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「ていうか、そもそも俺のこと知ってたんだ」



ポキポキと小気味よい音を立て、スナック菓子を一瞬で食べ終えた猪瀬春太は、綾斗の質問に大きく頷いた。



「そりゃあね。自分以外にゲイがいたら、気になるに決まってんじゃん」



何の躊躇いもなく自身がゲイであることを口にするから、こっちがギョッとする。



慌てて周囲を見渡し、誰もいないことを確認していると、あははっと大きな笑い声が響いた。


昨日と同じ場所に腰掛けた猪瀬春太が、お腹を抱えて笑っている。



「俺がゲイだってばれないように気にしてくれてるの?」



自分が咄嗟に取った行動を笑われて、綾斗はむっと顔を顰める。



「違うから。もし誰かがこっそり聞いてて、あんたをゲイだって言いふらしたとしたら、誰が犯人かわかんないでしょ。

そしたら真っ先に疑われるの俺じゃん。俺は自分のために警戒してんの」


「あはは、口はひねくれてるのに、行動がいいやつ過ぎて、疑う余地ないでしょ。もしそうなったとしても、木佐くんだけは疑うことないから安心していいよ」


「・・・あっそ」



信頼されて嬉しい気持ちに反して、言葉は素っ気なくなる。


いじめっ子に対してはヘラヘラするしかないのに、猪瀬春太にはひねくれとまで言われる不愛想な自分が不思議だ。


猪瀬春太との初めてのコミュニケーションが、怒りをぶつけるところから始まったせいだろうか。


今更愛想よく対応するのは、なんだか恥ずかしい。



「で、なんでここにいるのかって質問には答えてないけど?」


「なんでって、ここが気に入ったからだよ。

静かで日当たりもよくていい場所だし、木佐くんのことも気に入ったしね」



にっこり笑いかけてきた猪瀬春太へ、遠慮なく胡乱な目を向ける。



「はぁ?」



もしかして、まだ篭絡しようとか考えてんのか、こいつ?



「あっはは!めっちゃ嫌そうな顔すんじゃん!俺、そんな目で見られたの初めて!

この顔に向かって、よくそんな目向けられるね」


「どんだけ自分の顔に自信あるんだよ。てか、自信あってもいいけど、少しは謙遜しなよ」


「ちゃんと人前では謙遜してるもん。木佐くんには、もう一番の秘密がばれてるし、猫被る必要ないかなってね」



もんって言ったぞ、こいつ。


にこにこ楽しそうに笑って、かなり子供っぽいな。



初対面の印象とはかけ離れているが、その言葉を信じるなら、こちらの方が素なのだろう。


言葉の通り、昨日今日の短い付き合いなので、これが失恋のショックを隠すための空元気なのかどうかは、よくわからない。






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