(……できる!)
ヒョウンは冷や汗をかいていた。
一触即発。
相手が鞘に収めた剣が抜かれた瞬間に、自分は真っ二つになると直感で理解した。
(……できる!)
リーシェ達が反応しなかったことから以前はハイラルにいなかったことが伺える。
旅の者、だろうか。
自分と同じ、元は在野の人材。
しかし。
にぃと微笑む。
「アイリン殿、貴方が残ってくださって助かった。私一人じゃ対処できなかった手合だ」
言うが否や、アイリンはくないを飛ばした。
敵は剣を半ばまで抜いて弾く。
片刃の刀身。鞘と違わず細い。
その否や、突きを放った。
その次の瞬間、相手は新たに剣を鞘に収め、勢いをつけて抜き放っていた。
神速の抜剣。
槍が弾かれる。
間合いに入られる。
(やば……)
思う間もなかった。
相手の剣が走る。
それを、アイリンがくないで弾く。
相手は数歩下がり、剣を鞘に収めて再び構える。
「ヒョウン殿の性格が少しわかってきました。責任感が強くて任されたがり。頑張りすぎる手合です」
苦笑交じりにアイリンが言う。
「噂には聞いたことがある。さらに東方の国で伝わっているという……居合い」
男の表情は変わらない。
魔導機械のようだ。
「二人なら、牙城も崩せるはずだ」
「ええ」
二人は頷きあい、じりじりと間合いを詰めた。
+++
大軍を次々と踊るように交わしていくレイヴンとリーシェ。
次々に敵を切っていく。
十人、二十人と真っ二つになり事切れた遺体が残る。
(後何体……?)
リーシェは考えて、気が遠くなる。
その時、ある者を見て頭が真っ白になった。
見知った顔が数人。
反応が遅れた。
レイヴンが間に入る。
「見知った顔か?」
「……ええ、覚悟はしていましたが」
「斬るぜ」
「お願いします」
見知った顔をレイヴンが斬っていく。
(……殺す!)
ネクロマンサーへの殺意を新たにしたリーシェだった。
+++
八岐の炎の蛇をミリィが召喚する。
それは以前より精査な動きで大臣を焼き尽くした。
大臣は燃えカスになり、そこには何もなかった。
あっけない幕切れ。
武でいけば苦労しただろう。しかし、ここを追放された時に比べて格段に魔法使いと進歩したミリィの魔なら、こうも容易い。
元々戦略兵器クラスの魔法使い。それに精緻さが加わった。
ここまで温存したその魔力解放をしたということは――本命が近いということ。
「強い気配がする……」
ミリィが階段の上にある王座の間を見つめて低い声で言う。
「行こう」
俺とミリィとハラドは歩き始めた。
つづく




