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宝石だけじゃない、工学知識でモノづくり ~荒野での快適生活を邪魔する奴らは、返り討ちにする~  作者: 色石ひかる
7_勇者を返り討ち

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第44話 鉱物スキルと植物スキル

 レステアネ神殿が誕生して、ふたりの神殿長が認めてくれた。簡単な食事を振る舞ったあとに、日が暮れる前にルーペンへ送り届けた。


 食事中にステータスボードが入手できるかを聞いたら、劣化版なら商工ギルドがたまに確保しているので、非常に高価だが購入する機会はあるらしい。レステアネ神殿にステータスボードがあると便利なので、劣化版でも買いたいと思った。


 レステアネ神殿の誕生から数日後、冒険者ギルドの依頼を受けるために、レネとふたりでルーペンの街へ来ていた。


「そういえば、薬草栽培は枯れている薬草と成長している薬草を見かけたが、植え方の違いでどのような変化が分かったか教えてほしい」


 南門を通って、冒険者ギルドへ向かいながら聞いた。


「まだ収穫まで成長していませんが、あきらかな違いがありましたわ。何も与えない区画の薬草は全て枯れて、肥料のみの薬草は枯れるかほとんど成長していません」


「やはり農業ギルドが説明したように、薬草を育てるのはむずかしそうだ」


「ただ植物育成の技を使った区画は、どちらも順調に育っていますわ。もう少しすれば収穫できるかしら」


 なお植物育成の技を使えば、肥料の有無による差はみられないらしい。3種類の薬草による成長の差もないようで、収穫のときが楽しみだ。


「収穫できるようになれば、すべての薬草を売るのか」


「売る薬草と収納空間で保管する薬草に分けて、次回用の栽培に向けた薬草も準備します。今後は植物育成の技だけで充分に育つと思いますから、さらに植物改良も試したいと考えていますわ」


 うれしそうにレネが話してくれる。


「レネもスキルを楽しんでいるようでよかった。俺も鉱物スキルでもっといろいろなモノづくりを試していきたい」


「キュウヤは武器や防具は売らないのかしら。炭素鋼やミスリルの武器は、中位魔物を倒せるほどの能力がありますわ」


 俺が作る武器は品質のよい材料を使っていて、鉱物スキルで思うように形状や硬度を操れる利点がある。とくに元の世界では製造業技術者だったので、金属組織や各種加工の知識があるので、スキルを使うときにイメージがわきやすい。


 俺自身も武器を使っていて良さを知っているが、それと販売するかは別だった。


「俺やレネを守るために武器を作って使う分なら抵抗はないが、戦争の道具となってしまうから売るつもりはない」


 魔物討伐のみに使うのなら喜んで売るが、いったん売ったらどのように使われるかは分からない。甘い考えだと思うが、日本に生まれて育ったので戦争の道具に荷担したくなかった。


「分かりましたわ。キュウヤが好きな品物を作って、売るかどうかもキュウヤの好きで平気です。神殿を作って魔物を倒せる武器もあって、これからキュウヤは何を作りたいのかしら」


「ゴールドとプラチナを入手してジュエリーを作りたいと思っている。宝石単体でも生活費用を稼ぐには充分だが、やはりモノづくりと言えばジュエリーにしたい。あとは移動用に馬車を自作したいと思っている」


 いまのところバルカノ山にはゴールドとプラチナはなかったが、商工ギルドへ行けば買えるだろう。鉱物加工があれば、最近流行っていた3DCADと3Dプリンターを使った複雑形状のジュエリーが作れそうだ。


「ジュエリーは完成が楽しみですわ。馬車は購入できる費用はあると思いますが、自作する理由は何かしら」


「この前馬車に乗ったが、乗り心地の悪さが目立ってしまった。高級な馬車ならもう少し振動は抑えられると思うが、俺の知識があれば乗りやすい馬車が作れる」


 純粋に自己満足のためではあるが、レステアネ神殿に荷物を運ぶときに振動が少なければ、荷物が壊れる心配も減らせる。


「キュウヤの気持ちも分かりますわ」


 レネとの楽しい会話をもっと続けたいが冒険者ギルドへ到着した。混雑する時間はさけたので、掲示板に張られている依頼内容をゆっくりと見ることができた。俺とレネは魔物討伐と薬草採取の依頼を手にとって、イリスさんがいる受付へ移動した。


