「神の……気配……」
火山の精霊の目に、理性の光が僅かに宿る。
「神の……気配……」
一同の視線が俺に集まる。
我が家に代々神の血が流れているというのは与太ではなかったらしい。
「荒ぶる火山の精霊よ、落ち着いてくれ。この地はこれから私が統治する。最早二度と火山に手出しはさせぬ。だから、ここを通してくれまいか」
火山の精霊はしばし考え込んだ後、胎児のように丸まった。
そして、黙り込んだ。
行け、ということらしい。
「さて、この先鬼が出るか、蛇が出るか」
「つまんねーの」
と言って剣を収めるレイヴン。
「火山の精霊を倒したらこの国を覆う火山灰問題も解決したかも知れねーぜ?」
物足りなさげに加える。
「ここは武勇を誇っている場合ではないのだ、レイヴン。敵はこのような対策を練っていた。この先にも強敵が待ち受けているだろう。そこまでそなたの力を温存していてくれ」
「わぁってるよ」
「しかし火山の精霊とは驚きました」
火山の精霊を見つめながら冷静に言うリーシェ。
「どうやって連れてきたのか……」
「先王を隔離した魔法と言い、火山の精霊の移動と言い、敵方にはよほどの魔術師がいると見られます」
ミリィは淡々と言う。
そして、微笑んで付け加えて腕まくりする。
「私の出番、ですね」
俺は苦笑して、ミリィの頭を撫でた。
「ああ、お前に頼るよ」
「また陛下は私を子供扱いする」
苦笑交じりだがまんざらでもなさそうなミリィだった。
うーん、元ヤンデレが成長したものだ。
一同、馬を降り地下通路を歩く。
剣、というにはあまりにも細すぎるそれを抱えて座り込む私服の男が一人。
その眼光が、鋭く俺達を射抜いた。
「俺の出番、だな」
レイヴンがうきうきと剣を抜く。
「いえ、この先、貴方の力は絶対に必要になるはずだ」
ヒョウンがそう言ってレイヴンの前に立つ。
「私にお任せを」
アイリンも続く。
「ヒョウン殿だけでは若干心もとない相手と見受ける。地形情報は既に陛下に渡しましたゆえ、私も」
俺は微笑んだ。
「そなたらに任す」
俺達は歩き始める。槍を構えたヒョウンと、腰を上げた男の、一触即発の空気になった。
つづく




