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宝石だけじゃない、工学知識でモノづくり ~荒野での快適生活を邪魔する奴らは、返り討ちにする~  作者: 色石ひかる
6_拠点への新しい仲間

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第36話 家を少し拡張

 昼食をとってから、家の拡張を始めた。ミネラルとハーブが増えて、また客が来ても平気なように、広さの拡大と平屋から3階建てに変更する。各階は8畳の4部屋から、2倍となる16畳の2部屋と8畳の4部屋とした。


 家の中の品物は出し終えて、俺たちは家の外に集まった。


「これから家を解体しながら拡張していく。骨組み作りは力仕事になるから、全員で組み立てたい」


 3階建てになるので、強度を保つために炭素鋼の骨組みを使う。本当は建物の共振周波数を把握して、地震の周波数とずらしたかった。だがここでは共振周波数を確認する方法がなかったので断念した。


「どのような家になるのか楽しみですわ」


 レネに喜んでもらえるような家を建てたい。


「了解しました。キュウヤ様が作る家が楽しみです」


「心得ました。家作りの作業はお任せ下さい」


 ミネラルもハーブも、俺とレネの言葉に素直に従ってくれて助かっている。見た目以上に力もあるし物覚えもよさそうだから、今後の手伝いも楽しみだ。


「最初は土台作りから始める。支柱を埋める場所を指示するから、シャベルを使って土を掘ってほしい」


 収納空間から黄銅の針金とシャベルを4本取り出した。


 黄銅の針金で土台の範囲を決めて、等間隔に支柱の位置に印をつけていく。掘る作業はレネたちに任せて、俺は鉱物補充のために裏にある丘へ向かった。丘に興味があるのかシロガネが俺のあとに続いた。


 シロガネは俺かレネの言葉を理解して、動き回る範囲も俺とレネの目が届く範囲でいつも遊んでいる。利口で優秀だが好奇心旺盛な面もあるので、それでフォリンタ森で迷子になったのかも知れない。


「丘にある鉱物を収納空間に移すから、俺よりもうしろで遊んでほしい」


「ウォーン」


 シロガネに向かって話すと、軽く鳴いて理解してくれたみたいで、実際に俺の後ろ側で走り回っている。シロガネの姿を確認してから視線を丘へ戻した。


 支柱で使う炭素鋼の元となる鉄鉱石と黒鉛を大量に収納する。ほかには壁や窓に使う長石と石英も収納空間へ保管した。充分な量が確保できたから、鉱物加工と鉱物合成を使って支柱と壁を作って、そのまま収納空間に入れておく。


 想定よりも多めに作ってシロガネと一緒に拠点へと戻った。


「支柱を立てる場所は、すべて掘り終わりましたわ」


「ありがとう。必要な鉱物も確保できた。支柱を作って取り出すから、支柱をおさえながら土を埋めてほしい」


 3人がうなずいたのを確認してから、支柱を作って取り出す。支柱は抜けにくいように、土に埋める側の先端には平板がついている。


 俺とミネラルが支柱を押さえて、レネとハーブが土を埋める。埋めた部分の土は軟らかいから、棒の先に重しがある道具を作って重さで土を固めていく。


「すべての支柱が出来ましたわ。でも土の固定だけでは不安定にならないかしら」


「レネの言うとおりにこのままだと危ないから、土台をもう少し補強する」


「どのような形になるのか楽しみですわ」


 すべての支柱を立てたあとに、鉱物スキルならではの裏技を使った。このままでは支柱は倒れやすいので、家の敷地に相当する大きさのミスリル板を作って、支柱の部分だけ支柱と同じ四角い穴が開いている。


 2枚のミスリル板で隙間を開けて2段にして、支柱の外周にもミスリル板を途中まで覆い被せる形状にした。収納空間で作ったあとに各支柱を中心に分割して、収納空間から取り出してから、分割したミスリル板を並べた。


「あとは分割した部分を、技を使って結合させれば完成だ」


 実際に技を使うと、レネをふくめてみんなが驚いていた。


 最後に支柱の炭素鋼とミスリル板を鉱物合成で接合させた。本来ならボルトや溶接で各部品を結合させるが、鉱物合成ならきれいに繋がって強度も高い。


「すばらしい作りで完成が待ち遠しいですわ」


「俺も完成した家を早く見たいから、次の作業に移りたいが大丈夫だろうか」


「問題ありません。次の指示をお願いします」


「わたしも平気ですので、お任せ下さい」


 ミネラルとハーブも疲れた様子がないので、次の作業へ取りかかった。実際の家は建てたことはないが、強度や安全面から1階から順次作っていく。支柱以外の骨組みを作って補強材も忘れずに配置してから、長石で壁を作る。


