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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第八章・成人期ラハル国編

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「ちょっとした手品ですよ」

「建国神話に関する本は、貸出中ですね」


 図書館の受付嬢は面倒臭げにそう言った。


「なに⁉︎ 国内の者が今更建国神話を読むのか⁉︎」


「いえ、その方も旅の方です。そこで読み耽っておられます」


 そう言って一点を指す。

 若い女性が、分厚い本を読んでいた。


 ミリィが駆け寄っていって、声をかける。


「こんにちは」


「……こんにちは」


「ここで出会ったのもオーヴァ神の導き。どうか我々にもその本を読ませていただけませんか?」


「オーヴァ神……ハイラルの人かな」


 俺は目を見開いた。

 ミリィは微笑んで頷く。


「ええ、そうでありますれば」


「しかし訛りはヨルムドだ」


 淡々とした口調で言う女。

 背に大剣を背負っている。


「君はあちこちを旅してきたようだね」


 女は頷く。


「西はハイラルから東はヘンリルまで」


「錬金術師の国、ヘンリルか」


「ああ。成果はなかったけどね」


 溜め息混じりに言う女。


「あんたらも人魚の肉を求めて旅しに来た口かい?」


「では、貴方も?」


「ライバルに教えることはないね。けどこの本は共有物だ。私は読んだから読みたいから読みな」


 そう言うと、女は立ち去ろうとした。


「また会いましょう、リンドさん」


 女は目を見開く。


「……私、自己紹介したっけ」


「ちょっとした手品ですよ」


 ミリィは悪戯っぽく微笑んでいう。

 リンドと呼ばれた女性は薄気味悪げに去っていった。


「有益な情報を得たようだな」


「ヒントは」


 ミリィは頷く。


「どうやら北の波の流れが激しい浅瀬で、王は人魚を捕らえたそうです」


 読心。ミリィのギフトだ。


「……行くだけいってみるか」


 俺は呟くように言うと、司書に本を返した。



続く

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