「ミリィがいないとこうも手間か」
アイリンが天高く飛んできた。
「進んで大丈夫でございます!」
元気よく言う。
今日の彼女は草木に隠れる迷彩カラーだ。
リーシェが重々しく頷く。
「前進しましょう」
「ミリィがいないとこうも手間か」
「人数も増えて目立ちますゆえ、致し方ありませぬ」
リーシェは淡々とした口調で言う。
近年感情が薄くなってきたリーシェである。
貫禄がついたということなのかも知れない。
「しかし故郷でまでここまで警戒する必要はあるか?」
「一時期ミルドの国王はハイラル大臣派だったゆえ、用心はしておくべきでしょう」
そう言って鎧姿で歩みを進めるリーシェ。
一同、その後に続いた。
馬はない。
小さな船でこの国にやって来たのだ。積むスペースなどないのである。
温暖な気候にほっとする。
やはり慣れた国なのだなと思う。
ミリィからの連絡はまだない。
今頃修練の真っ最中だろうが、出産の方はどうなっているのだろう。
消耗していなければいいが、と思う。
そんな事を考えてぼんやりとしていると、王都に着いた。
アイリンを使者にしているので話が通っているらしく、門が開く。
「王子殿下、ご帰国!」
紙吹雪が舞う。
歓声が起こる。
帰ってきた。
そんな実感が沸いてきた。
まずは謁見だ。
久々に会う父は、げんなりとした表情だった。
「また姫不在か。これでは侵攻の正当化がならん」
「今は妃です。私がハイラル国王ですので。妻はヨルムドの仙人に秘伝の術を習っている最中。追々追いつくでしょう」
「仙人、ねぇ」
「それにハイラル奪還に父の手は借りませぬ」
父の目つきが鋭くなる。
「して、その策とは?」
「私の手の者が王家の者しか知らない侵入経路を見つけました。そこからの少数精鋭のクーデターを行おうと思います」
父は少し考え込む。
「良いだろう」
そして続ける。
「ただ、姫は置いていけ」
「それは困りますな」
俺は苦笑する。
本来なら妻にはそうさせるべきだとわかっていながらも。
「我が細君は魔術に長けている。戦略兵器級の魔法使いです。それがヨルムドの仙人の手によりさらなる進化を遂げ帰って来る。彼女は立派な戦力なのです」
「ほう……しかし姫が死に、あるいは捕らえられるようなことがあれば、一気に正当性がなくなる。それは飲み込めぬな。所詮は、武官であったか」
「その点なら問題ありません」
俺は微笑む。
昔は苦手だった父とのやり取りも落ち着いてできるようになったものだ。
社不、一歩進歩。
「我が子ができました」
父は目を丸くして膝を叩いた。
「でかした!」
謁見の間に朗々と響く大声だったという。
とりあえず協力の目処は立ちそうだ。
部下に恥をかかせずに済みそうで、安堵する。
つづく




