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バラモンたち――1

 四姓の最高位にあるバラモンたちの、仏陀に対する興味の度合いはさまざまであった。

 ポッカラサーディという、バラモンの中でも特に尊敬され、パセーナディ王から領地を与えられている高名な老バラモンは、弟子に人相を見に行かせた。それは世尊がコーサラ国のイッチャーナンカラというバラモン村の林に滞在していたときのことである。

 ポッカラサーディ・バラモンはウツカツタ村に住んでいたのだが、仏陀が自分の村近くに来ていると噂を聞き、弟子のアンバッタを呼んでいった。

「アンバッタよ、ゴータマがイッチャーナンカラの林に留まっているとのことであるが、ゴータマの名声は(おんみ)も聞いているように神々の名よりも高く知られている。よって(おんみ)は今からゴータマの(ところ)へ行って、彼がはたしてそのような人物であるか見て来てもらいたい」と。

 そして「承知いたしました」と答えたアンバッタは、馬車を駆って林へ向い、そこで世尊の居場所を人に尋ねて林の中にある庵へとやってきた。

 (へや)へ招き入れられたアンバッタは、立ったり歩いたりしながら坐っている世尊にくどくどと挨拶をした。それがあまりにも礼を欠き見苦しかったので、世尊は云った。

「アンバッタよ、今坐っている私に向って、そなたが立ちながらまた歩きながら挨拶をするのは、年老いたバラモンにその弟子がする挨拶の作法であると思うだろうか」

「ゴータマよ、そうではない。歩いているバラモンには歩きながら、立っているバラモンには立ちながら、坐っているバラモンには坐って挨拶するのが筋である。しかし頭を剃った卑しい出家には、今私のした挨拶で十分である」

 沙門を軽蔑していた彼は、ごう然と言い放った。

「しかしアンバッタよ、そなたがここへ来たのは何かの使いであろう。それを考えてみるが善い。そなたはおのれの教養を誇っているようであるが、悪い教養を受けたのでなければ、どうしてこのような無作法ができるのであろうか」

 若いアンバッタはこの言葉を聞いて腹を立て、世尊を罵った。

「ゴータマよ、シャーキャ族はまことに酷くて腹立ち易く粗暴であり、バラモンを尊び供養することを知らない。それは正しいことではない。彼らはいかにも卑しい。私はかつて師の用事でカピラヴァストウへ出かけたことがあるが、シャーキャ族は公会堂に集まって、指で互いにつつき合い、戯れ合って一人も私に座を与える者がなかった。思うに私のことを(あざけ)っていたのだ」

 自分の無作法を咎められたアンバッタは、世尊の出自であるシャーキャ族こそ礼儀を知らないという。

「アンバッタよ、小さな(うずら)がおのれの巣の中だけでは自分の好きなようにさえずることが出来るように、シャーキャ族も自分の城の中で自由に楽しんでいたまでである。このように小さなことで腹立てるものではない」

「だがゴータマよ、バラモンとクシャトリヤとヴァイシャとシュードラとの四つの階級(かばね)は厳然とした存在であり、またこの四つの階級の内、あとの三つの階級はバラモンに仕えるべきものである。シャーキャ族が卑しい階級でありながら、バラモンを尊び敬い供養しないのは善いことではない」

 いかに年若くとも、アンバッタはかたくなであった。そこで世尊はカンハーヤナの物語を比喩として話したのち、バラモンとクシャトリヤの優劣を説き、系図(すじめ)種姓(かばね)を誇る愚かさを教え、智慧と戒行(おこない)とを具えるものが、人間や神々の中において最も勝れたものであると語った。

 このように説得されたアンバッタは師のもとへ帰って、シャーキャ族のゴータマの身体(からだ)に仏の三十二相が具わっていることを告げ、交わされた会話をこと細かに語り出すと、その話が終らないうちにポッカラサーディは大いに腹を立てて云った。

「汝はなんという賢者であろう。何という智者であろう。汝は堕獄の罪を犯してきた。汝が尊い人のことをあれこれ云うものだから、私までがこきおろされてしまった訳だ」

 と、この老バラモンはアンバッタを足蹴にし、自ら世尊に会いに行こうとしたが、時があまりに遅いからと周囲に止められ、それではと、家に帰って供養の食事を用意させ、あくる日暗いうちに炬火(たいまつ)を持たせて世尊のもとへ赴いた。そこでアンバッタの罪を謝り、教えを受けて帰依したのだった。


 

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