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貴族令嬢は報酬を受け取りたい

その日、ノエルは依頼の報告をするためにギルドに向かっていた。


城下町は、来週に控えた王国の記念祭の準備で賑やかだ。この記念祭は、季節ごとに催され、季節によって呼び名や趣向が変わる。


今回は「花まつり」と呼ばれ、大通りの店先には色鮮やかな花飾りがなされている。祭の当日には魔法の演出で一日中舞い続ける美しい花びらの中、歌や踊りを楽しむ華やかな祭りだ。


ノエルは、貴族の催すギラギラと悪趣味なダンスパーティーなどよりも、この花まつりの方がよほど好きだった。町の人々が普段着のまま笑顔で歌やダンスを楽しみ、広場には食べ物の屋台から美味しそうな香りが漂う。


王国主催の記念行事だが、城下町の人間にとっては王族の生誕やら王家の繁栄などはそれほど興味深いものではない。日々の疲れや不安をひとときの間放り出し、酒と音楽と、甘い花の香に酔えればそれでいいのだ。


その感覚に、ノエルはおおむね賛成だったが、彼女にはもうひとつこの祭の期間に味わえる「醍醐味」があった。


それはもちろん、彼女の「推し」である、王太子の所業である。


「昨年は、巨大なテディベアを身代わりにして、城から抜け出したと聞いたわ。今年はどんな馬鹿げた噂を聞くことができるかしら」


鮮やかに彩られた町の風景を眺めながら、ノエルはふっと微笑んだ。


退屈で、どこまでも無彩色だった毎日に、カラフルな色彩を取り戻してくれた「変わり者王太子」の噂話。今日の「報酬」はどれほどのものだろうかと期待に胸を膨らませ、ノエルは軽やかな足取りでギルドの扉をくぐった。

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