「夜は忍びの時間です」
なにか、背筋が寒くなった。
時間は夜。俺とアイリンはイリス国王の寝室にいる。
ミリィが帰ってくるまでは三人でしばらく過ごすつもりだ。
槍と片手剣を持って立ち上がる。
「どうなされました?」
アイリンが不思議そうに問う。
「なにか、嫌な予感を覚えた。少し見回ってくる。アイリンは王の護衛を」
アイリンが立ち上がった。
闇に溶け込む黒装束だ。
「夜は忍びの時間です。アイリンにお任せください。陛下の不安を拭い去ってお見せしましょう」
「しかし……嫌な予感がする。そなたは王都奪還の際にも無理をした。私としては危険な場には送りたくない人材だ。替えも効かんでな」
「ですが、陛下こそハイラルの未来です。それを守るのが私の使命です」
「既に息子がいるよ」
苦笑する。
「それでは、二人で見て回りますか?」
「そうだな、異常があればすぐに互いに駆けつけよう。俺達の速度なら可能だろう」
「では」
「私は置いていかれるのか?」
情けない声で言うイリス王。
「大丈夫、我々が見てまいります」
そう言って二人、部屋を出る。
アイリンとはそこで別れた。
+++
アイリンはしばらくダンスホールを壁伝いに進んでいた。
足音は一つも立てていない。
それが音の反響する静かな夜において高度な技術であることを誇りに思う。
そのうち、変なものに、出会った。
(なんだ、あれ……)
闇の中で、さらに黒い。
黒いモヤのようなもの。
アイリンは物陰からくないを投擲する。
それは自らに向かって返ってきた。
鋭い一刀。
短刀で弾く。
すると、相手も短刀を手に構えて腰を落とした。
黒い靄が徐々に人状になり。
姿を成した時には、アイリンの形を模していた。
「陛下、来てはなりません!」
そう叫んで、アイリンは速攻で相手を始末することに決めた。
こいつがヴーン・ウィッチを撃破するようなクラフトをも模倣すれば、それは最早災厄だ。
つづく




