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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第九章・成人期ヘンリル国編

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「ここは忘却の国です」

 階層を抜けた後、新たな階層にぶつかった。

 触れてみると、弾かれた。


「これは比較的新しめの階層ですね」


 ミリィは興味深げに言う。


「古代世代に作られた階層より新しいロジックで作られておりますれば」


「そんな大層なもんなんだ」


 リンドが戸惑ったように言った。


「そなた、ヘンリルに辿り着いたのだよな? この階層はどうしたのだ?」


「そりゃ、これさ」


 そう言ってリンドは背の大剣を抜いた。


「マジシャンキラー。魔法を根本的に破壊しちゃう剣なんだよね。西方の国ロイドアで見つけた」


 そういうと、彼女は剣を一振り。

 階層に穴が空いた。


「進みましょう」


 ミリィが言って俺達は進む。階層は復元したようだった。


「空間を歪めることもできましたが、それは多少体に無理がくる。リンドさんがいてくださって助かった」


 ミリィは苦笑まじりに言う。


「ま、私じゃなくて武器が優秀なだけだけどねー。あんたの旦那みたいな大暴れはできないさ」


 そう言って肩をすくめるリンドだった。

 その先に待っていたのは、巨大な湖だった。


「ここがヘンリルだ」


 リンドは、淡々と言った。


「もう、国が湖の底に沈んじまってる。滅んだ国なんだよ」


「そうとは限りませんよ」


 ミリィは言った。


「人魚達は海の底に隠れていた」


 リンドはハッと目を見開く。


「あれほどの魔法技術なら、国そのものを沈めることも可能でありますれば」


 ミリィはそう言って杖を振るった。

 空気の膜が俺達を包む。


「行こう」


 俺の言葉に、二人は頷いた。

 湖に沈んでいく。

 しばし、時間が経った。


「やっぱり何もないんじゃないか?」


 リンドが焦れたように言う。


「いえ、思考が徐々に読めてきた……二人とも、国に着いたら私から離れないで」


 ミリィは静かな声で言った。


「ここは、忘却の国です」



つづく

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