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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第三章・青年期ミルド国編

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「王の器とはなんだと思う?」

 訓練場にアルトとリーシェと、そして見破られたので表立って行動を始めたアイリンと伴に移動する。


「木剣での試合にしよう。その方が本気を出せて良い」


 アルトはそう提案した。

 俺も異論はなかった。


 真剣での勝負になれば寸止めが基本となる。

 それでは本気は出せない。


 そして両者木剣を持ち、向かい合う。

 アルトが、ポツリと言った。


「王の器とはなんだと思う?」


「善政を敷くことか?」


「部下に慕われることだ」


 アルトの答えに、俺は異論はなかった。


「確かに、優れた将の下には優れた勇者が集まると誰かが言っていたな」


「それを上手く差配するのも王の器だ。レイヴンを始めてみた時。あれは誰にも制御できぬ規格外の男だと思っていた。それを負かして部下にした。お前は十分に王の器を持っている。ただ」


 アルトはまっすぐに俺を見た。

 優しい瞳だった。


「お前は現場主義が過ぎるようだ。それではそのうち、取り返しがつかないことになる。王位が空座になった時の混乱をお前は考えているのか?」


 黙り込む。

 反論できなかったのだ。


「しかし、私はお前が羨ましい。若い頃は国内を旅し、成長してからは今も放浪して有力な部下を増やしている。お前は根が武官なのだろうが、十分に王の器足り得るだろう」


 アルトはそう結んだ。


「私にも武官の才はある。備わったのがそれだった。しかし、私はお前とは違う王となるだろう。現場主義は王の道ではないというのが私の王道だ」


 そう言って、木剣を構える。


「私からの手向けだ。武官としての能力を引き出してやろう」


 しんと静寂が訪れる。

 俺も木剣を構える。

 しかし打ち込めない。


 俺の策謀のギフトを使っても、この男に勝てる未来が見えない。

 絶対領域がある。

 これ以上接近すればこの男は立ちどころに反応するだろうという領域がある。


 沈黙の支配者。

 それがアルトのギフト。


 それにどう対応するか。

 俺は木剣を構えたまま思案した。



+++


「ミリィちゃんはガエリオを使えるのかな?」


 スカーレットの問いに、ミリィは申し訳な下げに項垂れた。


「私は社不の引きこもりでしたゆえ、先代から継承の機会を失ったのです」


「そうか、なら私が伝授しよう」


 目を丸くする。


「スカーレット様もガエリオを使えるので?」


「仕組みを想定すれば簡単だ。君もその領域にいずれ踏み入れる。ハイラルでもサバイバルの術が発展したように、魔法の世界というのは模倣と解析の繰り返しだ。証拠を見せよう」


 そう言って、スカーレットは距離を置くと両手を広げた。


「私に最大火力をぶつけるが良い。それを全て無効化してみせよう」


 ミリィは迷った。

 まだミリィが子供で嫉妬深かった頃。それぞヤンデレと言われていた頃。

 友人のガエリオを破壊しかけたことがある。


「大丈夫。君の魔力でも私のガエリオは突破できないよ。突破できたなら免許皆伝を与えよう」


 迷いは残っている。しかし頷いた。

 炎を浮かべ、飛ばす。


「ガエリオ」


 スカーレットはそう静かに呟くと、青色の硝子のような障壁が現れた。

 炎が着弾し、火柱が上がる。

 古代兵器ヴーンすら一撃で倒す破壊の力だ。

 ミリィ最強の鉾と言っても良いだろう。


 しかし、ガエリオは崩せなかった。


「君に伝授するものが見えてきたね。一つは、ガエリオ。一つは、空間を支配する力。一つは、不老不死。その火力のためにどれだけ寿命を燃やしたか……」


 スカーレットは不憫げに言う。

 しかし、ミリィは苦笑した。


「最期の一つはいりませぬ」


 スカーレットは微笑ましげな表情で言う。


「何故だい? 死ぬのが怖くないか?」


「私には夫も息子もいます。彼らがいなくなった後も生き続けるのは拷問だ。私は、夫と伴に老い、夫とともに生きる力が欲しいのです。それが見つからなければ、潔く夫の中で綺麗な若い姿のままで生き続けることを選ぶでしょう」


「達観しているなあ」


 スカーレットは天を仰ぐ。


「昔の人は皆死ぬのを怖がった。結果、私は旧時代から今も生きている。しかし、君はそれを超越した。それも、愛なのかな?」


 ミリィは自信を持っていう。


「ミリィは十分に得難い記憶を得ました。それが私の生きた証なのです」


「だから私も、君の器は十分だと判断したのだろうな」


 スカーレットは顎に手を当て、苦笑する。


「出産も終わった。これから本格的な魔術の修行に入る。私はスパルタだぞ」


「はいっ」


 ミリィの声は弾んでいた。

 クラフトの力になれる。それが嬉しかった。



つづく

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