「魔法とはなんだと思う?」
妻が帰ってきた。
仙人の姿を見て目を丸くする。
「……やはりお若い。しかし私の魔力探知に引っかからぬとは」
驚くように言う。
「ヘンリルで錬金術を学んでね。不老不死の身だ」
「不老不死……?」
それも気になる話題だったが、俺は口を挟む。
「それも気になるワードではあるのだが、まず、目下、妻は出産を控えている。魔術の鍛錬は毒だ」
「ふむ、それは問題ないのだが……こうも過保護な旦那がいては鍛錬も進まん。行くぞ、細君」
そう言うと、仙人の前に違った空間の景色が浮かび上がった。
山の頂上だ。
あまりにも桁の違う魔術の披露に俺達は慄く。
「さあ、行くぞ、細君。旦那さんは先にミルドに行くと良い。追々追いつかせるよ」
「お、おい!」
制止する間もなく、妻の手を引いて空間の裂け目に入っていった。
そして、残ったのはただの部屋だった。
唖然とした俺が取り残された。
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「仙人様。私は陛下と長らく傍にいました。離れ離れは若干寂しゅうございます」
ミリィは困ったように言っていた。
山の頂上だ。
気温が低い。
発熱の魔術を使う。
「なに、そう長くはかからない。そうだな……一ヶ月程度かな」
「それぐらいは私も我慢できますが……出産もありますれば」
「大丈夫。まずは、座学だ」
そう言って仙人は指を鳴らす。
空間に黒板が突如出現する。
そこに、魔法と書かれた。
「ミリィちゃんは魔法をなんだと思う?」
「そうですね」
考えたことがなかった。
魔法は自分の人生だ。
それをどう活用してきたか。
「最強の鉾であり、最強の盾です。それがあれば、大事な人も守れます」
「それも正解だ」
うんうんと仙人は頷く。
「しかし違うんだな。ハイラルの人はそこらが柔軟な発想が出来ていない。魔法とは、生活を快適にするちょっとした道具なのさ」
肩を竦めて仙人は言った。
目から鱗が落ちたような気分だったミリィだった。
確かに、ヨルムドで触れたのは、生活を便利にする魔術ばかり。
それが、生活を格段に快適にしている。
「君に教えよう。魔法の成り立ちを。旧世界の有様を」
「貴女、名前は……?」
「スカーレット。スカーレットと呼んでくれたまえ」
そう胸を張って言ったスカーレットだった。
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結局、滞在期限が終わっても妻は戻っては来なかった。
若干の不安があるが、今は妻を信じよう。
しばらくは離れ離れになるが、それもやむないだろう。
「陛下、収穫はありましたか」
「ああ、十分に」
部下の声に目を閉じる。
俺達は目標に至った。
あとは待つだけだ。
「じゃあ船の速度をかっ飛ばすぜ、陛下!」
レイヴンが景気良く言う。
「私も負けませんよ!」
ヒョウンが言う。
「揺れそうだ……」
リミィが怯えるようにリーシェにしがみつく。
アイリンは既に先に行って道を確保してくれているらしい。
「行こう、皆。ミルドへ。そして、妃の修行終了を待ってハイラルへの侵攻とする」
船は進み始めた。
荒ぶる風が心地よかった。
ヨルムド編・完




