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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第二章・青年期ヨルムド国編

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「魔法とはなんだと思う?」

 妻が帰ってきた。

 仙人の姿を見て目を丸くする。


「……やはりお若い。しかし私の魔力探知に引っかからぬとは」


 驚くように言う。


「ヘンリルで錬金術を学んでね。不老不死の身だ」


「不老不死……?」


 それも気になる話題だったが、俺は口を挟む。


「それも気になるワードではあるのだが、まず、目下、妻は出産を控えている。魔術の鍛錬は毒だ」


「ふむ、それは問題ないのだが……こうも過保護な旦那がいては鍛錬も進まん。行くぞ、細君」


 そう言うと、仙人の前に違った空間の景色が浮かび上がった。

 山の頂上だ。


 あまりにも桁の違う魔術の披露に俺達は慄く。


「さあ、行くぞ、細君。旦那さんは先にミルドに行くと良い。追々追いつかせるよ」


「お、おい!」


 制止する間もなく、妻の手を引いて空間の裂け目に入っていった。

 そして、残ったのはただの部屋だった。

 唖然とした俺が取り残された。



+++



「仙人様。私は陛下と長らく傍にいました。離れ離れは若干寂しゅうございます」


 ミリィは困ったように言っていた。

 山の頂上だ。

 気温が低い。

 発熱の魔術を使う。


「なに、そう長くはかからない。そうだな……一ヶ月程度かな」


「それぐらいは私も我慢できますが……出産もありますれば」


「大丈夫。まずは、座学だ」


 そう言って仙人は指を鳴らす。

 空間に黒板が突如出現する。

 そこに、魔法と書かれた。


「ミリィちゃんは魔法をなんだと思う?」


「そうですね」


 考えたことがなかった。

 魔法は自分の人生だ。

 それをどう活用してきたか。


「最強の鉾であり、最強の盾です。それがあれば、大事な人も守れます」


「それも正解だ」


 うんうんと仙人は頷く。


「しかし違うんだな。ハイラルの人はそこらが柔軟な発想が出来ていない。魔法とは、生活を快適にするちょっとした道具なのさ」


 肩を竦めて仙人は言った。

 目から鱗が落ちたような気分だったミリィだった。

 確かに、ヨルムドで触れたのは、生活を便利にする魔術ばかり。

 それが、生活を格段に快適にしている。


「君に教えよう。魔法の成り立ちを。旧世界の有様を」


「貴女、名前は……?」


「スカーレット。スカーレットと呼んでくれたまえ」


 そう胸を張って言ったスカーレットだった。


+++


 結局、滞在期限が終わっても妻は戻っては来なかった。

 若干の不安があるが、今は妻を信じよう。

 しばらくは離れ離れになるが、それもやむないだろう。


「陛下、収穫はありましたか」


「ああ、十分に」


 部下の声に目を閉じる。

 俺達は目標に至った。

 あとは待つだけだ。


「じゃあ船の速度をかっ飛ばすぜ、陛下!」


 レイヴンが景気良く言う。


「私も負けませんよ!」


 ヒョウンが言う。


「揺れそうだ……」


 リミィが怯えるようにリーシェにしがみつく。

 アイリンは既に先に行って道を確保してくれているらしい。


「行こう、皆。ミルドへ。そして、妃の修行終了を待ってハイラルへの侵攻とする」


 船は進み始めた。

 荒ぶる風が心地よかった。


ヨルムド編・完

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