ギルド受付は面倒に関わりたくない
「おー。やっと来たか、ノエル嬢」
カウンターに向かうと、読書中だったエリオットが気だるそうに顔を上げた。ノエルはエリオットの手元にある歴史書らしき書物をちらりと見下ろす。
この国で、貴族でもなく、王宮関連の施設以外で働く者の中で、文字の読み書きを難なくこなす人間はそれほど多くない。しかも、内容はかなり専門的なもののようだ。
そこそこの付き合いではあるものの、お互いに干渉しない性格を貫いていることもあり、エリオットの素性はいろいろと謎が多い。
「こんにちは、エリオットさん。今日は、先日の依頼の報告と、報酬の受け取りに参りました」
ノエルはそう言いながら、手持ちの革袋に入れた討伐の証明品をカウンターの上に置く。魔物を倒すと、魔石と呼ばれるエネルギーの核のようなものを落とすため、討伐依頼を受注する冒険者は、ギルドへの報告時にそれを討伐証明として提出するのが慣例であった。
「はいよ。この間の依頼は……っと」
エリオットは帳簿をぱらぱらと捲り、ノエルが掲出した魔石を検分しながら、一瞬訝し気に目を細める。
「あんた、えらく張り切ったんだね。森の入り口のグリズリー退治で充分だったんだが、奥地の群れまで片付けてくれたのかい?」
「あぁ、それは……。森の入り口でちょっとした邪魔が入りまして……」
「邪魔? あんたの獲物を横取りするなんて、酔狂な奴もいたもんだね。新顔か?」
エリオットに問われ、ノエルは首を傾げた。先日の依頼で遭遇した謎の青年。彼はやはり、このギルドの関係者ではないらしい。あのときは片鱗を垣間見たにすぎないが、おそらく相当の手練れだろう。
しかし、エリオットも把握していない冒険者で、あそこまでの腕を持つ者など、この国に存在していただろうか?
思わず考え込むように言葉を切ったノエルの表情を、エリオットが怪訝そうにのぞき込んだ。




