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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第四章・青年期ハイラル国編

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「英雄の戦い、しかと見ていろ」

 槍で突いた瞬間。

 悔いた。

 相手は自分より先んじた存在だ。

 そうつくづく思い知った。


 槍を居合いで捌かれ、返す刀で斬られる。

 割って入る者がいた。


 アイリンだ。

 全ては一瞬のことだった。


 アイリンは斬られた。

 男は目を丸くする。


「クソっ!」


 槍で相手の手首を貫いた。

 もうこれで刀は持てまい。


 からんと音を立てて刀は地面に落ちた。

 ヒョウンはアイリンを抱え、歩き始めた。


「今助ける! リディア様のいるところに辿り着けば、あるいは……」


「トドメは刺さぬのか?」


 男は戸惑うように言う。

 ヒョウンは一度、立ち止まる。


「腕が惜しい。貴方も自分の腕を活かしたいならば、ハイラル国王陛下に仕えるべきだ」


「果たして勝てるか? 俺の主君に」


「勝つと、期待している。そしてあのお方が俺を裏切ったことはない」


 そう言い放って、駆け始めた。

 アイリンの呼吸は荒い。


「アイリン殿、しっかり」


 アイリンは荒い呼吸で頷く。

 意識はあるらしい。


「止血薬……背中の鞄に」


 頷いて、駆けながら鞄を漁る。

 勝負はついた。

 ヒョウンとアイリンは勝利した。



+++



 ネクロマンサーに向かってリーシェは跳躍して斬り掛かった。

 その瞬間、ネクロマンサーの魔法の触手に絡め取られた。


「ぐっ……」


 レイヴンが魔法の触手を断ち切ってリーシェを抱きかかえるr。

 ミルドとハイラルの知識の結晶である対魔武具だ。


「嬢ちゃんにしては、短慮だ。誰か、知人でもいたか」


 リディが震える手で、指さす。


「あのネクロマンサーが操っていたのは、リーシェちゃんの家族だ」


 真顔になるレイヴン。

 リーシェは一筋涙を流す。

 ハイラルを出た時からある程度覚悟していたことだ。

 ただ、牢に捕らえられているのかも知れない、という期待は持っていた。

 しかし、現実は厳しかった。


「……俺の本気を、見せる時が来たようだ」


 レイヴンはそう言って、リーシェを降ろす。


「英雄の戦い、しかと見ていろ」


 そう言って、レイヴンは二人に背を向けた。



+++


 ミリィのガエリオが敵の魔術を阻んで前進する。

 後少し、後少しと言うところで動けない。


 ミリィの体が崩れ落ちる。


「……基礎魔力量が落ちている?」


「息子に持っていかれたな」


 老人が淡々とした口調で言う。


「こんな心を読む珍奇な存在、子供まで作る数奇な者がいるとは思わなかった。しかし、私が不老不死の術を使いその体で修行を積めば……」


 老人の手が、ミリィに伸びる。

 その腕を、俺は断っていた。


「ハラド、任せる!」


「無茶を仰る……」


 俺はガエリオを越えて、敵に飛びかかっていた。



つづく

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