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「──あっ!!」
「わっ、何!?」
何か思い出したのか、笑みを引っ込めて突然大声を出す猪瀬春太に、綾斗はビクッと肩を震わせた。
「気に入ったっていうのは、恋愛的な意味じゃないから安心してね!俺、面食いだから!」
怪訝な目を通り越して、もはや白目である。
なんだその二重の意味で失礼な宣言は。
綾斗の自意識過剰に釘を刺すようなセリフもムカつくし、それにつけ足した一言なんて、もう論外だ。
思わず、すぐ隣にある肩をグーで殴ってしまった。
「いたっ!なに!?」
「殴られてしかるべき人間を殴っただけだけど?人の見た目ディスっといて、よく被害者面できるね?」
「え!ディスってないディスってない!木佐くんの見た目なんて判断しようがないじゃん。
マスクと前髪でまったく見えないんだから!
俺はただ、完全に見た目だけで人を好きになるから、判断できない木佐くんは恋愛対象にならないって言いたかっただけ!
木佐くんはゲイじゃないから、先に言っといた方が安心かなと思ったの!」
慌てて補足する姿を見れば、本当に悪気はないことはわかった。
見た目で人を好きになると堂々と宣言するのもどうかと思うけれど、だから西脇なのかと、ある意味納得だ。
「そもそも不安に思ってないから、わざわざ言わなくていいんだよ」
「え、俺ゲイなのに、不安じゃないの?」
だから、不用意にゲイとか言わないでほしい。
綾斗は念のために、もう一度周囲を確認してから、ポカンと不思議そうな猪瀬春太に顔を向けた。




