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宝石だけじゃない、工学知識でモノづくり ~荒野での快適生活を邪魔する奴らは、返り討ちにする~  作者: 色石ひかる
7_勇者を返り討ち

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第40話 勇者を返り討ち

「やはり情報通りに、魔力なしの外れスキルであるお前たちふたりだったか。壁を壊して中へ入ろうとしたが、回りくどい方法はせずに壊せる」


 勇者コウキが俺たちだと分かると、魔力なしの外れスキル部分を強調して、周囲に聞こえる大声で叫ぶ。


「ここは俺たちの拠点だ。いくら勇者でもこの拠点を壊す権利はない」


「俺様に指図するな。この荒野ランダーはクリニエル王国の領地になるから、この建物は陛下から破壊の許可を得ているぞ。そのために騎士団も連れてきている」


 荒野はどの国にも干渉されないはずだが、クリニエル王国は領土拡大を狙っているようだ。当然、荒野を手中に収めれば、きっと次はルシェロ王国を考えるだろう。


『この前捕まえた盗賊団の一味が、集団の中にいますわ』


『わかった。誰が情報を流したとしても、クリニエル王国がこの拠点を壊すのであれば、俺たちで返り討ちにしてやる』


 このまま何もせずに拠点を放棄するつもりはないし、俺たちなら問題なく返り討ちにできる力があると思っている。


『頼もしい言葉ですわ。拠点の防御はミネラルとハーブなら対応できますし、私は騎士団の相手をしますので、勇者はキュウヤに任せます』


『戦えなくさせるだけで充分だから、手加減して相手をしてほしい』


『分かりましたわ』


 レネはミネラルとハーブに指示を出し始めたので、俺はコウキと騎士団に向かってこちらの意思を伝える。


「たとえクリニエル王国が相手でも、この拠点は俺たちのものだ。もし拠点を壊そうとするのなら、それ相応の報いを受けることになる」


「たかが4人で何ができるのか楽しみだぜ。弓部隊、魔法部隊、壁の内側に向かって遠慮せずにうち放て」


 コウキが聖剣を天高くかざすと、それが合図となったのか、騎士団の中で呪文の詠唱が始まって弓も構え始めた。聖剣を俺たちがいる方向へ振りかざすと、いっせいに火球や水球、矢の嵐が拠点へと向かって降り注ぐ。


 だが拠点の敷地内に到着した火球や水球、矢は存在しなかった。ミネラルは空中に浮かぶ壁を出現させて、ハーブは蔓を自在に伸ばしてすべてをはじき返す。


「ミネラルもハーブもその調子でお願いしますわ。私は騎士団を混乱させてこようかしら。シロガネはこの場所で状況を確認してください」


 レネはシロガネを下ろすと、軽々と階段の上から拠点の外へと飛び降りる。


「お前たちは何をしている。ひとつの攻撃も通じてないぞ。飛び降りた女はお前たちに任せる。あれだけの上等な女だから、くれぐれも殺さずに生け捕りにしろ」


 コウキは指示を出したあとに俺へと視線を戻す。


「優秀な魔法使いを雇ったようだが、男のほうは俺様の強さに怖じけついたのか。こちらへ来ないなら、聖剣シャルルーンと俺様の剣聖スキルが拠点を灰にする」


 俺に剣先を向けるが、当然ながらこのまま黙ってはいない。俺も軽々と飛び降りてから、ミスリルで作った片手槍と盾を出現させて構えた。


「この拠点に手を出したことを後悔することだ」


「俺様の剣聖スキルと聖剣シャルルーンの威力を味わえ。火の渦」


 コウキの言葉を受けてか、聖剣の表面に火がまとわりつく。その状態で俺に向かって聖剣を振ってくるが、俺は難なく槍をあわせて聖剣の軌道をずらした。レネやエクレスクとの手合わせに比べると、大人と子供ほどの差を感じた。


