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宝石だけじゃない、工学知識でモノづくり ~荒野での快適生活を邪魔する奴らは、返り討ちにする~  作者: 色石ひかる
6_拠点への新しい仲間

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第38話 久しぶりの再会

 今日はレネとふたりだけで、ルーペンの街へ来ていた。ミネラルとハーブ、シロガネは拠点の留守番で、俺たちがいなくても問題ないかを確認する意味もあった。


「今日は何をするつもりかしら」


 南門を過ぎてレネが聞いてくる。


「最初は冒険者ギルドへ寄って、たまっている魔石を売りたいのと面白い依頼がないか確認したい。そのあとは食材や調味料に拠点で必要な品物をそろえたい」


 ミネラルとハーブも加わって魔物を倒す数が増えたので、必然的に魔石も増えていく。中位魔物の魔石を大量に売ると驚かれるから、街に用事があるときに少しずつ売るようにしている。


 冒険者ギルドに着いて中に入ったが、今日はイリスさんがいなかったので、ほかの受付の人へ魔石を売った。掲示板で依頼を探したが、よさそうな依頼がなかったので冒険者ギルドをあとにしようとしたら、入口から見覚えのある顔が現れた。


 4名の冒険者で俺たちに気づいたようだ。


「たしかキュウヤとレネだったか。冒険者ギルドには慣れたか」


 彼らは入会時に試合した疾風の牙で、その中の大柄な男が聞いてくる。


「薬草採取とか可能な範囲で楽しんでいる」


「それはなによりだ。俺には有名盗賊団を捕まえたとか、中位魔物を簡単に倒しているとか、面白い噂が飛び込んでくる。まあ、俺たちを簡単に倒したのだから、それくらい強くないと俺たちの立場がない」


 嫌みを言っているわけではなくて、純粋に俺たちをほめてくれているようだ。


「たまたま運がよかっただけだ」


「運も実力のうちだ。ただ最近はきな臭い噂が隣国から聞かれるから、くれぐれも注意してくれ。そうそう俺たちの紹介がまだだったな。すでに知っていると思うが、俺たち4人は疾風の牙として活動している。俺の名前は――」


 4人がそれぞれ自己紹介をしてくれた。年齢もそこまで離れていないから、それぞれ呼び捨てで構わないと言われた。


 大柄な盾持ちの男がリーダーのカンロで、かっぷくのよい斧持ちの男がジェムリだった。レネと試合で対戦した小柄な男はトーロンで、唯一の女性がアリエリサという魔法使いであった。


「隣国に注意しながら依頼や魔物討伐を進めたい。まだ冒険者ギルドには慣れていないから、何かあれば頼りにさせてほしい」


「俺たちならいつでも歓迎だ。逆に都合のよいときにでもまた試合をさせてくれ。キュウヤとレネとの試合は、俺たちを高みへ登らせてくれる」


「俺は実戦経験が不足しているから、こちらからもお願いしたい」


 その後は少し雑談してから、俺とレネは冒険者ギルドをあとにした。


「次は食材や調味料を探すのかしら」


「最低限の衣食住はそろっているが、それでも食事をもっと豊かにしたい。魔道具と魔石も充分にあるから、食材さえ揃えられれば日本食に近い料理ができると思う」


 魔道具の利用で魔石を消費するが、火と水と光の魔道具で使う下位魔物の魔石はもちろん、浄化と氷の魔道具で使う中位魔物の魔石も充分にあった。


「それは楽しみですわ。でもキュウヤが作る料理ならどれもおいしいです」


「そういってもらえると俺もうれしい。今後はミネラルに調理を担当してもらう予定だが、俺も機会があれば料理を作っていく」


 いくつかの店を回って豆はあったが、味噌と醤油と米は見つからなかった。卵も見かけなかったが、これは日持ちの関係らしくてめったに出回らないらしい。


 逆に見慣れた野菜と果物があって、塩と胡椒とオリーブオイル、ほかには大麦や小麦と小麦粉やチーズは入手できたが、値段の感覚は日本と異なっていた。主食のパンと飲み物はワインとエールを買った。


