「お逃げくださいと言ったのに……」
短刀と短刀が火花を散らす。
(……やはり!)
動き、速度、全て模倣されている。
完全なコピー体。
それが今回の敵だった。
こんなものに不意を突かれればいかな仙人とて即死だろう。
「不死者殺しの正体見たり!」
アイリンはそう叫んでくないを次々投じ、相手の影を縫って火遁を起こす。
闇の中に炎が浮かび上がった。
けど、効かない。
相手は靄状に戻る。
(なんだ、これ? どうやれば……勝てる?)
戸惑いが先に立つ。
足音が近づいてきた。
「陛下、来てはいけない!」
「……近づけばそなたが危ない、そうなのだな?」
安堵する。
「ご明察、感謝します。今回はどうやらそういう手合いのようだ」
「生憎、私は気配は読めても夜目は効かぬ。音も生の気配も曖昧な今回の手合いは少々手こずる」
そう言って、クラフト王は溜息を吐いた。
「そなたに、頼る」
なんと気分が高揚する言葉だろう。
我が王に頼られた。
こんなに嬉しいことはない。
「はい、私が全てこなしてみせます!」
そう気分が高揚してたのも僅かな時間だった。
敵の姿が変わる。
それは、ミリィの形を模していた。
戦略兵器級魔法使い、ミリアリア・ハイラル。
その力は最早伝説となって諸国に伝わっている。
「陛下、お逃げを!」
叫ぶのと、火柱が起こるのと、クラフトがアイリンを抱き上げてガイエルを展開するのは同時だった。
火柱と硝子のような魔術の防壁は徐々に防壁が欠けていくが、なんとか数秒は持ちこたえている。
その隙に、クラフトは位置を移動した。
(強くなっている)
息を呑んだアイリンだった。
「お逃げくださいと言ったのに……」
「そなたを失うわけにはいかんよ」
炎に煌々と照らされながら、クラフト王は心強く微笑んだ。
部下を鼓舞するように。
つづく




