「……父上が私を怖がっているように、私も父上が怖いのです」
着飾った我が細君。
中々に綺麗だ。
元々室内暮らしで湿気の多い地下暮らし。
肌は綺麗なのだ。
最も、この国に日光が降り注ぐことは当分はないだろうが。
くくくと喉を鳴らして笑う。
「孫にも衣装とはこのことだな」
膨れるミリィ。
「それはクラフト様も同じです」
「すまない、そうだったな」
自分も礼服に身を包んでいる。
今日は結婚の儀だ。
ミリィは渋っていたが区切りだ。済ませなければ新婚旅行に向かうこともできない。
「正式に夫婦となるわけだ。しかし、流石魔法大国。結婚式まで魔力で交わすとは」
「魔力上の正式な契約です。私は貴方、貴方は私の服従化に入ります」
(……ちょっとぞっとしないな)
このヤンデレ嫁の服従化。
どんな圧政が待っているか。
想像するだけでゾッとする。
ふと我に返ると、ミリィが膨れていた。
どうやら心を読まれたらしい。
「すまんすまん、俺もお前以外に頼る宛はない。お互い同盟と行こうではないか」
「……人の弱みに付け込んで」
呆れたように言うミリィ。
ま、お互い様だ。
「ほらすぐそういうことを考えるー!」
「集中するな集中するな! ただでさえ人混みに晒される今日だぞ! そなたが敏感になっては敵わん」
またリーシェの家を破壊した時のように暴走されては困る。
古の時代にいた魔法科学で作り出されたヴーンのように。
「いや、今のは流石に俺の例えも悪かった」
ジト目で俺を見る細君に謝罪した俺だった。
ぷいとそっぽを向く。
「いいんです。私が暴走してリーシェちゃんの家を破壊したのは変えようがない事実ですから」
「しかしもう修繕されているとはな。前を通って驚いた。流石魔法大国」
そしてふと気がつく。
頬を膨らませている嫁。
「またリーシェちゃんの家にいったんです?」
「だーかーらー!」
いい加減になさいと心の中で叫ぶ。
「ごめんなさい、ちょっとナーバスになってるみたいで……父上は、私を、許してくれるでしょうか」
思い出す。
老王も触れないようにしていたが、まだ一つ腑に落ちていないことがある。
彼女が母親を焼いた、という流言は本当か、誰も語っていない。
「……父上が私を怖がっているように、私も父上が怖いのです」
その手を、しっかりと両手で包んだ。
「俺がついているよ」
ミリィが目を丸くする。
「今は、俺がついてる。だから、大丈夫」
「はいっ」
ミリィの表情が輝いた。
この時まで、俺は、その日の輝かしい成功を信じて疑わなかった。
ミリィも、その思念を読んだのか、前向きになっていた。
後から振り返るとこの時良く考えるべきだった。
ミリィの能力を本当の意味で理解していたのかどうかを。
つづく




