「ただのお兄さんだ」
深夜、夜陰に隠れて飛行する。
城壁を超えた。
そして、下降する。
「案外あっさりしたものだったな」
俺は戸惑い混じりに言う。
国王は仙人。俺達の侵入など立ち所に探知しそうなものだ。
「護衛に自信があるようですね」
ミリィは淡々とした口調で言う。
嫌な音が聞こえてきた。
「ヴーン……ヴーン、ヴーン、ヴーン」
「ヴーン・ソルジャーか」
「ヴーンだって⁉︎」
リンドが悲鳴のような声を上げる。
「古代時代の殺戮兵器じゃないか! そんなの、命がいくつあっても足りないよ」
「旦那様」
「ああ、任せろ」
ミリィに促されて俺は剣を抜く。
「やめろ、馬鹿!」
リンドの声に弾かれたように、ヴーン・ソルジャーが立ち上がった。
その頭部が開き、魔法の矢が放たれようとする。
「案外、簡単だな」
俺は呟くと、次の瞬間圧倒的な速度でヴーン・ソルジャーに肉薄していた。
そして、開いた頭部に拳を叩きつける。
ヴーン・ソルジャーは煙を吐いて崩れ落ちた。
「ば、化け物……」
リンドが唖然としたように言う。
「ただのお兄さんだ」
俺は淡々とした口調で言った。
「旦那様ももうオッサンの年でありますれば」
ミリィは楽しげに言う。
「二十代前半でオッサン判定は厳しいと思うのだがなあ、まあ、いざ王だ」
俺の言葉に、一行の表情が引き締まる。
俺達は、人魚を捕らえたという王の下へ向かおうとしていた。
つづく




