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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第九章・成人期ヘンリル国編

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「さて。何年かね。百年か、千年か」

 町にたどり着いた。

 ミリィの予測は確かだった。

 水中に都市があったのだ。


 俺達はその中を身を寄せ合って歩いていく。

 人々はどこかとろんとした表情でふらふらと歩いている。


「ここにいる人達の心、本当に曖昧だ。昨日の記憶も確かでない者もいる」


「国として成り立つのか?」


 それでは食料を備蓄することすらままなるまい。


「国の中央機関はしっかりとしているようですね。食事供給に関する刷り込み的な記憶はあるようだ」


「……そこの貴方」


 リンドが、町行くものに声をかける。


「この町ができて何年ですか?」


 男は、中空に視線を向けて、しばし思案する。


「さて。何年かね。百年か、千年か。まあ、生きていけるのだから問題はないよ」


「ここに不老の法はあるのですか?」


「さて、俺は自分が何歳かもわからない。もう記憶が摩耗しているのさ」


 ぼやくように言うと、男は去っていった。


「……どうする? これじゃ、ヒントも何もないよ」


 リンドが途方に暮れたように言う。

 ミリィが、不安げに俺を見る。

 俺は微笑んだ。


「国がしっかりしていると言うなら、食料配布している者達を当たれば良いではないか。ひとまず、周囲の様子を見よう」


 二人の表情に笑みが戻る。

 俺達は注意深く、周囲の様子を観察し始めた。

 そのうち、鐘の音が都市内に響き始めた。



つづく













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