「ミリィは待ちくたびれました」
国家の人材資源の立て直し。
中々容易なことではなかった。
しかし、王宮からミリィを畏怖する人々がいなくなったと考えれば血の入れ替えが出来たと考えた方が良いかも知れない。
あの中の何人がガイエルに加担していたかもわからないのだ。
地方から人材を集め、学徒も動員し、なんとか乗り越えた感じだ。
俺は玉座に座り、リーシェの愚痴に付き合っていた。
「ヒョウンがアイリンを指導者に回すべきだと五月蝿いのです」
「アイリンはお前付きだしあれにも一隊長としての役目があるはずだが……」
「私も困っております」
アイリンが困り顔で俺の横に降り立つ。
天井に張り付いていたらしい。
「ヒョウンと来たら、私の顔を見つける度に現役を退け、現役を退けと。私はまだ現役を引退する年ではありませぬ」
「困ったものだな」
苦笑しつつ返す。
「若い男は時に、女に執着することがある」
そう言って飄々と現れたのは、レイヴンだ。
「師団長。細君は元気か?」
からかい混じりに言う。
「まだ引退させてはもらえませぬか」
「細君と仲直り出来ただけでも良しとせよ、人材難ゆえな。実力は衰えたとは言えそなたの経験は役立つ」
「まあ仕方ありませぬな。なにせ、自分で臨んだ任官だ」
「そなたにも随分苦労をかけた。後進を育てつつゆっくりとした余生というのも乙なものではないか?」
「わかりませぬ。いつかふらりと旅に出るかも」
「リディが怒り狂うぞ」
「……出産が終わったら彼女を師団長にしては? 正気を失わずとも力を制御できるようになった今の彼女は俺と比肩する」
「お主の経験と技量は代えが効き難いよ」
先王が子供を追いかけてやってくる。
俺の子供だ。
皆、胸に手を当て頭を垂れる。
俺は立ち上がると、彼の頬に手を添えた。
「レッド。しばしの別れだ」
きょとんとした表情のレッド。
一同がざわついた。
+++
「ミリィは待ちくたびれました」
王都の外でミリィは一人佇んでいた。
「すまない、随分と手間取った。しかし、そなたにとっても子や親と触れ合う良い機会になったのではないかな?」
「生きたいという願望が、強まりました」
苦笑するミリィ。
「先王が暫く全て担ってくれるらしい。俺達は共に土台を築いた。今はそれで十分だろう」
頷いて、二人旅立つ。
寿命を削って戦ってきたミリィの寿命を取り戻すために、俺達は探索の旅に出かけるのだ。
初めてこの地を立った時。
ミリィは依存的だったし俺も周囲に振り回されてばかりだった。
追放されて始まった旅。
しかし、今は違う。
二人、しっかりと地面を踏みしめて。
行く。
ミリィの尽力によって火山の精霊との仲直りは済み、噴火の原因も解決した。
空は青い。
魔女の涙は、もう降らない。
青年期・ハイラル編 終わり




