「私は武を極めるために旅をしていた」
ヒョウンはアイリンと共に構えていた。
相手がゆっくりと剣の柄に――いや、それは噂に聞く東方に伝わる刀というものなのだろう――手を添える。
「私は武を極めるために旅をしていた」
淡々とした口調で男は言う。
「しかし、どの国に行っても同じだ。利用するだけ利用して、後は邪魔者扱い。私はどの国でも疎んじられた。だから、この混乱は好機だった。お主もそうだろう?」
ヒョウンは胸を張って返す。
「私は自らのために武を極めようと思った。だが、皆が陛下を慕っている。私も陛下に興味を持って仲間に加わった」
槍を構える。
「あの方は、私の期待を裏切らなかった。王族なのに、庶民にも頭を下げたりする、情けなくて、妻と喧嘩してへこんだりする、人間らしい俺の主君だ」
「……そうか」
刀と槍。構えているものは違うが心は似通っている。
違ったものは、仕えた主君。
「お主が若干、羨ましい」
じりじりと両者にじり寄る。
居合いの間合いの外から倒す。それしか手はなかった。
+++
「どんりゃああああ!」
怒鳴り声が響き渡る。
敵の一人が臓物を吐き出しながら吹き飛び、軍勢に割れ目を作る。
「今回ばっかりは私も怒った!」
リディが覚醒した? しかし意識を失っていない?
リーシェは戸惑う。
「あんた……コントロールできてるの?」
「流石の私でもあれだけたびたび意識を失ってたら流石に考えるよ」
苦笑交じりに言うリディだった。
「それもそうか」
苦笑して戦いを再開するリーシェ。
リディの暴れぶりに敵の軍勢は次々になぎ倒され、そのうち酷い匂いに魔法使いが空中に浮かび上がった。
リーシェは彼女を睨みつけた。
彼女はリーシェに微笑みかけている。
嘲笑うかのように。
「……大人しく尻に敷かれとこうっと」
リディの暴れ振りを見てぼやくように言うレイヴンだった。
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ミリィの双頭の炎の竜が飛んでいく。
それを老人の光の槍が貫く。
しかし、互いに術を互いのガイエルで無効化する。
「私と同格。思った以上に育った」
「ミリィ、前線を押し上げてくれ!」
俺は言う。
「間合いに入れば一太刀で倒せる! ガイエルを展開して前進してくれ!」
「了解です!」
一歩一歩、ミリィが歩いていく。
それを、俺は息を呑んで見守っていた。
つづく




