「さて。何年かね。百年か、千年か」
町にたどり着いた。
ミリィの予測は確かだった。
水中に都市があったのだ。
俺達はその中を身を寄せ合って歩いていく。
人々はどこかとろんとした表情でふらふらと歩いている。
「ここにいる人達の心、本当に曖昧だ。昨日の記憶も確かでない者もいる」
「国として成り立つのか?」
それでは食料を備蓄することすらままなるまい。
「国の中央機関はしっかりとしているようですね。食事供給に関する刷り込み的な記憶はあるようだ」
「……そこの貴方」
リンドが、町行くものに声をかける。
「この町ができて何年ですか?」
男は、中空に視線を向けて、しばし思案する。
「さて。何年かね。百年か、千年か。まあ、生きていけるのだから問題はないよ」
「ここに不老の法はあるのですか?」
「さて、俺は自分が何歳かもわからない。もう記憶が摩耗しているのさ」
ぼやくように言うと、男は去っていった。
「……どうする? これじゃ、ヒントも何もないよ」
リンドが途方に暮れたように言う。
ミリィが、不安げに俺を見る。
俺は微笑んだ。
「国がしっかりしていると言うなら、食料配布している者達を当たれば良いではないか。ひとまず、周囲の様子を見よう」
二人の表情に笑みが戻る。
俺達は注意深く、周囲の様子を観察し始めた。
そのうち、鐘の音が都市内に響き始めた。
つづく




