第37話 家の中も少し充実
朝食を済ませたあとに、俺とレネにシロガネ、ミネラルとハーブの全員でルーペンへ向かった。目的は家具や魔道具の購入だが、ミネラルとハーブがルーペンを自由に出入りできるように身分証明書も作る。
昨日の夜に話し合った結果としてミネラルは商工ギルドへ、ハーブは農業ギルドへ入会する。俺とレネの代わりに対応できるようにギルドを決定した。
「今日は最初に農業ギルドへ寄って、その次に商工ギルドへ向かう。商工ギルドなら馬車の貸し出しを知っていると思うから、そちらを最後にしたい」
歩きながら今日の行動を説明した。
「その順番で平気ですわ」
横にいるレネが答えてくれた。ミネラルとハーブは、少し離れた位置で中位魔物を倒していた。ふたりとも少し時間はかかっているが、それぞれが個別で倒せるくらいの実力はあるので、充分に拠点を任せられる。
いつもの道のりを進んでルーペンの南門へ到着した。
ミネラルとハーブには各1万ミネラを払って、滞在証明書を発行してもらった。最後に俺たち全員が犯罪者認識板に手を乗せて、問題なく全員が街へと入れた。
「ここがルーペンですか。いろいろな種族がいて賑やかそうです」
辺りを見渡しながら、ミネラルが感想をもらした。
「活気のある街だから、時間があるときにでも遊びに来て構わない」
俺とレネが拠点にいるときなら、ミネラルとハーブが街へ来ても問題ないし、拠点の門の前に塀を置いておけば誰も入れないだろう。
「生活と仕事に慣れてきましたら、探索させて頂きます」
「買い物もお願いするから、徐々に街中を把握してほしい。今歩いている大きな道が南北に延びていて、中央で交わるもうひとつの大きな道が東西にある。農業ギルドはその道を西に行けば到着する」
そのほかには、アコトカ神殿や冒険者ギルドの位置を歩きながら説明した。ミネラルとハーブは頷きながら、頭の中へ記憶しているようだ。
街の状況や雑談を話しているうちに農業ギルドへ到着したので、レネを先頭に建物の中へ入った。奥にある窓口には、前回説明を受けたイルミレーナさんがいた。俺たちが近づくと、イルミレーナさんもこちらに気づいた。
「レネさん、キュウヤさん、ほかの皆さん、いらっしゃいませ。今日はどのような用事ですかにゃ。農業ギルドへの入会なら、いつでも歓迎しますですにゃ」
相変わらず勧誘に余念がないようだ。
「私ではありませんが、農業ギルドへの入会希望者を連れてきましたわ」
「本当ですか、さすがレネさんですにゃ。それで誰ですかにゃ」
身を乗り出しながら、イルミレーナさんが聞いてくる。
「ハーブが入会しますわ」
レネはハーブをイルミレーナさんの前へ移動させた。
「わたしはハーブと申します。レネ様の植物栽培を補佐するために、農業ギルドへ入会しようと思います。農業は素人なので、詳しく教えて頂けるとうれしいです」
ハーブは深々とお辞儀をした。
「ご丁寧にありがとうですにゃ。私はイルミレーナですにゃ。入会は仕事として農業するかどうかで、入会内容が変わりますにゃ。仕事での農業なら入会金と年会費が必要ですが、購入品が格安になってギルド証も無料で発行されますにゃ」
イルミレーナさんの説明に、ハーブがレネのほうへ視線を向ける。
「レネ様、育てる植物は売る予定があるのでしょうか」
「いまのところ考えていませんわ。基本は身内で使うために育てます」
俺も詳しくは考えていなかったが、レネは趣味で植物を育てたいだけのようだ。きっと商売よりも、スキルを試すために植物の栽培をしたいのだろう。
「売る目的がなければ、入会金と年会費は無料で入会できますにゃ。もちろん寄付金はいつでも歓迎しますにゃ。こちらでの入会は購入品が若干安くなりますが、ギルド証は有料で10万ミネラが必要ですにゃ」
ギルド証は身分証明としても使えるから、無料入会者まで無料で発行すれば、きっと悪さを考える連中がでるはずだ。そのための有料なのだろう。
「それでしたら寄付金は1万ミネラで、ギルド証を有料で購入したいのですが、それで構わないかしら」
「もちろん平気ですにゃ。寄付金もありがとうございますにゃ」