 ただ槍には微少なひびが入っているので、聖剣の性能かまとわりついている火は侮れない。戦いながら、すぐに鉱物加工で槍の表面をきれいにする。


「どうして槍が折れない」


 コウキはおどろいた表情をみせている。


「その程度の攻撃だからだ」


 もしレネが同じ聖剣とスキルを使っていれば、ミスリルで使った槍でもきれいに切られているだろう。


「俺様を侮辱するのか。だがこの技をみても同じ言葉がいえるか」


 コウキはうしろに下がって間合いをとる。


「火の陽炎」


 右上から左下へ向かって聖剣を振りかざした。聖剣の軌道に沿って、火の渦が俺のほうへ飛んできた。俺の本能が何か違和感に気づいて、目と体で感じる火の渦にずれが生じている。一瞬だけ迷ったが、体に任せて槍と盾を移動させた。


 目で見ていた火の渦は俺の体を通り抜けて、槍と盾に衝撃が走った。神力にみたされた体の動きに任せて正解だったようだ。


「どのような小細工をしている。俺様の技を防げるとはおかしいぞ」


「先ほどと同じで、その程度の攻撃だからだ」


 あえて挑発する言動をとった。


 周囲を見るとレネが多くの騎士たちを地面に座らせて、武器も壊していた。すぐにコウキを倒すことは可能だが、もう少し技をみたい欲がわいた。これから強い魔物や魔族に出会う可能性はあるので、そのための訓練と考えた。


「俺様は陛下やあの方が認めた存在だぞ。その俺様が負けるはずはない。この技で拠点もろとも吹き飛ばす」


 俺から距離を取ったコウキは聖剣を上空に向けた。


「火の嵐」


 聖剣の上空に竜巻を思わせる大きな火の渦がふたつ発生して、ミネラルたちの前と少し離れた塀に向かって勢いよく飛んでいく。


 ミネラルが無数の壁を出現させて、壁は粉々になったが火の渦を消滅させた。もうひとつの火の渦は塀の上半分を崩壊させて上空に軌道を変えた。


 ミネラルが作ったミスリルの壁と、炭素鋼の塀を壊す威力はすさまじい。


「俺様には頑丈な拠点も意味をなさない。いまさら命乞いをしても無駄だぞ」


 コウキの高笑いが周囲に響き渡って、全員の視線がコウキに集まった。


 これだけの力があれば近隣諸国は恐れるはずだが、俺には鉱物スキルがある。心の中で鉱物加工を唱えて、壊れた塀をすぐに修復した。


 自分の言葉に酔っているようなコウキの顔が、徐々にきびしい顔に変化する。


「いつの間に壁が戻っている。なぜ、俺様の全ての技が効かない。普通なら剣は砕け散って、壁も戻らないはずだ」


「お前たちが無能呼ばわりした、鉱物スキルのおかげだ」


 これ以上は技がないようなので、コウキとの戦いに決着をつける。


 片手槍と盾から両手槍へ瞬時に変更して、すばやくコウキへ向かう。技が通用しない状況にまだ動揺しているのか、コウキは聖剣を構えるのが精一杯のようだ。


 両手槍の穂先で、聖剣が逃げないように押さえながら聖剣をはじき飛ばす。空手になったコウキののど元へ両手槍の穂先を向ける。


「これで終わりだ。騎士団もすでに戦える状態ではないから、このままおとなしく帰れば命までは奪わない」


「俺様が、俺様が負けるはずはない」


「どうする? まだ戦うつもりか」


 俺を睨みつけるコウキを見ながら言葉をまった。


「そうだ、騎士団が倒された影響だ。俺様がこれから本気を出せば勝てるが、陛下の騎士団を助けるのも勇者の仕事だ。俺様が本気を出す前に王国へ戻るのを、お前たちは幸運に思うことだ」


 なんとか言葉を発したコウキは聖剣を拾って、騎士団と一緒に逃げるように荒野へ姿を消した。傷ついた塀や門に武器の修理を終わりにすると、慌ただしい時間が幕を閉じた。俺たちは何事もなかったように、レネの薬草栽培の手伝いを開始した。

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