閑話5 クリニエル王国の出来事
一方その頃、クリニエル王国では、7名の勇者が王宮の一室で国王トルンチュに会っていた。それぞれの勇者は、自信に満ちた表情から不安そうな態度までさまざまであった。勇者の中にはアオトとコハルも末端に立っていた。
「よく来てくれた。最近は隣国の状況が怪しくて、ランダーにも無法者たちが増えたと聞いている。そこでそなたたち勇者にも活躍してもらいたい」
国王は勇者に向かって話すと、すべての勇者が頷いた。
「まず勇者コウキだが、近々ランダーにいる無法者たちを退治してもらいたい。ランダーの安全はこの国の安定にも繋がるから、勇者コウキならうってつけだ。途中の魔物退治や勇者コウキの世話をするために、騎士団も一緒に派遣する」
国王は勇者たちの中心にいる勇者コウキへ視線を送った。
「俺様に掛かれば相手が誰だろうと問題ない。陛下の期待に応えてみせるから、結果を楽しみに待っていてくれ。久しぶりの戦いで腕がなるぜ」
勝って当たり前と思える言葉で、話し方にも自信がにじみ出ていた。勇者コウキの言葉に国王も満足しているようだ。
「期待している。もし犯罪者たちや魔力なしの外れスキルである者たちがいれば、問答無用で処分しろ」
勇者コウキに話し終わったようで、国王は末端側へと顔を向けた。
「次に勇者アオトと勇者コハルには、ルシェロ王国のルーペンへ向かってもらう。最近は怪しい噂があるから、勇者とは悟られずに情報を集めてこい。護衛として少数の騎士たちをつけるが、お前たちふたりなら荒野の横断には問題ないだろう」
国王の言葉にアオトとコハルが頷いた。
続いて国王は残り4名の勇者へ命令を出した。内容は王都防衛と有事の際にいつでも対応できるように、引き続き訓練を積むことだった。国王によるすべての勇者たちへの命令が終わると、部屋の中には国王と勇者コウキのみが残った。
「陛下、魔力なしの外れスキルであるあのふたりが、荒野に住んでいるというのは本当なのか。あの能力で中位魔物がいる荒野を移動できるとは思えないぜ」
「ランダーへ派遣した騎士団から、似たような人物像と実際に拠点らしき場所を確認したと連絡が来た。我も生きているとは思えないが、念のために確認してくれ」
以前、ランダーへ向かわせた騎士団から連絡があったようだ。
「誰かの協力があったかも知れないが、俺様に掛かれば問題ない」
「勇者コウキなら大丈夫だと確信している。その拠点を占領したのちに、第1王子と第2王女だったふたりが潜んでいないか調べてくれ。我の関心はそのふたりで、もし隠れていたら生死を問わずに連れて来い」
どうやら国王は、第1王子の第2王女の行方を血眼になって捜しているようだ。現状では犯罪者として国内外へ通達しているが、未だに捕まっていなかった。
国王から命令を受けたアオトとコハルは、ほかの勇者たちと一緒に部屋から出て移動した。向かった先は各自の部屋で、それぞれが自分の部屋に入ったが、コハルはアオトの部屋へ入った。
「先ほどの話しだと、キュウヤとレネは荒野で生きているみたいじゃん」
部屋の扉が閉まっているのを確認してから、アオトが話し出した。
「わたしもそのように受け取れたかな」
「もし本当なら、おれたちがルーペンへ向かう途中で会える可能性がある。苦労しているようなら助けてあげたい」
「わたしも同じ気持ちだけれど、護衛という名の監視役である騎士たちが着いてくるよ。キュウヤとレネに声をかけるのはむずかしいかな」
アオトもコハルもキュウヤとレネを助けようと思っているが、立場的にむずかしいと考えているようだ。
「かりにキュウヤかレネに会えたら、わたしが声をかけるよ。アオトが動くと騎士たちの視線も集まるから、まだわたしのほうが誤魔化せるかな」
「わかった。ふたりを見かけたらコハルに任せる。その間はおれが、騎士たちから注目を集めておくじゃん」
簡単ながら方向性が決まったところで、コハルはアオトの部屋をあとにした。