今日の目的である入会の手続きへと移った。農業ギルド証も冒険者ギルド証と似ていたが、得意武器や魔法の代わりに農地の有無が裏側に書かれていた。無事にハーブが入会できて、帰り際にレネはハーブ経由で野菜や香辛料の種を買っていた。
農業ギルドをあとにした俺たちは商工ギルドへ向かって、2階建てのおしゃれな建物の中に入る。クリーネさんの姿があったので、俺が先頭で窓口へ向かった。
「キュウヤさん、レネさん、こんにちは。宝石をお売りに来たのでしょうか」
笑顔を見せながらクリーネさんが挨拶してくれた。
「宝石も少し売りたいと思うが、商工ギルドへの入会希望者を連れてきた」
俺がうしろにいるミネラスへ顔を向けると、ミネラルが俺の横へ移動してきた。
「ミネラルと申します。今後はキュウヤ様の代わりに宝石を売りたいため、商工ギルドへ入会したいと考えています」
「私はクリーネです。キュウヤさんの宝石は高品質ですので、商売をして頂けるのならうれしいかぎりです。ただ入会するには入会金が5万ミネラと、初年度の年会費を支払って頂きます。年会費は店持ちか行商かによって異なります」
「商工ギルドに売るのが基本で、店を持っての販売は考えていないから、行商になるのだろうか」
ミネラルには詳細を説明していないから、代わりに俺が答えた。
「それでしたら年会費は5万ミネラで、合計で10万ミネラになります。ギルド証は無料で発行しますが、再発行は有料になりますので注意してください」
そのほかにランクや次年度以降の年会費について説明を受けた。基本的に売上額が大きいとランクが上がるが、年会費もそれにともなって高くなっていく。ランクアップの利点は信用度があがって、購入品も優遇されるそうだ。
ミネラルの登録を終わりにして、小粒の宝石を20個ほど売った。小粒でも高品質なので、合計で200万ミネラは軽く超えた。そのお金でミネラルとハーブ用に、それぞれ1番容量の少ないアイテムバッグと各種ポーションを購入した。
「ところで街から少し離れた場所で新たに住みだしたので、家具と魔道具を購入したいが、おすすめの店と馬車が借りられる店を教えてもらえないだろうか」
「街の外に住んでいるのですか」
おどろいた口調で聞いてくる。
「田舎の村でも少し離れた場所に住んでいたから、そのほうが気分が落ち着く」
まさか荒野に住んでいるとは言えないので、それらしい言い訳で誤魔化した。
「そうですか。キュウヤさんとレネさんの強さがあれば大丈夫だと思いますが、くれぐれも気をつけてください。それで家具と魔道具のお店、それに馬車を借りられるお店ですが、いくつか候補をお教えします」
クリーネさんから、街の地図を使って店の位置を教えてもらった。
商工ギルドをあとにして、昼食を済ませてから馬車を借りられる店へと向かう。馬がレネに懐いてくれたためか、問題なく3日ほど馬車と馬が借りられた。またシロガネと馬が喧嘩しないか心配だったが杞憂に終わった。
家具は俺が作れない木工品を中心に購入した。魔道具は安価な水と火と光でも10万ミネラからで、高価な浄化と氷は100万ミネラからだったが、魔石と宝石を売ったお金が相当あるので、すべてを購入した。
「私が御者なら馬も落ち着きますから、平気ですわ」
「馬車はレネに任せる。念のためにミネラルとハーブは馬車の前方で、魔物が近寄らないようにしてもらいたい」
「了解しました」
「心得ました」
ミネラルとハーブが頷いてくれた。
南門へ到着して、ミネラルとハーブはギルド証をみせて滞在証明書を返却した。
馬車の御者をレネが担当して、街から荒野へと向かった。街道から外れると馬車の前方をミネラルとハーブが歩きながら、近寄ろうとする魔物を飛び道具で倒す。俺は荷物をみながら後方から魔物が来ないか目を光らせた。
早めに魔物を倒したためか、レネが馬を手なずけてくれたためか、馬が暴れることなく馬車は拠点へ到着した。この馬車が一般的だとすると、自動車になれた俺には振動がはげしくて乗り心地も悪かった。
すでに夕方となっていたが、今の拠点には4人もいるので手分けして家具を設置した。暗くなる前には荷物を移し終えて、今日の予定がすべて完了した。