「キュウヤさん、レネさん、こんにちは。今日は依頼を受けるのでしょうか」


「魔物討伐か薬草採取の依頼を受けたいが、おすすめがあれば教えてほしい」


 俺は手に持っていた依頼の紙をイリスさんへ渡す。


「確認させて頂きます」


 イリスさんは手慣れた手つきで依頼の中身を確認してくれた。イリスさんが依頼の候補として残したのは魔物討伐の2件だったので、土地勘のあるバルカノ山付近に生息する魔物にした。


 依頼の処理が終わると、イリスさんは周囲を見渡したあと小声で聞いてきた。


「キュウヤさんとレネさんは中位魔物が徘徊するランダーで、すごい神殿に住んでいると聞いたのですが本当ですか」


 神殿長を招いたときに護衛で冒険者がいて、とくに秘密にはしなかったので噂が広まったらしい。いまさら隠すつもりはないのですなおに答えた。


「住みやすい場所が見つかったから、仲間内で住んでいる」


「噂は本当だったのですね」


 おどろいた表情でイリスさんが答えた。


「中位魔物の魔石も入手が楽ですから、問題ありませんわ」


「キュウヤさんとレネさんなら大丈夫だと思いますが、ふつうの冒険者はランダーに住みたいとは思いませんよ」


 あきれているのか感心しているのか、分からない表情をイリスはしていた。俺も神力の体がなければ住みたいとは思わなかったので、イリスさんの気持ちは分かる。


「住めばランダーも快適な場所だが、先日の出来事がもう噂になっているのか」


 イリスさんが知っているのなら、冒険者の間にも広まっていそうだ。物好きな冒険者が見に来ようと思っても、実力がなければたどり着けないだろう。


「冒険者ギルドには噂が集まりやすいですよ」


「ほかにも面白い噂はあるかしら」


 レネが興味深そうに聞いた。


「最近ではクリニエル王国の話題が多くて興味深いのは、王国の100名近い騎士団が悲惨な状態で王都に戻ったという噂です。表向きは訓練という話しですが、ランダーにいる中位魔物にやられたというのが真実らしいです」


 俺たちが返り討ちにした騎士団のようだが、さすがに追放した者にやられたとは言えないから、苦しい言い訳で誤魔化しているようだ。


「そこまで強い中位魔物はランダーで見かけたことはないが、騎士団を退ける魔物には気をつけたいと思う」


「いくらキュウヤさんとレネさんが強くても、騎士団100人の戦力には及びませんから、あまり無茶はしないでください」


 俺たちを心配してくれるイリスさんだが、本当は俺たちが騎士団を返り討ちにしたと言えば、おどろくか信じてもらえないだろう。


 イリスさんはさらに声を落として、俺とレネのみに聞こえる音量で話す。


「でも私たち冒険者ギルドでは、ランダーにいると思われる第1王子と第2王女を探して、返り討ちにあったと考えています」


「そのような噂があったのか」


「クリニエル王国に聞かれると大変ですから、他言無用ですよ」


「分かった。気をつける」


 その後は討伐する魔物の特徴を聞いて、冒険者ギルドをあとにした。そのまま南門からルーペンの外へ出て、バルカノ山で該当する魔物を討伐した。俺とレネなら、この周辺の魔物なら脅威でも何でもなかった。


 依頼数の魔物を討伐したので、その日のうちに魔石をもって冒険者ギルドへ行ったらイリスさんにおどろかれた。レステアネ神殿に戻ると、シロガネやミネラルとハーブに出迎えてくれた。


 しばらくしてレネが育てた薬草が収穫できて、新たな薬草や植物を育てた。俺も商工ギルドでゴールドとプラチナを買って、ジュエリーのデザインを考え始めた。


 シロガネも神殿内を走り回り、最初のときが嘘のように元気いっぱいになった。ミネラルとハーブは俺とレネを手伝ってくれて、非常に優秀なスキル生命体だ。レステアネ神殿の場所は荒野だが快適な生活を送り始めた。


 充実した毎日を送っていたある日、門の前に10名くらいの集団が姿を見せた。

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