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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第九章・成人期ヘンリル国編

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「さて、私の出番か」

 リンドは意識朦朧としていた。

 声をかけても反応は曖昧だ。

 魔力の弱いリンドだ。

 この国の忘却魔法の影響をダイレクトに受けてしまったのだろう。


 抱えて、室内に戻る。


「胸、当たってませんか」


 ミリィが揶揄うように言う。


「そなたもいい歳。もうそんなことは気にならんだろう」


「陛下も随分と大人になりました」


 淡々とした口調で言うミリィ。

 そちらこそ、と言いたくなる。

 戻ると、若者が待っていた。

 若者が手を翳すと、リンドに光が降り注ぐ。


「私は……」


 リンドはそう言って躊躇うように自分の両手を見る。


「忘却魔法にかかっておったのだ。私の失策だ。すまぬ」


 素直に謝る。

 噛みついてくるかと思ったリンドだが、納得したように頷いた。


「それで、病気の医療魔術に関してはわかったの?」


「それは私の代には既に解決していた問題だ。国の文献を読み漁れば、あるいは……」


 ずんずんと歩き始めるリンド。


「ちなみに文献は古代文字で書かれておる。そなたでは読解も難しいだろうな」


 と若者。


「それに、また忘却魔法にかかるぞー」


 と、俺。


「文献なら私が調べよう。一ヶ月ほど待ってほしい」


 淡々と言う若者。


「長寿の魔法も?」


 ミリィが目を輝かせる。


「あるいは、前時代の技術として残っているかもしれん。何せ、時が動かぬ国ゆえな」


 俺は息を呑む。

 不老不死と、忘却。

 その二つを兼ね備えた、人の入りのない国。


 どんな宝が眠っているかわからぬところだ。


「……その前に、来客のようだ」


 若者の顔が険しくなる。

 それで俺は全てを察した。


「さて、私の出番か」


 淡々と言って外へ向かってる歩き出す。


「ミリィは留守番しててくれ。あと王よ、私に忘却魔法への耐性をつけてほしい」


「耐性は難しいが、そなたを避けて魔法を展開することは努力してみよう」


「頼んだ」


 ミリィは息を呑む。


「というと、あれですか?」


 俺は頷く。


「不死者殺しだ」



つづく

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