「細君の魔法なら階層を抜けることなど容易いでしょう」
俺とイリン王子は人目を避けて小屋に入った。
「なんの用です? イリン王子」
イリンは物憂げに言った。
「父上の妄言で貴方達を振り回して申し訳ないと思っているのです。貴方の細君の魔法なら階層をぬけることなど容易いでしょう。進まれるが良い。後は私が見つからなかったと報告します」
(……ほう)
さて、この言動は本当に親身になって言っているのか。
見つけられるとまずいと思っているのか。
どちらだ?
「そうですな、検討します」
ミリィは既に目星をつけている。
そこを探せば林檎探しも終わる。
帰る気など毛頭ない。
ただ、留まると言えば万が一の可能性がある。
だから、俺は濁した。
イリン王子は不服げだった。
人混みに戻る。
ミリィが子供達に海の子の歌とやらを聴かせていた。
俺はその隣に座る。
「陛下、なにか御用があったので?」
「ああ」
俺はムスッとした顔で返す。
「無駄足になるかもしれんな」
ミリィはキョトンとした表情になった。
「レイヴン様から心を読まれないようにする術を学んでから、すっかり陛下の心が読めません」
苦笑交じりに言う。
「魔力増念派の逆応用だとはな。覚えてしまえば楽だった。今は楽しもう」
そう言って、俺はすっと差し出された酒を高々と掲げ、炎の魔術でジョッキを燃やされた。
そうだ、酒では失敗があったのだった。
「根に持っておるのだな」
取っ手だけになったジョッキを申し訳なく思いながら町民に返す。
「当然でございますれば」
ミリィは呆れたようにそう言った。
つづく




