「恋をした者から消えていくのだよ」
「不死者殺しのロジックは簡単だ。相手の能力をコピーし、不死者の不死暗号を解く。そうやって不死者殺しをしているんだ」
アイリンから知らされた知識だった。
「ふむ……」
若者が顎に手を当てて考え込む。
「それに、俺達に敵意はない。ただ、長寿の秘密と病気を癒す術を探しているんだ」
若者は、しばし考え込む。
「そなた、名は」
「クラフト。ハイラルの国王だ」
「さっきガイエルと唱えていたな。ハイラル、ガイエル……なるほどなるほど」
一人で腑に落ちたような表情になる若者。
「長寿の法、に関してはわからんな。私が成人する頃には不老の法が確立していた」
俺は内心で落胆する。
いつの間にか、隣にミリィが並んでいた。
「この国はどうなってるんだ? 何故忘却魔法が国を覆っている?」
「忘却魔法を使っているのは私だ」
「何故?」
「自殺者が社会問題となったからだ」
俺は唖然とする。
「不老なのに自殺? なんでだ? 知り合いも死なないんだろ?」
「永遠の時は人にはあまりにも重い……耐えきれぬ者が出てきたのだよ。それに人と人とは摩擦する。すれ違いなどの積み重なりが人の絶望となった」
沈黙が漂う。
「私は国王だった。このままでは危険と判断し、忘却の魔法を国中にかけた。その負担で、魔法使いとしては弱化したがな」
「誰も、永遠に、ここで生き続けるのか……?」
「例外は、ある。冗談みたいな話だがな」
「と言うと?」
「恋をした者から消えていくのだよ」
俺は驚いた。
恋?
そんな簡単なことが忘却の魔法を解くのか?
「冗談だと思っているような顔をしているな」
苦笑まじりにいう若者。
「いえ、私はわかりますれば」
と、ミリィ。
「私もクラフト様と出会わなければ部屋に引き篭もったままだったでしょう。恋は人を変えるのです」
「尤も。恋をすることで人は人を尊重することを学ぶ。印象を深い恋は、魔法をも越えるのだ。スカーレットもその中の一人だった」
「スカーレット様も……」
唖然としたミリィ。
若者は苦笑して、一旦話を切った。
「外で武器を抱えているものはそなたらの仲間だろう。忘却の呪文にかかりかけておる」
「あ」
俺は間抜けな声をあげた。
そうだ、忘却の魔法を封じるフィールドはミリィを中心に放たれている。
抜け出れば危険なのだ。
「失念していたなあ」
「陛下は本当に平時ではポンコツですね」
呆れたように言うミリィ。
「そういうな、そなたも気づかなかっただろう」
淡々と言い、俺は踵を変える。
そしてリンドを出迎えに歩いた。
「武器は置かせてもらいますよ。あなたに害意はない」
「どうやら、そのようだな」
これで、腰を据えて話を聞けそうだ。
つづく




