「さて、私の出番か」
リンドは意識朦朧としていた。
声をかけても反応は曖昧だ。
魔力の弱いリンドだ。
この国の忘却魔法の影響をダイレクトに受けてしまったのだろう。
抱えて、室内に戻る。
「胸、当たってませんか」
ミリィが揶揄うように言う。
「そなたもいい歳。もうそんなことは気にならんだろう」
「陛下も随分と大人になりました」
淡々とした口調で言うミリィ。
そちらこそ、と言いたくなる。
戻ると、若者が待っていた。
若者が手を翳すと、リンドに光が降り注ぐ。
「私は……」
リンドはそう言って躊躇うように自分の両手を見る。
「忘却魔法にかかっておったのだ。私の失策だ。すまぬ」
素直に謝る。
噛みついてくるかと思ったリンドだが、納得したように頷いた。
「それで、病気の医療魔術に関してはわかったの?」
「それは私の代には既に解決していた問題だ。国の文献を読み漁れば、あるいは……」
ずんずんと歩き始めるリンド。
「ちなみに文献は古代文字で書かれておる。そなたでは読解も難しいだろうな」
と若者。
「それに、また忘却魔法にかかるぞー」
と、俺。
「文献なら私が調べよう。一ヶ月ほど待ってほしい」
淡々と言う若者。
「長寿の魔法も?」
ミリィが目を輝かせる。
「あるいは、前時代の技術として残っているかもしれん。何せ、時が動かぬ国ゆえな」
俺は息を呑む。
不老不死と、忘却。
その二つを兼ね備えた、人の入りのない国。
どんな宝が眠っているかわからぬところだ。
「……その前に、来客のようだ」
若者の顔が険しくなる。
それで俺は全てを察した。
「さて、私の出番か」
淡々と言って外へ向かってる歩き出す。
「ミリィは留守番しててくれ。あと王よ、私に忘却魔法への耐性をつけてほしい」
「耐性は難しいが、そなたを避けて魔法を展開することは努力してみよう」
「頼んだ」
ミリィは息を呑む。
「というと、あれですか?」
俺は頷く。
「不死者殺しだ」
つづく




