「貴女の真心なのです」
俺達はあの断崖絶壁にやってきた。
リンドは戸惑うように言う。
「進展はないって言ってたよね? どうするつもりなの?」
「大事なのは、貴女の真心なのです。お借りしますよ、貴女の心の声」
ミリィはそう言って、リンドの背に手を置く。
魔力が解放された。
地面が震える。
莫大な魔力。
ハイラルの魔女。
リンドは目を見開いていた。
「この魔力規模……あんた、一体……?」
「集中して。貴女がなぜ病の解決を望むか。なぜ人魚の血を必要するかを。それが、私を人魚達に伝えるから」
リンドは戸惑っていたが、そのうち目を閉じて念じ始める。
魔力増念波の応用。
莫大な魔力で莫大な範囲へ。
我が嫁ながらとんでもない。
俺は半ば呆れつつその光景を見ていた。
そのうち、脳裏に声が響いた。
「残念ながら、私達の血には、病気を癒す力はないわ」
「そうですか、ありがとうございます」
ミリィの声が響く。
「ヘンリルに行ってみなさい。そこは、その手の技術が残存しているはずだから」
それきり、声は途絶えた。
リンドは戸惑うように言う。
「ヘンリルには行ったよ? 何もなかった」
「魔術の素養がなければわからないこともあります。私が一助になれるかもしれません」
ミリィは淡々とした口調で言う。
「気ままな夫婦旅だったのだがなあ……」
俺は遠い目をして言う。
しかし、目的地は決まった。
次はヘンリル。
錬金術が栄える国だ。
つづく




