「久しぶり」
ヒョウンは槍を振るっていた。
それを片手剣でひょいひょいとレイヴンは弾く。
横薙ぎ。
しかしその上に乗られた。
「いやはや、敵いませぬな」
呆れたように言うヒョウン。
「なに、そのうち追い越す。お前さんは筋が良い」
「本当でしょうか……?」
「保証してやるよ。そのうち俺を追い越す。若い者の時代が来る。調整に付き合わせて悪かったな」
そう言ってレイヴンは片手剣を鞘に納める。
「大剣は置いていくので?」
「陛下の考えるクーデターは室内戦を想定している。大剣は味方を巻き込みかねないし、壁にぶつかりかねない」
「城、と言えば広い空間をイメージしますが……」
「念には念をってことよ。俺も準備は整った」
呼吸を整えたヒョウンは槍の柄で地面を突く。
「陛下はまた月見でしょうか?」
「黄昏れているのよ」
からかうように言ったレイヴンだった。
+++
あれ以来、ミリィからの連絡はない。
後はミリィさえ来ればクーデターの準備は整う。
王都と先王の奪還。それに向かって進むことが出来る。
月夜を眺める。
綺麗な満月だった。
背後に気配を感じて、俺は振り向いた。
「久しぶり」
青空を思い起こさせる懐かしい声。
微笑む。
「久しいな」
「出来る準備は全てしてきました。後は、戦うのみ」
「私もだ」
抱き寄せる。
久々の温もり。
ああ、彼女の中に私人としての自分の居場所があるのだと実感する。
「子供は?」
「仙人様に預けてきました。ここにいたら政治に利用されるだろう、と」
「尤もな話だ」
俺が父でも利用するだろう。
野心家とはそういうものだ。
「行くぞ、ハイラル」
「この旅で大人になりましたね、互いに」
「仲間も増えた」
月夜を見上げて決意を新たにする。
「王都決戦だ」
ミルド国編2・完




