
射出機から放たれた一撃により、ロボは破壊された。
「よし、早くリーラのところにいかないと。いや、いかないほうが合流しやすいかな。通信の感じ、シューに会えたみたいだし。でもあのシューとあってみたかったな。もし会えてたら・・・」
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『あの、あのですね。どこから話せばいいのかな。あの私の過去に関してはおふたりともご存知ですよね』
シュクレイアは少し、間をおいてからこういった。
「たしか、体を売っていたら、授かってしまったんだっけか」
俺はこう返した。
『はい。そして、その後出産したんですが、実は最初はこの子のことが大嫌いだったんですよ。夜泣きでパニオンを引き付けるし、一人でも食事量が足りないのに、さらに多く食べないといけなかったですし。一度、本気でこのことを何処かにおいていこうかとも本気で考えていたんですよ。
でも、無邪気に笑うんです。この子は。世界がこんなにもひどい状態なのに。その姿を見るたびに私は救われてる感じがするんです。いつかその子は私の希望になってたんです。だから私は希望という意味を持つ、エルピスと私の名前をとってシュエルって名前をつけたんです』
そんな過去があったのか。それはそうだよな。こんな世界で子供を育てるなんて大変でしかない。でも、希望になっていたんだな。シュエルが。でも
「じゃあ、なんで手放そうとしたんだ?」
『そう思われますよね。でも私はこのままだとこの子を守れないって思っちゃんたんですよ。私はこの子が生きてるだけで世界は明るいって思うんです。でもリーラさんとアルケスさんの姿を見るたびに誰かを守れるのはすごいなって思ってたんです。そして私はそんな姿に憧れてたんです。
だけど私はシュエルを守ろうとしてない。そんな自分がすごく嫌になっていたんです。それでずっと悩んでいたんです。
そして、色々言いましたけど結局私はこの子が大事で、好きで、大好きでたまらなくて、離したくなかったんです。今、離れてしまうこの瞬間に強く感じてしまったんです。
だから、だから!私はこの子を自分で守りたい。自分でこの子の世界を守ってみたい。なのでリーラさんとアルケスさんのは申し訳ないんですけど、この子を自分で守らせてください』
俺は希望にあふれるシュクレイアの声を聞き肩を落とした。はぁ、まじかよ。今回の苦労はすべて水の泡か。なんのために潜入させたんだ。でも、
「わかったよ、シュクレイア。だったら早くお前のもとにシュエルを安全に届けなきゃな。シューもいいよな」
俺はシュクレイアの思いを聞いて横で笑いまくっているシューにこういった。
「俺は全然いいぜ。こんな面白い物を見せてもらえたんだ。十分な給料だよ」
「んじゃ帰るか」
俺はシュエルを盾で囲いながらアルケスのもとに走った。
「お、終わった?んでもシュエルはまだいるね。てことは、シュクレイアは自分で守る選択をしたのかな」
アルケスは納得したかのような顔をしてこういった。
「分かってたのかよ、お前は。分かってたなら事前に止めればよかったじゃねえか」
俺は嫌味たっぷりでこういった。
「でも、離れる直前にならなきゃシュクレアは判断できなかっただろうからね。だから、こうするしかなかったんだよ。でも私は嬉しいよ。その感じ復讐はしなかったんだよね」
「え、なんで分かんだよ。俺お前にコリスの奴らに復讐したいって言ったか?」
俺は驚きに満ちた声でこういった。
「状況は知ってたからね。だから、復讐をしたいだろうなって思ってたし。でも、そんな中でも他人の命を大事に思ってくれたんだろうね」
「別に復讐は諦めてねえよ。まあさっさと逃げるぞ」
俺は呆れめ半分にこういった。
「そうだね。こんなところからはさっさと逃げようか」
「リーラ体調はどう?」
あれから一週間。アルケスはこう話しかけてきた。
「別に大丈夫だよ。てかお前のほうが怪我やばいだろ。あのソテリアみたいなやつと戦ったんだから」
「大丈夫だよ。でも心配してくれてありがとね」
アルケスは心底嬉しそうにこう答えた。
「あ、シュクレイアはどうしたんだ?」
最近、シュクレアの姿を見ていない。どうしてるんだろうか。
「戦い方を学んでるみたいだよ。嬉しい限りだね。私達に憧れてこうするって。もう私がいなくても大丈夫そう」
「え、ちょっと待て。お前ここからいなくなるのか?」
驚いた。アルケスだったらずっとここを守り続けようとすると思っていた。
「うん、私はもともと目指してる場所があって、その旅の途中だったんだよ。それで、ちょっと提案なんだけど、一緒にさ、旅しない?」
旅か。でも、俺は復讐をしなければならない。でも、
「俺からも頼む。この世界のことを、シュクレイアみたいなやつをもっと知りたい」
「んじゃ決定だね。これからもよろしく」
そう言ってアルケスは手を差し出してきた。
「ああ」
そう言って俺はアルケスの手を握った。