 すでに材料はそろっていて、全員が力持ちの上に接合部分の心配もないから、ものすごい速さで完成していく。途中でシロガネが室内を走り回るので、それを注意するのが大変だったくらいだ。


 外に出しておいた品物を、家の中へ入れ終わるころには日が傾いていた。


「家の拡張は完成だ。不足分の家具や魔道具などは、街へ行って買ってこよう」


「それがよろしいですわ。大きな家具は馬車を借りれば平気かしら」


「大丈夫だが、俺は御者の経験がないから、馬車を動かせない」


「私は動物と意思疎通ができますから、問題ありませんわ」


 俺の知らないレネの特技を知った。そういえばシロガネに初めて会ったときも、レネが近づいても平気だったのは、シロガネと意思疎通ができたのかも知れない。


「馬車はレネに任せる」


 明日の予定が決まったときに、ミネラルとハーブが入口に向かって歩いた。


「誰か来たようです」


 俺とレネの前に出るようにして、ミネラルが教えてくれた。拠点の中央から家のほうに軽い足取りで歩いてくるエクレスクの姿があった。


「ミネラルもハーブも大丈夫だ。知り合いで神獣ドラゴンのエクレスクだ」


 俺が説明している間に、エクレスクがあっという間に俺たちの前へ移動した。


「キュウヤとレネにシロガネも元気そうだが、特殊なヒューマン族を雇ったのか」


「エクレスクも元気そうでよかった。ふたりは俺とレネの各スキルから生まれた存在だ。執事がミネラルで、メイドがハーブになる。今後は拠点の管理などを任せるつもりだから、仲よくしてもらえるとうれしい」


 エクレスクに説明してから、双方の挨拶を簡単に済ませた。エクレスクからはスキル生命体について驚かれるとともに、ゴーレム以上に特殊だから周囲に言わないように釘を刺された。俺とレネも同じ考えなので頷いて応えた。


「ところでエクレスクは何か用事でもあるのかしら」


「シロガネの様子を見に来たのと、キュウヤに鉱物をもってきた。住処以外に山の麓からも鉱物を採ってきたから、好きなだけ使ってくれ」


 エクレスクが革のバッグから鉱物を取り出した。鉱物の量からしてアイテムバッグと思うが、俺がもっているものよりも何倍も入りそうだ。エクレスクが俺に鉱物を渡してくれたので、鉱物の種類を確認した。


「ミスリルが大量にあってうれしい。宝石では鋼玉が多いから、ルビーやサファイアをたくさん作れそうだ。少しだが新しい鉱物に金緑石と石灰岩があって楽しみだ。時間があるのなら、今から宝石を作るから、好きなのをもっていってほしい」


 金緑石はクリソベリルとも呼ばれて、あてる光の種類で色が変わるアレキサンドライトが有名だ。そのほかには猫の目に見えるキャッツアイがあり、黄緑色がきれいな名前通りのクリソベリルも宝石として存在する。


 石灰岩は大理石としても使える場合があって、コンクリートの材料であるセメントにもなるようだが、詳しい作り方は知らない。


 バルカノ山からいろいろな鉱物が採れたので、元の世界と鉱物の分布が異なるかも知れない。今までの常識にとらわれずに、採掘するのも面白そうだ。


「時間はあるから、ぜひ宝石を選ばせてくれ。宝石ができるまでの間、ふたりと手合わせをしたいが問題ないか」


「構いませんわ」


 俺の代わりにレネが答えてくれた。


『キュウヤが宝石を作る間に、エクレスクは私が対応しますわ。折を見て、私が元女神であったと説明します』


『そうしてもらえると助かる。俺は早めに宝石を作る』


 レネが手合わせの審判をしている間に、鉱物加工で宝石を作り始めた。ルビーからサファイア、金緑石からはクリソベリルとキャッツアイがみつかって、大きさやカットに色合いもふくめて50個以上も完成させた。


 手合わせも終わっていて、表情からエクレスクが余裕で勝ったようだ。宝石をエクレスクにみせると、うれしそうに選んで最終的に5個の宝石を懐へしまった。


 満足して帰って行くエクレスクを見送っていると、レネから念話があった。


『エクレスクに正体を明かしましたわ。ある程度は予想していたのかしら、そこまでの驚きはなかったです。キュウヤは普通の人間だったと話しておきました』


『ありがとう。これで拠点を神殿と宣言しても、エクレスクは驚かないだろう』


 エクレスクが帰ったあとは、完成した家を眺めてから家の中へ入った。夕食を食べながら、明日は全員で街へ行くことにした。

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