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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第七章・成人期イリス国編2

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(陛下、時間をお稼ぎください!)

(さて、どう勝つ……?)


 今の俺なら勝ち筋はある。

 だが、あの外見に切り込む気が起きない。


 なにせ、愛妻の外見だ。

 斬るに斬れない。


(どうしたもんかなあ……)


(陛下、時間をお稼ぎください!)


 脳裏に急にミリィの声が響いた。


(敵の特性、把握しました! 奥の手があります! 時間を!)


 頷いた瞬間、眼の前の偽ミリィが黒い靄に戻った。

 そして、すっと逃げていった。


「なんだったのだ……」


 唖然としてアイリンを降ろす。


「心を読まれましたかな」


 窓から杖に乗ったミリィがやってくる。


「空間に隔離してやるつもりだったのですが、見事に避けられた」


「一番の強敵はそなたであったな」


 苦笑交じりに言う。


「まだまだ仙人クラスには及びませぬよ。それにしては謎が残ります。空間の隔離が脅威なら仙人など殺せない」


「……謎だな」


 アイリンは焦るように背筋を伸ばし胸に手を置いた。


「それでは! アイリン! 任務を終えたので帰路に付きます!」


 俺は驚いた。


「そんな急ぐことはあるまい。まだ危険があるかもしれまい」


「大丈夫です、私の模倣であれば私は対処可能です、では!」


 足音すら立てずに駆けてアイリンは窓から逃げていった。


「陛下」


 ミリィが呟くように言う。


「アイリンちゃんに、花あげたんだ」


 アイリンの心を読んだらしい。


「ああ、戯れに下賜したぞ」


 それがなんだろう。


「……私にプレゼントくれたことって、あったっけ」


 闇の中に沈黙が漂った。

 重い重い沈黙だった。


「ま、魔力増念波」


「それは私のを駄目にしたからの補填ですよね」


 再び沈黙が漂った。



つづく

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