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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第九章・成人期ヘンリル国編

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「最初から勝負は見えていた。最初からな」

 俺は国の入り口でそれと遭遇した。

 周囲の人間の姿を模倣し、途方に暮れたように解除を繰り返している。

 忘却魔法にかかった国。

 いくら模倣しようとも、相手は不死の解除の暗号も忘れてしまっているのだろう。


 しかし、国王は別だ。

 忘却魔法の根源である国王。

 彼だけは全ての記憶を把握し、自らの不死の解除暗号も覚えていることだろう。


 つまり、この人を模倣する黒い物体は、ここで俺が斬り倒す必要があった。


「来いよ」


 そう言って俺は剣を抜く。


「遊んでやる」


 黒い物体はしばらく当惑したようだったが、そのうち俺の姿を模倣した。

 その手には剣が輝いている。


「無機物まで模倣するか」


 舌を巻く。

 相手は剣を水平に構え、じっと腰を落とした。


(来る!)


 そう思った。

 俺ならそう決断する。

 相手が行動を起こす前に一撃必殺。


 神速の移動力を持つ俺なりの魔法使い対策の解だ。

 それが今、俺に牙を剥こうとしている。


 反応することは不可。

 その速度は人間の反射神経を遥かに超える。


 ならば、どうするか。


 俺は、密かに魔力を集め始めた。


 そして、身にまとう。

 その呪文を。


 敵が視界から消えた。

 と思った瞬間、俺の背後に気配が移る。


 斬られはしなかった。

 俺がまとっていた呪文、ガイエルは魔法を殺す。


 どう見ても魔法生命体である相手には、超えることができない壁だ。

 相手が振り返る前に振り返って叩き切る。


「最初から勝負は見えていた。最初からな」


 淡々と言い、俺は真っ二つになった相手を見下ろした。



つづく

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