「兄貴ー、文官としては相変わらず優秀みたいだな」
城の一室に案内される。リーシェもいる。
護衛隊長を任されるだけあって付きっきりだ。
そしてアイリンも隠密で着いてきているという徹底ぶり。
これは身の心配はしなくて大丈夫そうだ。
見知った顔が見えた。
部下を厳しく叱責している男。
ワクライだ。
「兄貴ー、文官としては相変わらず優秀みたいだな」
ワクライはこちらを見ると、嫌なものでも見たようにそっぽを向いた。
あ、前回裸にして吊るしたこと根に持ってる。
「それぐらいにしてやれ、クラフト」
おっとりした声をかけられる。
背筋が寒くなった。
気配がしなかった。
リーシェが戸惑うように耳打ちしてくる。
「この方、何者です? 気配がまったくしなかった……」
「かつて俺が、この人には絶対に勝てないだろうなと思って一生関わるまいとした人だ」
頭を抑えつつ言う。
「酷い言いようだな、クラフト。聞けば結婚して子供も出来たという。しかもハイラル国王を名乗っているとは。私もお前に先をこされてしまったな」
苦笑交じりに親しげに肩に手を置いてくる男。
「貴方は、何者です?」
リーシェが戸惑うように言う。
「少し離れた場所に潜んでいるのもお前の手のものだな。こちらを凝視しているから視線でわかる」
リーシェは目を見開いた。
「アルト第一王子殿下だ」
俺は溜息混じりに言っていた。
しかし良い機会かもしれない。
「殿下。私の修行をつけてくれまいか」
「ほう、私のことを徹底的に避けていた社不のお前が私に師事するという。これは明日は雪でも降るかな」
「私は現場主義ゆえな。貴方から学べることは学んでおきたい」
振り向いて、アルトと対面する。
細身で色白の美青年。と言った形容がよく似合う。
日に焼けた野生児の俺とは対照的だ。
+++
ミリィは恐ろしいものを見ていた。
それは魔導科学が進んだ社会。
全てが魔導機械に任せられ、全てが魔導で解決する世界。
その中で、ヴーンは代理戦争の兵器として作られた。
その他にも様々な魔導兵器が誕生し、発展し、最終的に思考を放棄した人間によって解き放たれた。
そして、一度目の終焉戦争。
溜息を吐く。
「そこで一度、魔法の継承が途絶えたのですね」
「途絶えてはいないさ。細々と続いていた。だから今がある。貴女の国にも探せば仙人のような人がいたのではないかな? 多分、私が苦手とする手合だ」
「スカーレット様にも苦手な相手はおりますか」
「物量戦を仕掛けられたら小細工重視の私は敵わん。その点、貴女も私に勝つ可能性はあると思うよ」
「とてもとても。空間を捻じ曲げる貴女の術にかかれば全ての魔法が無効化されるでしょう」
「だからその対策として、ハイラルでは独自の魔法が発展した」
「ガエリオ……」
王家にだけ伝わる魔法を殺す術。
「貴女の国の仙人の名だ」
淡々とした口調で、スカーレットは言った。
つづく




