「私は武も極めねばならぬ」
早朝、木剣を振る、振る、振る。
ミリィが寝ぼけ眼でベッドで体を起こした。
「陛下、熱心ですねえ。今までは戦術を組み立てるのが陛下の仕事でしたのに」
「レイヴンにも随分鍛えられた。これからは二人旅だ。私は武も極めねばならぬ」
「十分強いと思うけどなあ」
「条理の外の存在と言うのはいるものだ。私はレイヴンに勝る強さを得なければならぬのだ」
微笑んで俺を見守るミリィ。
穏やかに時間は過ぎていった。
昼頃、ミリィが魔力探査を開始した。
国のあちこちで魔力探知をする。
不味いものを飲み込んだような表情になる。
「結構な手練がいる……」
「武か? 魔か?」
「私の探知では魔法使いしか引っかかりませぬ。大きな魔力をいくつか感じたがすぐに引っ込めた。結構な手練だと感じました」
「争いは避けられれば良いのだが……黄金の林檎の方は?」
「怪しい魔力を感じました。明日、訪れましょう。今日は祭りだ」
そう言って悪戯っぽく微笑む。
俺達を歓迎する祭りが行われるのだという。
イリスの国王も粋なことをしてくれるものだ。
夜になると、巨大な火柱が王都に中央に起こり、料理が振る舞われた。
巨大な肉塊にかじりつく俺。
「太った陛下は見たくないなあ」
ぼやくように言うミリィ。
「これが筋肉になるのだ」
尤もらしく言う俺。
「ハイラル国王陛下ですね」
呼ばれて、振り返る。
十代半ば程の少年が居た。
貴族の服だ。
「そなたは?」
「第一王位継承者、イリンです」
挨拶だろうか。
それにしては深刻な表情だ。側近も護衛もつけていない。
俺は肉塊を置いて、向き直った。
「話があるようだな」
イリンは重々しく頷いた。
つづく




