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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第八章・成人期ラハル国編

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「私は喰ったのだよ。愛する者を」

「まず隠密の術はアイリン譲りで俺が知っている。侵入してくる」


「しかし、国王は……多分仙人、となれば熟練の魔法使いですよ? 私とも比較にならないぐらい」


「ヴーン・ウィッチの撃破で多少自信がついた。やってみるよ」


「うーん、化け物」


 俺達の会話を聞きリンドが腕を組む。

 城壁は超えた。


 後は、俺が手引きするだけだ。

 気配探知を有効にすると同時に、自分の気配を消す。

 見張り兵の隙間を見つけ、慎重に進む。


 そのうち、特異な感覚をキャッチした。

 何度も感じたことがある。

 不死者の気配。

 一つの部屋からしている。


 俺は、その扉を、開けた。


「……暗殺者、にしては気配が穏やかだ」


 ベッドに腰掛け、淡々とした口調で老人は言う。

 憔悴しているようだった。


 王なのだと悟った。


「ハイラル国王、クラフトと言います。無礼をお許しください」


「かまわん。どうせ人魚の話だろう。不死者殺しの件で寝つきが悪い。戯れにそなたの話相手をしてやろう」


「感謝します」


「さて、どこから話そうか……」


 そう言って、老王は頭上に視線を向けた。


「あれは、千五百年前だったか。あの頃は、魔法生物も当然のようにいた。人々は龍を駆り、天を駆けた」


「想像もつかぬ世界です。そこで陛下は、人魚を捕まえる術を?」


「いや、私は捕まえたのではないよ」


 老王は苦笑した。


「そもそも私には不老不死の資質もなかった。俄の術は五百年の間に綻びを見せ、私は随分老いて行った。その時、陸地に打ち上げられた人魚を救ったのだ。綺麗だった。今で思い出せる」


 老王の瞳が遠くを見るようになる。

 その瞳に、憂が宿った。


「我々の逢瀬は続いた。しかし、私は老いた。歩けぬようになった。そのうち、彼女は言った。自分の生き血を吸えと。吸えば若返るのだと」


 俺は、息を呑んだ。

 それはまさに、俺達が欲しい長寿のヒントではないか?


「若返った……のですか?」


 老王は頷いた。


「白髪は黒く染まり、シワは消え、私は強大な魔法使いに戻っていた。そして理性すらも消えていた」


 俺は背筋が寒くなった。


「と言うと?」


「私は永遠が欲しくなった」


 その先は、聞きたいような、聞きたくないような。

 俺は黙り込む。

 老王は苦笑して、話を続けた。


「私は喰ったのだよ。愛する者を」


 沈黙が場に漂った。


「人魚達が歌で人を遠ざけ始めたのは、それからだ」


 老王は項垂れる。


「私に話せるのは、それが全てだ」




つづく

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