「本当は卵がほしいところだが、これだけ材料がそろえば日本で食べていたのに、少しは近い料理が作れるかも知れない」


 卵は売っているのは確認がとれたので、見かけたときは買い占めよう。


「どのような料理かしら」


「さっそく今日の夕食で作ってみる。だがその前にどこかで昼食をとろう」


 買い物に集中して昼の時間を少し過ぎていた。


 レネと一緒に少し歩いたところにあった、大きめの料理店へ入った。


 テーブルの混み具合は半分程度で、店員に案内されたテーブルへ向かって歩いて椅子に座った。おすすめと言われたメニューを2人分頼んで、少し視線を移動させると思わず声が出そうになった。相手とも視線があったような気がした。


 すぐに視線をずらしてレネに念話を送る。


『見間違いでなければ、俺からみて右奥にアオトとコハルの姿があった』


 少し間があってから、レネは俺のほうに視線を向けながら念話を返してきた。


『本人たちなら、この街へ来た理由があるはずですわ。彼らはふたりだけかしら』


 ふたりは勇者でルシェロ王国への観光とは思えないから、レネも振り向かずに俺へ質問したのだろう。


『すぐに視線を外したから正確な数は分からないが、数名が同じテーブルにいた』


『それなら知らない振りがよさそうですわ。キュウヤはどのように思います?』


『俺もレネの考えに賛成で、クリニエル王国の悪い噂も聞いているから、下手に関わらないほうがよさそうだ。このまま食事を済ませたらすぐに店を出よう』


 アオトとコハルは心優しい人物だが、周囲から命令されてルーペンに来ている可能性が高いから、近づかないのが無難だろう。それにふたりの仲間に俺とレネの顔を知っている人物がいれば、顔を会わすこと自体が危険になる。


『分かりましたわ。声に反応するかも知れませんから、念話がよさそうです』


 俺はなるべく視線を落としながら料理をまって、出された料理は会話もせずに黙々と食べる。食事中は念話でレネと話したが、楽しい会話にはならなかった。


 時間もかけずに料理を食べて、逃げるように店の外へ出た。次はどちらの方向へ移動しようかと考えていると、うしろから少し大きな声をかけられた。


「そちらの女性の方、落とし物をしたかな」


 コハルの声だった。


「私かしら?」


 一瞬だけテンポを遅らせてからレネが答えた。


「あなたで間違いないかな。この小物を落としたはずよ」


 コハルは店の中から見えないように、空の手をレネに向けた。意図的なのか、コハルの声は店の中に聞こえるほど大きかった。きっと何か理由があって、芝居をしているように感じだ。


「ありがとう。助かりましたわ」


 レネもコハルの芝居を感じ取ったのか、いつもよりも通る声で答えた。


「危険、逃げて」


 コハルが空の手をレネに重ねながら、俺とレネにだけ聞こえる小さな声で話す。


「もう、落とさないでほしいかな」


 今度は声を大きくして、そのあとは店の中へ戻っていった。


 俺とレネは何事もなかったように、店から離れるように移動した。そのまま今日は南門を出て拠点へと向かった。南門から街道を進んで道を外れた辺りまできた。


「コハルは俺たちに危険を知らせたと思うが、どのような危険だろう?」


 店を出た直後に、コハルがとった行動が気になった。


「クリニエル王国関連だと思いますわ。ルシェロ王国か、私たちを襲う予定と考えるのが妥当かしら」


「俺たちを襲ってきたら、また返り討ちにしよう。理由もなくルーペンを襲ってきたら、街を守りたいと思うがレネも協力してくれるか」


「もちろんキュウヤと一緒に行動しますわ」


 どのような危険が迫っているのかわからないが、レネが協力してくれるだけで自然と不安がなくなっていく。これ以上は考えても仕方がないので、シロガネたちがまっている拠点へと戻って夕食の準備を始めた。

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