「これはあってはいけないものです」
洞窟の上部に開けた穴から俺達は地上に降りる。
ミリィの杖に乗ってゆっくりと。
だんだん、宝箱らしきものが見えてきた。
「ここに入っているのか」
床に降り立ち、開けようとする。
開かない。
神通力を使って力を入れる。
開かない。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……」
「へーいーかー」
小声で囁くミリィ。
「私、さっきなんて言いましたっけ?」
無視して続ける。
「ブレイクスペル」
ミリィが淡々と告げると、箱は勢い良く開いて壊れてしまった。
「つまらぬ意地を張るからです」
ドヤ顔で言うミリィ。
むー、尻に敷かれるのは本位ではないのだが。
「すまぬ、助かった、ミリィ」
苦笑するしかない。
中には巻物が一巻。
ミリィの表情を伺う。
無表情だった。
彼女は無言で手に取り、開く。
そのまま表情を変えずに言った。
「やはり、これはあってはいけないものです」
俺は表情を強張らせた。
「それほどのものか?」
「些細な魔力の持ち主なら問題ないでしょう。けど上級魔法使いレベルが使えば不死の軍隊を作れましょう。しかも、これは魔法ではなく歌です。伝承は簡単だ。鼠算式に不死者が増える。こんなものがあっては、世界が崩壊します。古代世界のような崩壊にまで行き着くでしょうね」
俺は真っ青になった。
「それほどのものか」
「はい」
静かな表情で頷くミリィ。
「寿命に関する記述はないか」
しばし、ミリィは無言で先を読み続けた。
「ありませんね。厄介なことに不老の法のみです」
「そうか……」
溜息を吐く。
「よろしいですか? 陛下」
仕方あるまい。その話を聞けば危険過ぎる。
「やれ、ミリィ」
ミリィは頷く。
一瞬で、巻物は炎に包まれ灰になった。
「まあ、前進にはなった」
「次の国にも目処を立てているのですね、なんと準備が良い」
「あてもなしにルートを決めるほど私も無謀ではないよ。世界は広いのだ」
遠く空に目をやる。
「一旦イリスに戻り東へ。海の街へ」
「海の、街……」
「ああ」
俺は頷く。
「そこには、水も何も食べずに生きている人間がいるという。あの王都奪還で敵だった彼の証言だ」
「水も、何も、食べず……仙人様ですね」
「ああ。仙人が支配する地だ」
つづく




