「最初から勝負は見えていた。最初からな」
俺は国の入り口でそれと遭遇した。
周囲の人間の姿を模倣し、途方に暮れたように解除を繰り返している。
忘却魔法にかかった国。
いくら模倣しようとも、相手は不死の解除の暗号も忘れてしまっているのだろう。
しかし、国王は別だ。
忘却魔法の根源である国王。
彼だけは全ての記憶を把握し、自らの不死の解除暗号も覚えていることだろう。
つまり、この人を模倣する黒い物体は、ここで俺が斬り倒す必要があった。
「来いよ」
そう言って俺は剣を抜く。
「遊んでやる」
黒い物体はしばらく当惑したようだったが、そのうち俺の姿を模倣した。
その手には剣が輝いている。
「無機物まで模倣するか」
舌を巻く。
相手は剣を水平に構え、じっと腰を落とした。
(来る!)
そう思った。
俺ならそう決断する。
相手が行動を起こす前に一撃必殺。
神速の移動力を持つ俺なりの魔法使い対策の解だ。
それが今、俺に牙を剥こうとしている。
反応することは不可。
その速度は人間の反射神経を遥かに超える。
ならば、どうするか。
俺は、密かに魔力を集め始めた。
そして、身にまとう。
その呪文を。
敵が視界から消えた。
と思った瞬間、俺の背後に気配が移る。
斬られはしなかった。
俺がまとっていた呪文、ガイエルは魔法を殺す。
どう見ても魔法生命体である相手には、超えることができない壁だ。
相手が振り返る前に振り返って叩き切る。
「最初から勝負は見えていた。最初からな」
淡々と言い、俺は真っ二つになった相手を見下ろした。
つづく




